(♯9からの続き続き続き)


 僕は俺は私は己は儂は朕は余は拙は、それはもう完全完璧パーフェクトなるがっちがちのこってこての無神論者であり、つまりは宗教というものが大大大の苦手であり、そのなかでもとくに、信仰者からカネを搾取するたぐいの営利目的みえみえの団体には嫌悪・厭悪・憎悪の念を抱きまくりまくる人間であり、まあ、そうはいっても何を信じるかは各人の自由であるからして、特定の宗教・宗派を信仰することでそのひとが幸せになるのであれば、いや、そのひとが幸せと感じるのであれば、それはそれでじつに結構なこと、じつに喜ばしいことだとは思うのだけれども、直接的/間接的の如何にかかわらず、己はそういった人たちとできるかぎり関わり合いを持ちたくないと常日頃から思っているわけで、ではなんでそんなふうに宗教を毛嫌いする人間になったのかというと、話は中学3年の冬に遡るのである。
 高校受験を目前に控えていた己は、その日も自宅で勉学に励んでいた。学業に勤しんでいた。って同じような意味の文章を繰り返して書くな。文字を無駄遣いすな。すいませんすんません。

 とにかく中坊の己は勉学に励んで学業に勤しんでいたのだけれども、そんなある日の夕方、自宅の電話のベルがりゃんりゃんと鳴った。電話をかけてきたのは、夏休みに己がアルバイトをしていた飲食店の先輩であった。

「元気? 勉強は進んでる?」

「お久しぶりっす。勉強は、はは、まあまあっす。てゆーか、どうしたんすか」

「いっやー、たまには一緒にご飯でもどうかなあ、なんて」

 十歳ちかく離れていたにもかかわらず、なぜかその先輩は己のことをものごっつう気に入ってくれており、アルバイトをしていたときも、お客が少なくなる頃合いを見計らいつつ二人でサボタージュしてタバコを喫んだり、休憩中に缶ジュースをおごってもらったりしていたわけで、まあいうなれば、己にとってあこがれの先輩。あるいは、頼れる兄貴。

 中学3年生といえば、それはそれはいろんな意味で背伸びしたいお年頃の真っ只中である。唯一の大人の知り合いであるあこがれの先輩、頼れる兄貴から食事に誘われて断るはずもなく断る理由もなく、中坊の俺、服を着替えて待ち合わせ場所にぽくぽく出かけてった。


(♯11へ続く続く続く)