(♯2からの続き続き続き)


 あの日のことは、いまでもはっきりと覚えている。あれは中学1年の夏。いや、中学2年の冬か。いや、やっぱり中1だったよな。いやいや、やっぱ中2だって。って、どっちでもええやん。そこは曖昧でええやん。とにかく己は、学校から帰ってきて、いつものように勉強部屋のラジオをつけた。なぜテレビではなくラジオなのかというと、やはり中学生にもなれば自然と自我のようなものが芽生えはじめるわけで、家族の団らんや食事を主な目的とした比較的広めの居住空間であるところの、いわゆる居間・リビングといった場所で家族と一緒にテレビを観る、今日は学校どうだった? なんて愚にもつかぬ団らん系の会話に興じる、なんていう行為に恥ずかしさのようなものをきゅんきゅんに感じはじめるお年頃なわけで、一般的にそういう時期のド餓鬼は自分の部屋にこもりがちになるのだけれども、まあ己も御多分にもれず、学校から帰宅するや否や、仮面の忍者赤影のような横走りでササササ、と自分の部屋へ直行直帰。当然のことながら、中坊の勉強部屋にテレビなんぞ置いてあるわけなく、置いてもらえるはずもなく、食事をするとき以外はデジタル目覚まし時計にオマケの機能として搭載されていたラジオが自分と社会とをつなぐ唯一の架け橋になっていたわけで、己はいつしかテレビよりもラジオを愛するラジオ人間になってしまったのだけれども、そしてのちに、いわゆるハガキ職人と呼ばれる深夜放送のヘヴィーリスナーになっていくのだけれども、そういったエピソードはこの物語とは一切関係ないのでここでは割愛する。じゃあ書くなアホ。紙を無駄遣いすな。すいませんすんまへん赦しておくれやすおいでやす新京極へ。


(♯4へ続く続く続く)