(♯1からの続き続き続き)


 あの日のことは、いまでもはっきりと覚えている。あれは小学5年生の秋。いや、4年生の春か。いや、やっぱり5年生だったか。いやいや、やっぱ4年生だって。って、どっちゃでもよろしい。とにかく己は、学校から帰ってきて、いつものように居間のテレビをつけた。当時は、いわゆるお昼のワイドショウ的な番組が栄耀栄華を極めていた時代であり、ちょうど己のようなド餓鬼が学校から帰ってくる時間帯には「2時のワイドショー」「3時のあなた」「3時にあいましょう」といった情報トーク番組が各局で放映されまくりまくっており、たとえば夏になると怪談話の特集なんかがあったりして、子供でもそれなりにオモロく見ることができたのである。
 で、子供の俺、少年の僕、ばあさんと一緒にワイドショウを薄ぼんやりと眺めていた。その日は偶然、離婚関連の特集をやっており、実際に離婚した人の経験談、あるいは離婚する際の具体的な方法・手続き、あるいは離婚にかかる諸経費、あるいは離婚後の生活、といったことを識者同士でトークセッションしたりフリップを使って細かく説明したりしていたのだけれども、番組の後半にゲストの意見をまとめるような感じで女性司会者がさらりと言ったある言葉を聞いて、子供の俺、少年の僕は唖然呆然愕然とした。
「なるほど。精神的な痛苦はもちろん、離婚とは結婚の3倍も4倍も体力が必要な行為なのですね」

 マジで? ほんまに? 離婚ってそんなに大変なの? じゃあ、なんで大人は離婚するの? 体力があるから? つまり体力があると離婚できるの? つまり離婚する人は身体が丈夫ってこと? つまり離婚すると強くたくましくなれるってこと? ひょっとしてヤッターマンより強くたくましくなれるのかなあ。そうかあ。すごいなあ。離婚ってなんか、かっこいいなあ。なんかしんないけどかっちょいいぜ。

 ワイドショウを見ながらそんなふうに思っていた子供の俺、少年の僕だが、当然のことながら中身はまだまだ子供であり少年なわけで、それから数日も経つとそんな番組があったことすら忘れていたのである。ところが。


(♯3に続く続く続く)