佐江は恋愛を知らない。
愛も、恋も分からない。
だけど……それで良かった。
知らなくても、分からなくても、
不便はしなかった。
だから、それで良いと思っていた。
「ず、ずっと前から好きでした……付き合ってください!!」
そう言って、
佐江に頭を下げてきたのは、
クラスメイトのとも~み。
佐江は、とも~みの事が『好き』だった。
友達にとも~みのことどう思うと聞かれたら、
絶対に『好き』と答えられる。
だから、付き合っても良いと思った。
とも~みも佐江のことが『好き』で、
佐江もとも~みのことが『好き』だから、
何も問題はない。
そう、勘違いした。
「うん、いいよ。付き合おっか」
佐江の返事に、
とも~みは泣いて喜んだ。
なんで泣いているんだろう?
そう佐江は思った。
そんなに嬉しいものかな?
『好きな人』と付き合うって。
とも~みは泣いている。
だけど、佐江は全然泣く気になれない。
そもそも、そこまで嬉しいとも思ってない。
だけど、とも~みのことは『好き』。
だから、佐江ととも~みはうまくいくと思う。
いや、
うまくいくと思っていた。
君と、出会ってしまうまでは。
「あ、あの……ハンカチ、落としましたよ」
ある日、
君にそう話しかけられた。
それは偶然で、たまたまで、
この日、この場所でハンカチを落とさなかったら、
出会ってない人だった。
だから、佐江はその偶然を憎んだ。
出会わない方が良かったのかもしれない。
だって、佐江は、
君を見た時、
初めて、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
これがなんなのか、
佐江が理解するのに、
時間は掛からなかった。
ああ、
そうか、
佐江は、君のことが……『好き』なんだ。
この時初めて、
佐江は、恋を知った。
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はい、
佐江ちゃんの恋愛ものが良いという意見が多かったので、
書いてみました。
まだ候補です。
続編を書くかは分かりません。
ちなみに、ヒロインはゆきりんです。