「月に一回、抗がん剤を使うと、一週間吐いて、何も食べられないし。
この苦しいのが何回も続くかと思うと・・・」
「がんは小さくなってる、って先生は喜んでいるけど、がんはまだあるんだし・・・」
「Dさん。
がんを完全に無くないと失敗、と思っていらっしゃいませんか?」
「え?違うんですか?」
「もし、健診を受けず、見つからないままでいたら、今頃Dさんはこの世の人ではなかったですよね?
治療をしながら、今、生きていますよね?」
「ああ、そうですね。死んでいたところでした。」
「抗がん剤治療の間の3週間はどうですか?」
「それは大丈夫です。温泉に行ったり、息子や孫たちと食事をしたりしています。」
「治療しないで死んでいたら、今、その生活はありませんでしたね。
苦しい治療をしないかわりにこの世からいなくなるのと、
1週間の苦しみと引き換えに3週間の生活があるのと、
どちらかを選ぶなら?
Dさんは、どちらがいいですか?」
「私は1週間苦しくても、あとの3週間があるほうがいいです。」
「Dさん。癌は完全に無くさなければ失敗、ではないのです。
癌を持っていても、共存していけばいいのですよ。
Dさんが、もう充分、私は寿命で結構、と思うまで。」
「ああ、そうか!失敗、じゃあないんですね。3週間の生活があるから!」
Dさんの顔はぱあっと明るくなった。
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