短歌味体Ⅲ 3502-3601(作品集) | nishiyanのブログ

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この列島の一住民です。(九州)
今までにない最悪の復古的イデオロギー政権を退場させるため消費(GNPの約6割を占める家計消費)を意識的に控える活動を広めることを開始。2017.12.14に休止。★ひとり継続中。

 

短歌味体Ⅲ 3502-3504 時間の海シリーズ・続 2019年08月08日
短歌味体Ⅲ 3505-3507 時間の海シリーズ・続 2019年08月09日
短歌味体Ⅲ 3508-3510 時間の海シリーズ・続 2019年08月10日
短歌味体Ⅲ 3511-3513 時間の海シリーズ・続 2019年08月11日
短歌味体Ⅲ 3514-3516 時間の海シリーズ・続 2019年08月12日
短歌味体Ⅲ 3517-3519 時間の海シリーズ・続 2019年08月13日
短歌味体Ⅲ 3520-3522 時間の海シリーズ・続 2019年08月14日
短歌味体Ⅲ 3523-3525 時間の海シリーズ・続 2019年08月15日
短歌味体Ⅲ 3526-3529 時間の海シリーズ・続 2019年08月16日
短歌味体Ⅲ 3530-3532 時間の海シリーズ・続 2019年08月17日
短歌味体Ⅲ 3533-3535 時間の海シリーズ・続 2019年08月18日
短歌味体Ⅲ 3536-3539 時間の海シリーズ・続 2019年08月19日
短歌味体Ⅲ 3540-3542 時間の海シリーズ・続 2019年08月20日
短歌味体Ⅲ 3543-3545 時間の海シリーズ・続 2019年08月21日
短歌味体Ⅲ 3546-3548 時間の海シリーズ・続 2019年08月22日
短歌味体Ⅲ 3549-3552 時間の海シリーズ・続 2019年08月23日
短歌味体Ⅲ 3553-3555 意味は置いといてシリーズ 2019年08月24日
短歌味体Ⅲ 3556-3558 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月25日
短歌味体Ⅲ 3559-3561 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月26日
短歌味体Ⅲ 3562-3564 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月27日
短歌味体Ⅲ 3565-3567 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月28日
短歌味体Ⅲ 3568-3570 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月29日
短歌味体Ⅲ 3571-3573 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月30日
短歌味体Ⅲ 3574-3577 意味は置いといてシリーズ・続 2019年08月31日
短歌味体Ⅲ 3578-3581 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月01日
短歌味体Ⅲ 3582-3584 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月02日
短歌味体Ⅲ 3585-3587 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月03日
短歌味体Ⅲ 3588-3590 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月04日
短歌味体Ⅲ 3591-3593 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月05日
短歌味体Ⅲ 3594-3596 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月06日
短歌味体Ⅲ 3597-3599 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月07日
短歌味体Ⅲ 3600-3601 意味は置いといてシリーズ・続 2019年09月08日

 

 

 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3502
あんまりに近くにいた
ばっかりに
言葉のつばきが飛んでくる


3503
つばきのかかった者たちは
窮屈な
モビルスーツで手足同時に進んでいく


3504
居眠りの戦法使い
知らぬ間に
右へ左へよけているぜ


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3505
言葉にはその地の匂い
滲みていて
「きれかね」と同時に匂い立つ


3506
「きれいですね」と言い換えても
「きれかね」
が裏地に縫い込まれている


3507
おんなじ料理でも
びみょうに
違う 言葉もリズムもそうさ


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3508
空気のように意識しない
青い時の中
たくさんの微小時間が生きて歩いて呼吸している


3509
夜でなくてもドームの上から
星光る
時間の無数の糸が差している


3510
ドーム状の青い時が
無ければ
「自己責任」の微小時間ばかりか


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3511
柔らかな時が流れる
肌合いの
言葉以前に浸かっている


3512
意味・無意味を超えた岸辺
差し入れた
手に時間の流れさらさら 青匂う


3513
とどまることのない世界流
とりあえず
死にセットされた永久機関


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3514
砂遊びしてる子の内に
流れる
時間は 流流流流流流(ルルルルルル)


3515
獲物待つ太古の人の
手の砂が
ルルルルルルと流れ下る


3516
世界には意味や目的に固まる
以前の
手を流れる時間 ぼわっとある


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3517
言葉のすき間にも ほら
耳を澄ますと
じかんが飛び跳ねてるよ


3518
し・ろ・い・・く・も・・の
な・が・・・・れ・・て
い・く・・・よ ああ・・・風


3519
それとなく見つめる
(ああ・・そう
そ・う・な・ん・だ そうだった・の・か)


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3520
大声やボールド体は
時間が
ケンケンガクガク凍り付いている


3521
飛び散る氷のかけらは
子どもらの
砂場や台所蹴散らしていく おいおい!


3522
時には氷のかけらの
時間圧!
ケトバゼ蹴飛ばしたくなるぜ

註.「ケトバゼ」は、万葉集 巻20 4346 防人歌の「言葉(けとば)ぜ」より。
 父母が頭掻き撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3523
あたたかい出来上がった
一皿にも
たくさんの言葉や沈黙が


3524
にんじんには青い言葉が
ピーマンには
赤い言葉が溶けているよ


3525
炒められ混ぜ合わされた
時間たち
今ほっとして湯気が立っている


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3526
文字たちがやかまし過ぎて
うんざりだな
ともじもじと文字の輪で言う


3527
文字の木のてっぺんまで
上って
上から目線を発射し続ける奴もいる


3528
文字というパワードスーツ
を身にまとい
世界中を意のままにと思っていないか?


3529
文字に仕込まれ育った
時間
文字の木はただ静かに立つ


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3530
アリさんみたいな文字の
行列
ゆったり隅っこを歩いている


3531
内を流れる光りの
つぶつぶが
微笑む明かりが見えないか


3532
真ん中走る大文字が
隅っこまで
制圧しようと煽(あお)り運転する


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3533
なんにも無いと思えても
何かある
どこかからぶくぶく湧いてくる


3534
その人の死とともにおそらく
時間は
消滅する ぶくぶくは無く


3535
生きてるならぶくぶくがある
死んだように
生きてても あるさ あるよね ほら


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3536
おそらくは死んでしまったら
土水岩木
に溶け込んで人間界をたつ


3537
時空という考えもない
言葉の届かない
ただただ無音の砂嵐画像 死か


3538
死の内に命は入れない
ただイメージ流
がぐるぐる死の肌をなでる


3539
死は、人の過去形のイメージ流
のぽおっと
人間界の人の内を流れる


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3540
どんよりした内の空や
がらんどう
の心道(こころみち)にも時間が流れている


3541
ふっと見上げる空がない
人にも
いつまでも待つ空の青い時間


3542
よそ行きの修飾の
峠の向こう
ありふれた時間の鼓動が響いて来る


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3543
直球の言葉はひとり
沈黙の
時間の海にずしりと刺さるばかり


3544
水面の上には誰も
出られない
ただぶくぶくと 〈関係の絶対性〉


3545
同じ空の下生きてきた
時間たち
カラフルに屈折する交叉する衝突する


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3546
目覚めるとここは球面
の中だ
とは思えないな シームレス時間


3547
見つめていると天球に
星々が
流れ星も落ちて来る


3548
真っ暗な天球から
ずんずんずずん
時折鈍い響きがくるような


 


 [短歌味体Ⅲ] 時間の海シリーズ・続


3549
いろんな大きさの時間
の泡々
シャボン玉のように流れる


3550
泡の音階を踏みゆくと
ぱちぱちぱちん
割れて砕けて虹色時間


3551
時間のしずく掬ってみる
古い古い
楠の木の枝折った匂いする


3552
大きな木の根の時間
泡立って
ぼくの天球を彩っている


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ


3553
裸のまま意味は置いといて
言葉の海へ
ばしゃばしゃ入ってゆく


3554
衣装に慣れたからだは
メロスのように
ひとり恥じらう言葉の海辺


3555
海歩く足が重いな
と足を見る
無数の意味の藻がからみついてる


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3556
日に映える朝のすろっとん
すりっと
するりすりる朝の空気の


3557
日に照らされた海面を
すべってゆく
トゥントゥントゥララトゥララ


3558
潮の匂い微かに滲みている
あの海の
像を引き連れ立ち上るトゥララ


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3559
おばさんの頬が温(ぬる)む
向こうは
意味の峠ぞろぞろ人行き交う


3560
いいから持って行かんね
おばさんの
微笑みは意味を置いといて来る


3561
こうして少年のぼくが
記憶の
装いでほら今生き返る


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3562
ある晴れた日少年のぼくは
意味もなく
草花に手触れながら歩いた


3563
重たいつながりの意味
をはがしたり
抗ったり以前の一歩がある


3564
信じてもらえないかも
しれないけど
〈意味〉に手触れずにここまで来たよ


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3565
「意味五万円で売ります」
表通り
は意味売りで混雑してる


3566
いみもなくとかおもわずとか
厳しく
検閲される意味の関所


3567
意味も無意味も過ぎ下った
谷地に
こじんまりと意味は置いといてが咲く


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3568
SNSの被膜に隠れて
固い意味を
ちぎっては投げちぎっては投げつける


3569
ビョーキだよと投げつけたい
意味を飲み込み
荒れた心のSNS大地にぼくはいる


3570
意味ならば避けようもない
意味アリ地獄
沈黙で耐えるほかない 関係の絶対性


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3571
玄関に立つぼくは
手短に
意味を告げて靴を脱ぎ上がる


3572
意味は置いといて話す
流れから
意味の座布団は尻に敷く


3573
尻に敷かれた意味たちは
出番のない
演者たち暇を持て余す


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3574
どこもかしこも意味意味意味の
コマーシャル
ルンルン意味通りを行く人々


3575
(階段を降りていけば
違うのよ)
意味通りからのささやきもする


3576
何度も消しては書く
ほんとうの
意味を求めて三千里 (クスッ)


3577
とりあえず汗に濡れたシャツ
の水洗い
絞っても意味の汚れが落ちないな

 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3578
母親は意味の匂いを
込めて子に
「おかあさん」とか「ママ」を催促する


3579
今ではもう「かあちゃん」は
途絶えて
しまったか 意味の匂いの変遷


3580
意味の匂い気づかずに
子は心地よく
「たーたん」とか「まんま」とかくり返す


3581
小さい子は意味は置いといて
「おかあさん」
とか「ママ」とかくり返しくり返す


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3582
子どもを抜け出す頃は
流れから
「おふくろ」「おやじ」と呼び始める


3583
あるいは「お」を取って
「かあさん」
と呼び方にお年頃がにじむ


3584
気づかれない言葉たちにも
時とともに
微妙な変位が訪れる


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3585
ふれる 肌ふれる
ふれ合う
波間からさざ波の立つ


3586
どんな波も生きる
エロス
の舟とともに来る


3587
あ 月がきれいね そうだね
二人で
ゴミ出しに行く夜の道々


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3588
晴れた空の下の木々の
葉揺れが
不吉な不安に揺れている


3589
そんなまひる間時間は
意味ありげに
刻まれていく 葉は揺れている


3590
大きな意味の流れに沿って
たくさんの
アリたちが小意味を運んでいる


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3591
ここはもう 木の葉揺れ
不安が散る
こころの意味も無く場に降り積もる


3592
うずくまる負の意味は
どうしたら
風になびく意味の椅子に座るか


3593
くねくねと七曲がりの
先には 静かな
意味場があるの かもしれない…


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3594
揺れる葉の中に意味もなく
滑り込む
うすみどりの日の差す気配 苦しくはない


3595
みどりの流れに浸かり
流れていく
ゆくゆくは木の心臓に至るか 少し高ぶる


3596
赤味を帯びてくる気配
流れから
やわらかな内風の匂う ただ無心に肌さらす


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3597
通り過ぎる道々の
草花を取り
もてあそぶ蜜蜂の少年


3598
無心に薄くうすーく
なっていっても
心の在所を指差す無意識の意味


3599
振り返る真昼間に
真っ白な
時間を針は指している


 


 [短歌味体Ⅲ] 意味は置いといてシリーズ・続


3600
まだ言葉のない小さい子は
無ではない
なにか流れて いる ような…


3601
蠢くカエルの卵たちの
言葉以前
言葉からはよく見えないなあ