短歌味体 Ⅲ | 日付 |
短歌味体Ⅲ 3302-3305 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月21日 |
短歌味体Ⅲ 3306-3308 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月22日 |
短歌味体Ⅲ 3309-3312 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月23日 |
短歌味体Ⅲ 3313-3315 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月24日 |
短歌味体Ⅲ 3316-3318 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月25日 |
短歌味体Ⅲ 3319-3321 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月26日 |
短歌味体Ⅲ 3322-3324 農事シリーズ・続 | 2019年05月27日 |
短歌味体Ⅲ 3325-3327 農事シリーズ・続 | 2019年05月28日 |
短歌味体Ⅲ 3328-3330 農事シリーズ・続 | 2019年05月29日 |
短歌味体Ⅲ 3331-3333 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月30日 |
短歌味体Ⅲ 3334-3336 なんとなくシリーズ・続 | 2019年05月31日 |
短歌味体Ⅲ 3337-3339 なんとなくシリーズ・続 | 2019年06月01日 |
短歌味体Ⅲ 3340-3342 出会いシリーズ | 2019年06月02日 |
短歌味体Ⅲ 3343-3345 出会いシリーズ・続 | 2019年06月03日 |
短歌味体Ⅲ 3346-3348 出会いシリーズ・続 | 2019年06月04日 |
短歌味体Ⅲ 3349-3351 出会いシリーズ・続 | 2019年06月05日 |
短歌味体Ⅲ 3352-3355 出会いシリーズ・続 | 2019年06月06日 |
短歌味体Ⅲ 3356-3359 出会いシリーズ・続 | 2019年06月07日 |
短歌味体Ⅲ 3360-3363 出会いシリーズ・続 | 2019年06月08日 |
短歌味体Ⅲ 3364-3367 出会いシリーズ・続 | 2019年06月09日 |
短歌味体Ⅲ 3368-3370 出会いシリーズ・続 | 2019年06月10日 |
短歌味体Ⅲ 3371-3373 出会いシリーズ・続 | 2019年06月11日 |
短歌味体Ⅲ 3374-3376 出会いシリーズ・続 | 2019年06月12日 |
短歌味体Ⅲ 3377-3379 出会いシリーズ・続 | 2019年06月13日 |
短歌味体Ⅲ 3380-3382 出会いシリーズ・続 | 2019年06月14日 |
短歌味体Ⅲ 3383-3385 出会いシリーズ・続 | 2019年06月15日 |
短歌味体Ⅲ 3386-3388 出会いシリーズ・続 | 2019年06月16日 |
短歌味体Ⅲ 3389-3391 出会いシリーズ・続 | 2019年06月17日 |
短歌味体Ⅲ 3392-3394 出会いシリーズ・続 | 2019年06月18日 |
短歌味体Ⅲ 3395-3397 出会いシリーズ・続 | 2019年06月19日 |
短歌味体Ⅲ 3398-3399 出会いシリーズ・続 | 2019年06月20日 |
短歌味体Ⅲ 3400-3401 出会いシリーズ・続 | 2019年06月21日 |
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3302
検査の日、決められた通路
を淡々と
通り抜けて 病院を出る
3303
バシィーン 外はいい天気
いつもより
少し軽い心歩き出す
3304
もしも異変が起こってたら
どういう
屈折した迷路に入り込んだものか
3305
仮定法の流れに乗っても
仕方がない
それはその時 今はこの流れに
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3306
仮定法は後悔の小舟か
・・・・・
空白を埋める遅すぎた言葉
3307
どんな家庭にも下りてくる
仮定・対処・構築の
誘惑の鉄の糸糸糸
3308
鉄の過程を踏みしめて
仮定の
舟を漕ぎ出すなんて 知らねえよ
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3309
仮定法は死の匂い
するすると
すべり落ちる空白の森
3310
花も鳥も作り物の
ずんずんと
斜面すべる感じがしないなあ
3311
なんとなく仮定の韻は
他人事
身と心が離れていくよ
3312
それでも仮定の丘陵(おか)を
振り返りながら
しがみついている必死の手
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3313
なんとなく紙ヒコーキ
飛ばしてみる
思ったよりも飛んでゆく 大空
3314
飛ばしたのは空気感じて
離した手
の瞬間のドラマ 消失
3315
消え去ってもロウソクの煙
ゆらゆら
よりも頼りなく記憶の木に留まる 青
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3316
のびるのびる触手が
のびてゆく
そら、空、空、紙ヒコーキへ
3317
距離が揺ら揺らいでる
「道の長手を 繰り畳ね」
淡い青の空の道よ
3318
溶けた青のわたし
ゆっくりと
紙ヒコーキにまたがる
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3319
気負いなくても点灯する
紙ヒコーキ
に乗り込んだ心の座席
3320
昨日の空を夜間飛行
ぼうっと
点った座席 夜空を漂う
3321
絵の具を取り出し塗る
必要はない
気分のままにぱあっと広がりゆく
[短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続
3322
ソラマメは種一つから
花開き
無数のさやを実らせる ふ・し・ぎ
3323
咲いても咲いても実らない
不毛の
大地の物語を通ってきたのか
3324
ヨハネの比喩の遙か彼方
一粒の麦
自身は受難を語らない
[短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続
3325
鳴かないネコはスリスリして
空腹を
伝えようとする 気・づ・き
3326
伝えるということのない?
ソラマメは
静かに風に揺れている
3327
それでも見つめるわたし
に湧き上がる
過剰の剰余 気づきということ
[短歌味体Ⅲ] 農事シリーズ・続
3328
ソラマメの鞘(さや)をむいている
ひと鞘に
3個を最頻値に2つ、1つ、たまに4つがある
3329
いずれの実のなり方も
起源・変位・構成に関わって
ふしぎだねと言うほかない
3330
この世のありとあらゆるもの
潜り抜け来た
時間の作品として朝露に濡れている
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3331
あどちゃんのお絵描きみたい
〈あ〉〈お〉〈い〉〈そ〉〈ら〉
と青空がクリアーに立ち上がる
註.昔テレビで観た水森亜土。絵描き歌を歌いながらお絵描きしていた。
3332
内情はそんなにリニアー
でもないな
〈あ〉〈い〉をつかみそこない青空へ
3333
ぐるぐると〈あ〉を塗っていると
なんとなく
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3334
一枚の木の葉が落ちて
ゆくよと
心傾き追いかける 今は
3335
なんとなく気がかりがある
からか 空
洞をひらひら落ちてゆく 夕暮れ
3336
初夏なのになんとなく鈍く
陰り折れ
込んでくる葉のみどり シンシン
[短歌味体Ⅲ] なんとなくシリーズ・続
3337
なんとなく蹴ってしまった
石ころが
ぶつかり跳(は)ねぶつかる 石ころは
3338
〈ある〉だけでただ〈いる〉だけで
波風立ち
海も割れる 行き交うものがある
3339
言葉のない絵本アニメにも
静かに
言葉服を着て追いかけてゆくよ
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ
3340
生の魚との出会いの
初めには
誰もが色んな物語の中に浸かる
3341
魚をさばく さばきの道は
枝分かれ
さばかれた言葉たちが横たわる
3342
その通路(みち)を通ったら もう
戻れない
刺身の言葉で飾られるぞ
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3343
くり返し行き交っていると
出会いの
はじまりは消え見慣れた椅子がある
3344
重力の今ではあるけど
時には
出会いのはじまりや終わりが降る
3345
変わらない日々が続く
顔をして
我も彼も風景も今を生きる
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3346
叫ぶわけではないけれど
出会え!出会え!
と聞こえてくる コマーシャル時代
3347
DEAERUDEAIDEAE
誘いかける
!が耳に響いている 遮断
3348
コマーシャル言葉は
なんとなく
わかっちゃうんだよなあ 嘘嘘
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3349
いろんなものに出会いすぎて
ギスギスと
もうね 出会わなくてもいいんだよ
3350
言葉でも出会いすぎたよなあ
煩悩の
残骸とは言わない 無言
3351
出会いがプラスであれ
マイナスであれ
中道(なかみち)を人はぞろぞろ渡ってゆく
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3252
それでも生きてるかぎり
自他に
出会いくり返すだろう 黙々野
3353
言葉の舟に乗り込むとき
どこかから
見られている気配がある
3354
待ち合わせて出会うとは
限らない
靄に包まれたいくつもの層を抜けていく
3355
手ぶらの現在から
ぼくは影
静かにぶつかり来るものに出会う
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3356
(雨が降った 重たい 雨が
降り続いた
雨乞いしないのに雨中の人となる)
3357
〈あなたがきちんとさんに
なってくれれば
雨は上がり日が差したのに〉
3358
(おれの言葉はねじれに
ねじれ
肌荒れ果てて 雨中)
3359
〈待ってぇ 待ってよお
ほら雨
止んでいるでしょう?〉
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3360
(こんなに重たい雨続きの
世界なら
生まれない方が良かったよ)
3361
〈何を言うの光太 わたしたちは
光りあれと
あなたの誕生を祝ったのに〉
3362
(そんなことは知らない この雨
雨続きの
今この椅子 どうしてくれる)
3363
〈(「あんたなんて産まなきゃよかった」
って言う
てしまいたい 世界の終末ガラガラ)〉
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3364
((言葉は花開かず
根腐れ
している しているぞお))
3365
〈(大丈夫 まだ引き返せるわ
わ わああ
ことばが 言葉が圏外 暗転異国)〉
3366
((俺のせいなんて言わせない
それでも
この空虚 どこまで行く 行くのか))
3367
〈(進む止まる引き返す
いずれも
不毛の時 どうしたらいいの)〉
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3368
向こうで言葉がないている
背景深く
泣いている ような ふ 触れることはできない
3369
言葉の肌荒れ果てても
がむしゃらに
どんどん遠ざかって行く 触れることはできない
3370
沈黙の中で量るしか
仕方がない
言葉の姿形がある 一点の黒
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3371
誰でもが家や地域を
潜り抜け
古い下着でいま・ここを歩いている
3372
そんな重い関係ないと
言っても
誰もがその物語の渦中から上がってきた
3373
家の裏手に名は知らない
夏草が
触れられることなく赤々と咲いている
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3374
子は大きくなって家族の
物語の
渦中に飛び込み歩き出す
3375
時には背中の親を
背にして
明日を思い悩む日もある
3376
ここは似てるかそこは違う
だろうな
つぶやきながら人の道を渡ってゆく
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3377
出会いたいのに出会えない
ぼんやりと
ただ通り過ぎるのを見る
3378
出会いたいものがわからない
けれど青
やわらかく波立っている見える
3379
化粧の出会い素肌の
出会い
いずれも人の出会い出会う
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3380
出会いたくないから避けて
行く道も
必ず湧くにやにやストーカー
3381
未来の芽のひとつ花
花びらが
ひとつひとつ散っていく
3382
追い込まれた花のない花は
どうやって
未来の芽を紡ぎ出すのか
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3383
くたびれて歩いていても
日は差す
どこまでも日が差してくるよ
3384
日の微子が肌に染み入り
流れてゆく
ゆくゆくは小さな灯りが点る
3385
泥の眠りに倒れる
直前でも
日差す灯りが点っているよ ほら
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3386
飛んでくる日の微子たちに
肌の丘陵(おか)
微細にふるえ波打っている
3387
無数の微光が上がり
あったかい
灯りが点る肌の丘陵(おか)
3388
肌の丘陵(おか)の凝り固まった
層深く
ほんのりと赤みが差している
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3389
またひとつ急に死が倒れ
こまごまと
死の儀礼の圏内を行き来する
3390
ひとつの死は時間の中の
なつかしい
顔のイメージ流かき混ぜ宇宙(そら)へ
3391
倒れ来るいくつもの死を
くぐり抜け
黙々とひとの道をゆく
全体の註.親戚の人の葬式に出て。
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3392
ああ こんな所に
そんな花
咲いているなんてと通り過ぎる
3393
出会いの舞台の余韻
歩いている
足下に下っていくよ
3394
夕方の見慣れた景色
少しだけ
新しい色やリズムに揺れている
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3395
日々に擦り切れた靴底
足下から
虹色のてんとう虫が飛び立つ
3396
なんとなくぼくの圏内
を告げる
虹の色が漂っている
3397
小さな虹色でも
大きな虹
へ伸びてのびてつながる日もある
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3398
(ここで会えてよかったなあ
あなたは
素っ気なく通り過ぎてゆく)
3399
(確かに通り過ぎたけど
それは違う
と思うけど色には出ないか)
[短歌味体Ⅲ] 出会いシリーズ・続
3400
ザクザクと歩いて行けば
変貌する
広がる道 狭まる道
3401
振り返っても仕方がない
過ぎ去った
足跡ばかりが目に入る