♪メリークリスマス♪

 

久山療育園の宮﨑医師が書かれた文献からまとめました。

在宅重症児者の医療的ケア

Ⅰ.在宅重症児者の日常的な健康管理

重症児者にとって、家庭で暮らすこと、家族が共に暮らせることは、この上もなく幸せなことでしょう。しかし家庭や地域は安らぐ所であると同時に、重症児者にとっては重い「障害」や病気や事故に直面する場所でもあります。ですからご両親、特に主たる介護者であるお母様は、お子様の最大の理解者であり、お子様の生活習慣や病状に最も詳しい方であるとも言えます。私どもから見ても、日常生活の介助から健康管理まで、超人的とも言える働きをなさっていますが、またお子様を見守る表情がとても優しいことに驚かされ学ばされます。「在宅重症児者の医療的ケア」と一口に言っても、一人一人の重症児者に必要な見守りや手当て、病院受診について述べるとすれば一冊の本になるほどの内容があると思います。

1.在宅での医療ニーズ

在宅重症児の健康管理は、食事・排泄(排尿や排便)・入浴・睡眠・姿勢や移動など日常生活のリズムを保つことが基本ですが、その他に①個々人の原因や合併症に対する服薬(定期薬・臨時薬・坐薬など) ②吸入・吸引(排痰) ③姿勢保持(座位保持・筋緊張緩和・体位排痰) ④経管栄養(鼻腔栄養や胃瘻) ⑤導尿 ⑥在宅呼吸管理(在宅酸素療法、在宅人工呼吸)などの医療ニーズがあります。通園・外来や短期入所の際に拝見していますと、相当高度なケアをご家族が受け持っておられることに驚かされます。実態調査でも、大島分類や医療度は入園しておられる方々と変らないという結果が知られています。本当にご家族の苦労を思い、敬意を感じます。

2.在宅での介護者による日常的ケア

①「てんかん・痙攣発作」

脳性麻痺など重症心身障害を起こす病気には、てんかん(痙攣発作や失神、眼球固定、顔面や手足のふるえ、奇声など様々)を伴う方が大半です。発作の大きさや型、頻度、持続時間などは原因による違いや個人差がありますが、ご家族はよくご存知です。またかかりつけ医によって、その人にあった薬の処方(定期薬や坐薬)がなされています。ご自分のお子様の発作の特性によって内服時間や坐薬の使用が指示されていると思いますので、それをきちんと守って頂くことが大切です。痙攣の薬は安全域が狭いので、飲み忘れたり、また間違って多く与えすぎることは危険です。また発作の型が変ったり、目立って増えたり、大発作や痙攣重積状態(発作が長引いたり、短時間に繰り返し起こる状態)があるときは直ぐに医師に伝える必要があります。大発作の時の注意としては、食物や吐物、唾液を誤嚥しないように顔を横に向け、食物が口の中にあれば口腔内から取り出しますが力を入れて舌を圧迫すると嘔吐を誘発して危険です。タオルなどをかませるのは呼吸困難や嘔吐の誘発を起こすので行ないません。

②便 秘

便秘も大半の重症児者に見られますが、排便調節がうまくいかず腸閉塞になる危険があります。献立を考える時には、消化が良い食物や排便を促す線維成分をとること、水分補給をはかり、食後の体動や腹部マッサージ(時計回りに「の」の字を書くように)を試みることも役に立ちます。それでも便秘がおさまらない場合は、指示されている通りに座薬や浣腸を用います。

③下 痢

日常的に起こる下痢に対しては、水分の補給に努めること(ぬるめの白湯を少量ずつ)や、腹部の保温を保つ必要があります。腸管感染症や食中毒の場合は、発熱・血便・脱水など重い症状が起こりますので、疑われたら直ぐに医療機関にかかってください。

④嘔吐、むせ、誤嚥

重症児者の嘔吐は、消化器機能の異常(便秘やガス貯溜による腹満、胃食道逆流症)や呑気だけでなく、痙攣や筋緊張、咳による刺激、口腔内過敏など原因は多彩です。誤嚥を防ぐために側臥位をとり顔を横に向ける姿勢をとります。激しい嘔吐や頻繁に起こる時は、体力の消耗と苦痛が大きいので安静にします。しばらく絶食とし、おさまってから白湯を少しずつ飲ませて嘔吐が起こらないことを確かめてください。

⑤排尿・排泄管理

日頃から安定した状態での排尿回数や尿量を知っておくことが大切です。発熱や発汗時、食事が十分に取れていない時には尿量が減ります。また排尿障害がある時は、下腹部が膨らんでいます。排泄訓練をしても自分で排尿出来ない時は、定期的に導尿する場合があります。このような排泄管理が十分でないと、尿路感染の原因になることがあります。かかりつけの医療機関でよく相談してください。

⑥体温調節、脱水

重症児者は外気の温度変化に対応できなかったり、温熱中枢の働きが不十分な場合がありますので、寒暖の状態に合わせて衣服の着脱や水分補給、保温に努める必要があります。脱水は、水分や食事が取れなかったり、発熱・発汗で体内の水分量が減少した状態です。皮膚の乾燥や緊張の低下(皮膚に張りがなくだらーとした状態)、舌や唇の乾燥、尿量の減少などに現れます。脱水が疑われたら、水分補給(白湯、お茶、ジュース類、シャーベットなど)をしますが、経管栄養を行っている時は胃チューブから水分補給します。

以上、日常的な医療ケアについて述べましたが、研究熱心なお母様は、この記事よりはるかに詳しく知っておられることと思います。また今はこのような異常はなくとも、将来起こる可能性に備えて頂ければ幸いです。