うちの両親は共働きでした。

なので夏休みは近所の祖父母の家で過ごすことが殆どで、それが当たり前でした。

 

初孫の自分は、それまで頑固おやじだった祖父を見事なまでに好々爺に変えたらしく、いつも笑顔で接してくれました。

 

機関車の運転手で真面目一筋で頑固者だった祖父。

 

そんな一面はもちろん知らない「おじいちゃん子」の自分。

晩酌の時は、日本酒片手に、日本の歴史や昔の野球の面白い話を沢山教えてくれました。

酒臭いのは玉に瑕でしたが。

 

そんな祖父ですが、特にこれといった趣味もなかったのですが、孫の私の強烈なアプローチもあり、夏休みのある日、近所の砂浜に一緒に釣りに行くことになりました。

 

確か小学5年生の夏休みだったと思います。

 

私は投げ釣りセットを新調したばかりだったので、釣りに行きたくて仕方なかったのです。

ですが子供一人で海に行くことは危険であると固く親に禁じられていました。

そこで白羽の矢が祖父へと向いたのです。

 

半ば強引に祖父も投げ釣りセットを購入させられ、砂浜へと向かいました。

 

町立病院裏の砂浜。

祖父母の家からは自転車で10分ほどの場所です。

遮るものがないあたり一面の砂浜。自分と祖父以外は誰もいません。

今ほどサーフフィッシングがメジャーではなかったこともありますし、ここらへんは遠浅の特に変哲もない砂浜でした。

 

貸し切りの浜辺で祖父と二人で回りを気にせず思いっきり竿を振りました。

まだ長い投げ竿に慣れていなかったので、どこに飛んでいくかわからない状態。

貸し切りの砂浜はとても好都合でした。

 

竿立てといった立派なものは持ち合わせておらず、投げては手で持って、ぼんやりとアタリを待っているの繰り返しです。

 

それでも時折り「ピクピク」と竿先が動きます。

手元にも若干感触があるくらいの。

巻き上げると、10センチ程度のウグイがかかっていました。

 

その頃の自分でもウグイは外道扱いだったので、残念な気持ちはありましたが、それ以上に退屈しない程度にかかってきてくれるので、とても楽しかった記憶があります。

 

もちろん祖父にも同じペースでウグイが釣れました。

 

その日は日が暮れるまで、二人で熱中してひたすらウグイを釣り続けていたと思います。

 

祖母が待つ家についたのは、もうすっかり日が暮れていました。

 

ただ今でも忘れられないのは、その日の晩酌で、釣りの醍醐味を楽しそうに語る祖父の笑顔です。

 

~~ その後、祖父が釣りにハマったことは言うまでもありません ~~