『正義の行方』 | ある人の野球観戦記

ある人の野球観戦記

アマチュア野球観戦を主に取り上げている、雑記文です。

監督 木寺一孝。

 2022年4月にNHKBSで放送されたBS1スペシャルを劇場版として公開。

 舞台となった飯塚事件とは、1992年に福岡県飯塚市で2人の女児が登校途中で行方知れずとなり、翌日、隣の甘木市の峠付近で惨死体で見つかったもの。捜査の過程で犯行に使われたと思われる車両を所有していた久間三千年被疑者が2年後に逮捕。最高裁で2006年に死刑が確定。2年後異例の早さで執行され、今年の6月に第二次再審請求が福岡地裁で棄却されて高裁に抗告、審理中。というのがあらましだ。

 事件をミスリード?のような形で報道した地元ブロック紙が検証をする様相を顕にするなど、硬いドキュメントである。そして、警察、弁護士、久間元死刑囚の妻への取材も試みていて濃密だ。

 しかしながら、元死刑囚の人間像が語られるなんてことは無いし、自分で推理を働かせるようなサスペンス的な要素は排除していて、淡々と進めている。それが話が奈辺にあるかが解らずにイラつきを生んでいくのだが、当時取材をしていた記者の「ペンを持ったお巡りさんになるなと言われていたのに、なっていた」という率直に語っていた事で、「ああ、この人は当時の前のめりの姿勢の教訓にしているのか」と得心するのである。

 そして、警察サイドは犯人であることに確信をもっていて、弁護士も執行された事を痛恨事として捉えて今を生きている。

 もっとも元警官の述べる、以後類似の事件が起こっていない事から彼を犯人とする見方をしているのには一寸とも思えるが、起こっていないのは犯人はやはりなのか、それとも…?

 いずれにせよ、打ち消すほどの内容は見せてくれていないが、最新鋭の科学捜査を導入して、でっちあげととられかねない杜撰過ぎる検体への扱いという体たらくも見えてきて、最新鋭の科学捜査と言っても大したことは無いのではないかという疑念もぬぐい切れず、いつまで経っても「藪の中」になるのは、人類の進歩の発展途上というもどかしさを覚える。