第二次世界大戦でドイツ海軍は千隻以上の潜水艦を投入したが、主戦場の大西洋に限らず、インド洋、太平洋に向かったものもある。それは同盟国日本への連絡、物資輸送だったり、作戦の一環だったりもするのだが、「ヒトラーの贈り物」として譲渡された二隻の潜水艦のうち「さつき1号」「マルコポーロ1」と呼ばれたU511だったり、ドイツ降伏によって日本海軍に接収されて伊502となったものでニュージーランドまで戦域を広げたU862というものも。
 また、沖縄戦に参加したという伝説を持ったものもあるといったものの検証を試みたり、乗組員へのインタビュー、敗戦後に海没処分された呂号潜水艦の呂500(U511が譲渡されたもの)の調査に携わった浦環東大名誉教授へのインタビューなど、目立たなかった極東のUボートの活躍にスポットを当てている。
 手塚治虫の「アドルフに告ぐ」にもドイツから極東への移動の悪戦苦闘ぶりは描かれているし(北極海から日本へ行くのはフィクションだが)、吉村昭の「深海の使者」は日本海軍の遣独潜水艦にスポットを当てた労作だが、こちらはドイツ海軍の極東での活躍やドイツ人の日本、日本の勢力圏での振る舞いぶりは違う視点での太平洋戦争を見られて興味深く、改めて日本人の嫌なところ、弱点を認識させられるものもあった。