放射性物質は最終的にどうなるかを考えてみますと。

放射性物質の原子が壊れて放射線を出しながら他の元素に変わり、それを繰り返すと、最後には壊れない安定した元素になります。それ以上壊れないので放射線は出なくなるようです。つまり放射線を出す能力(放射能)は時間がたつと減っていくのです。この減る割合は放射性物質の種類によって異なります。この放射能が半分になる時間を半減期(物理学的半減期)といいます。

例えばヨウ素131では8日、セシウム137では30年です。ヨウ素131は8日で元々の能力の半分になり、16日で4分の1になります。2011年3月に福島第一原子力発電所から飛んできたヨウ素131の放射能は、今ではもうほとんど残っていないことになります(7月のはじめには4096分の1程度に減っていると考えられます)。それに対してセシウム137は半減期が30年と長いので、2011年3月に飛んできたセシウム137はまだまだ放射能をもっていることになります。

 放射性物質の影響を考える上でもう一つ重要なポイントがあります。体内に入った放射性物質には物質ごとにそれぞれ結びついて沈着しやすい臓器があります。大部分は尿や便として体外に出ていきます。この体外への排泄量を考慮して、体内に入った放射性物質の量が半分になる時間は年齢によって異なりますが、これを「生物学的半減期」といいます。セシウム137の生物学的半減期は成人の場合100日程度と考えられています。このため体内に入ったセシウム137は100日程度で半分になります。これはセシウム137の30年という半減期(これを物理的半減期と区別することもあります。)に比べて非常に短いといえます。

「物理学的半減期」に従った減少と、「生物学的半減期」に従った減少の2つが同時に進むため、例えばセシウム137のように物理学的半減期が長い放射性物質であっても、体内に残存する量は約110日で半減します。これを実効半減期といいます。以上のことから、同じ量の放射性物質でも、半減期が長いほど、より周りに与える影響は大きいことになります。

※放射性物質の半減期
 ヨウ素131は8.04日、コバルト60は5.27年、セシウム137は30年、
 ラジウム226は1600年、プルトニウムは2万4000年、
 ウラン238は45億年とされています。

※各放射性物質の沈着しやすい臓器
 甲状腺~ヨウ素131、
 肝臓~セシウム137、コバルト60、トリウム232、アメリシウム241
 骨~セシウム137、トリウム232、アメリシウム241、ストロンチウム90、
   プルトニウム239、ラジウム226
 筋肉~セシウム137
 肺に滞留~プルトニウム239、ラドン222
 腎臓~セシウム137

出典:北海道電力 http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/atomic/explanation/knowledge-07.html