「ゆうパック」の大規模遅配が中元商戦中に起きた。「ペリカン便」を吸収したので荷さばきが混乱したではひどすぎる。郵貯資金の運用に偏った郵政見直しに問題はないのか。

「大量の荷物に慌てた」。郵便事業会社の社長は32万個の遅配をこう釈明した。しかし今月1日の日本通運ペリカン便吸収による取扱量急増は織り込み済みのはずだ。準備不足では済まされない。「気持ちをお届けする側の消費者」の気持ちを全く理解していない。1日も早く届けてほしいのが利用者の心理だ。元官僚らしい発言に驚きと憤りを感じる。

国内3位のペリカン便と4位のゆうパックは郵政民営化後の2008年6月、ともに不採算だった宅配便を統合し、共同出資のJPエクスプレスを設立した。ところがその後、自公政権の鳩山邦夫総務相らが収益計画が甘いなどと問題視し、統合計画は宙に浮いた。

これを機に顧客離れが相次ぎ、毎月50億円の赤字、今や累積損失が1000億円に達する。郵便会社は電子メールの普及も重なり、2010年度は8年ぶりに営業赤字に転落する見通しだ。今回はいわば統合の仕切り直し。宅配便を稼ぎ頭に育てたいのだろうが、それにしても準備がお粗末過ぎる。

機器操作の満足な訓練もせずに見切り発車してしまったのだろう。お中元の繁忙期をはずすくらいの工夫は、専門家でなくても思い浮かぶではないか。社長も、親会社・日本郵政の社長も元官僚だ。お役所仕事と指摘されるのも当然の話。

民主党が政権公約に優先成立を掲げた郵政改革法案は連立与党・国民新党の選挙基盤、全国郵便局長会の要望に応えたものだ。郵便局長らが嫌がる合理化に目をつむり、郵貯限度額の引き上げで郵便局の手数料を増やし経営を安定させる。政治色の濃いビジネス形態では職員の資質向上など期待できない。金融偏重が大規模遅配の原因と見る向きもある。

一部顧客らが今回の失態に嫌気し、ゆうパックから離れ始めた。40%近いシェアを維持する業界トップ、ヤマト運輸の宅急便は、集配拠点をきめ細かに設けて配達時間を厳守するなど、徹底した顧客サービスの向上に努めている。なぜ参考にしないのか。失った信頼の回復には経営の基本動作が必要不可欠だと思う。