【本編に入る前に】

ザカライアは本来関西弁を使用するキャラクターですが、便宜上セリフ以外の部分では標準語を使用します。

また、当サイドストーリーには自シム同士の同性愛表現が含まれております。

予めご了承ください。

 

人間の中には、『人と関わらなくてもそれなりに生きていける者』がいると聞いたことがある。

その一方で、『他の誰かに依存していないと生きていけない者』がいるとも聞いたことがある。

 

ー俺はどうやら、『後者』側の人間らしい。

 

 

人間依存

 

「フゥ……」

捜査官としての仕事が一通り終わり、帰宅後に俺は深くため息をついた。

 

休憩中、同僚達が俺の話をしているのが聞こえた。

それだけならなんて事ない話だったのだが、その内容は……まあ、あまり良く思わない内容だった。

 

『あのザカライアっていう人、なんかスキルみたいなものが成長してないよね』

『その割に出世はしてるみたいだし……なんであんなおっさんが出世してんだろうね?』

『……もしかしてさぁ、本部長となんか関係あったりすんじゃない?』

『やだぁー! そんな下世話な想像やめてよぉー! ……まあけど、実際あり得そうだけどねー?』

 

「……んなわけないやろ」

会話の内容を思い出し、そうポツリと呟いた。

確かに、何をやっても成長しないことはわかっている。けど、それでもなんとか出世できているのはそれなりに事件をちゃんと解決しているからであって。

そもそも俺は今結婚もしているわけで。

 

……けど、それもそろそろ限界なのかもしれない。

今のままでは、これ以上の出世はできないだろう。

 

さて、どうしたものかと考えていると。

 

「ザカさん?」

「のわぁっ!?!?」

 

ふと目を開いた先に数秒前にはなかった顔がみえ、思わず情けない声をあげてしまった。

「か……帰ってきてたんか……」

「おう。……つーか、んな驚かなくてもいいだろ」

呆れた声でそう言う、赤い髪をした目の前の男。

彼は『勅使河原武雄』。俺の結婚相手である。

この世界では、同性同士の恋愛や結婚というものが認められている。……とはいえ、周りに公にしているわけではなかった。

 

その理由は性別ではなく、互いの『キャリア』にあった。

 

先述したように、俺のキャリアは『捜査官』。それに対し、武雄のキャリアは『犯罪者』。

捜査官である俺が、犯罪者である武雄と恋愛関係にあるどころか結婚していると周りに知られたらどうなるか。

 

「そういや、めちゃくちゃ眉間に皺寄ってたけど、何かあったか?」

「え? ……ああ、まあ、そんなとこや」

武雄からの問いに俺がそう答えると、武雄は「ふーん」と返しながらタバコを取り出した。

その後、「吸う?」と俺にも1本渡してきたため、俺は「おおきに」と受け取ることにした。

「……あっ、やべ」

俺がもらったタバコに火をつけ吸い始めると、横からそんな声が聞こえてきた。

「悪ィ、ザカさんライター借りていい? 俺のオイル切れたわ」

「ああーすまん、俺のも今つけたのがギリギリやったわ」

武雄からの問いに俺がそう返すと、武雄は「そっか……」と少ししょぼんとした顔で呟いた。

その後、諦めて手に持っていたタバコを箱にしまい直そうとしたが、ふと何かを思いついたようにそのタバコを再び口に咥えた。

「……ザカさんこっち向いて」

「ん?」

武雄の言葉に俺が武雄の方を向くと、武雄はいきなり俺の後頭部を掴んで顔を近づけてきた。

「!?」

俺が驚きで固まっていると、数秒後武雄の顔が離れていった。

「悪ィ、タバコの火ちょっともらったわ」

そう言って、武雄は不敵な笑みを浮かべた。

「……アンタほんっま……そういうとこやで」

「フハ、ザカさん顔真っ赤」

「誰の所為や誰の」

 

ー人間の中には、『他の誰かに依存しないと生きていけない者』がいる。

 

俺は恐らく、今目の前にいるこの男に依存しなければ、生きていけないのだろう。

 

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【あとがき】

ここまで読んでいただきありがとうございます!

 

後半にある「タバコ」の描写ですが、実際のSims4にはそんな動作ないんですね。

ただ私的にこの2人はタバコがめちゃくちゃ似合うと思っているので描写を入れちゃいました。

いつかSims4でもシムがタバコ吸えるようになったらいいなぁ、なんて思っております。

 

それではまた!