美佐は、ケンゴの首にまたがって“ある場所”へ向かっていた。スズメバチのチュンチーに比べ、真後ろでパチパチと素早く動かすケンゴの羽の風圧は強く、長く柔らかい美佐の髪を乱れさせている。
到着したのは、角の取れた岩がゴロゴロと転がる河原……恐らく美佐のいた町を流れるあの川だろう。美佐は岩場に立ち、左隣のケンゴに聞いた。
「ここで、それっぽい人を見たの?」
「そうダヨ……顔も体もピッタリだし、メガネもかけてたし」
「彼は何をしてたの?」
「エットなんか……スゴく長い棒を持ってたヨ」
「釣りかなぁ……渓流釣り好きだったし。一人だったの?」
「イイヤ、もう一人と一緒だったネ」
「え、そうなの?どんな人だった?」
「人間って良くわからないケド、背が靖信より低くてスリム……あと頭に麦の被り物をしてて、お花の絵の服を着てたヨ」
靖信とは断定出来なかったが、ケンゴの話の人間と靖信は酷似しており、美佐はまず間違いないだろうと考えた……しかも、女連れで。
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それから1ヶ月ほど経った。美佐はせっせと狩りをしながら、色々な話に耳を傾けていた。
あれ以降、美佐のもとには情報を掴んだ数多くの協力“虫”が来客した。中には、小さな人間がいるという物珍しさ見たさに来ただけのムカデや、『今そこに立ってた!』と来てくれたものの向かうと古びたカカシだったというダンゴムシもいた……しかし、少しずつ情報は集まってきている。
そして春から夏に近付いている事もあり、ジンと訴えた時はイモムシだったがサナギと成長し、行動範囲を広げて引き続き調べるアゲハチョウまで現れた。
また最近では、コガネムシからトカゲ・トカゲから鳥へ……などと、まるで食物連鎖のような“伝言ゲーム”が始まっているようで、情報のスピードや広さ・そして襲撃時にパワーも使える組織にまで育っていた。
そんなある日の朝、“マメキチ”と名乗るハトが、ビッグニュースを持って現れた。早速美佐はマメキチに乗って向かった。飛び立って暫くは安全重視で羽毛の中に寝転んでいたが、甘ったるい異臭に耐え切れず、結局は首筋に掴まった。
あるビルの屋上に到着した。マメキチの言う通り美佐が目の前に建つマンションの部屋を覗くと、背が低くスリムな女性がベランダで洗濯物を干しており、側にランドセルを背負った女の子が立っている。
そして「お~い、ヒロミ……そろそろ学校だぞ」という奥からの声に女の子は部屋に入り、入れ替わるように背の高いメガネの男が現れた。
「行ってきま~す!」「はい、行ってらっしゃい」……キィー、バタン!ドアが閉まる音の直後、男と女は濃密なキスを始めた。
靖信だった……彼が既婚者で子供までいる事をその時知った美佐は、声にならない声を出しながら大粒の涙と大量の鼻水を垂らして、マメキチの羽毛に潜り込んだ。
臭いなんて気にならない……靖信に裏切られ、人生の殆どを奪われてしまった美佐の心は、怒りと悲しみが入り混じっていた。
巣へ戻った時、美佐は顔中をカピカピにしていたが、涙は枯れており、凛としていた。
美佐は近くの水溜りで顔を洗うと、ジンに近付いていきなり土下座をし、訴えた。
「ジンさん、もう我慢出来ません!靖信への攻撃命令を、お願いします!」
アリ達は、巣の周りで立ちすくんでいた……ただ一匹、ジンは目の前の巨体を前に堂々と立ち、チュンチーに話し掛けた。
「お前に頼みたい事があるんだが」
「おう、どうした?隣のちっこい人間ぐらいなら、刺すどころか張り倒せば殺れるぞ」
「いや、そうじゃないんだ。この美佐はある理由で小さくなったんだが、吊り上げて周りを見せてやってくれんか?」
「なんだ、そんな事なら簡単簡単……報酬として、喰ってもいいのか?」
「いや、それはダメだ……狩りの能力は抜群でな」
「ダハハ……ジン、冗談だ。今までの恩もあるからな、心得た!」
話し終えると、チュンチーは美佐の服をヒョイッと掴み、羽で轟音を立てながらリフトアップし始めた。木々を少しずつ抜け続けながら、美佐は一通りの説明をしてから質問した。
「ジンさんとはどんな関係なんです?」
「狩りの穴場の情報を教え合う仲でな」
「アリを襲ったりはしないんですか?」
「もし奴らが何十匹で襲ってきたら無力だろうしな……あと実は、俺達とアリは、分類的に近いんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ。どう説明すればいいかな……人間とサルのように。むしろ俺達は、ミツバチとかよりもアリの近親でな」
チュンチーの話を聞き驚いていると、木々を抜けた。
美佐は静かに風景を見下ろすと、その光景に涙した。
見た事のあるスーパー・美佐が勤める研究所・そしてあの夜、靖信を待ったホテル……巣は小高い山の奥だったが、途方にくれない場所で安心した。
「美佐、どうした?」
「いや……チュンチーさんありがとう。ある程度の場所が判ってホッとした」
その言葉を合図に、チュンチーはゆっくりと、木々の間をすり抜けながら、待機するジンのもとへ戻った。
チュンチーが「じゃあ、またな」と飛び去ろうとした時、美佐は「ちょっと良いですか?」と引き止めた。
「あの……チュンチーさんって、人探しをする事って出来ます?」
「いや、勘弁してくれ……人里に出た時点で、大騒ぎされるからな」
「そうですか……じゃあ、殺さない程度に人を襲う事は?」
「それは出来ないな……同じ蜂なら、ミツバチの奴らに頼んだ方がいいんじゃないかな?」
「ミツバチさんに話をする事は出来ます?」
「いやいや……実は奴らは、俺達を団子状に襲って殺しちまうから、怯えてるんだ」
「そうなんですか……わかりました、ありがとうございます!」
「また何かあったら呼んでくれな」
そう言うとチュンチーは、ブンッと飛び去って行った。
直後、ジンは「じゃあ、少し移動するか」と、美佐を誘った。5分ほど歩くと、パッと色鮮やかな空間が広がる。白・ピンク・オレンジ・黄色・紫・そして緑……そこは、見事なほどの、モザイク絵のような花畑だった。
「き、綺麗……」と美佐は見とれていたが、ジンからの「おい、行くぞ」という言葉で我に返り、花畑の中へ入っていくジンについて行った。
暫くするとジンは立ち止まり、急に「さぁ、みんな集まってくれ!」と叫んだ。すると、周りの葉がザワザワと揺れ始め、「なんだなんだ?」数多くの虫が姿を現した。ある程度集まったところで、ジンは語り始めた。
「お前らにお願いしたい事がある!実はこの小さな人間は、ある人間を探している。しかし、俺達には遠くへ探しに行く手段がない……みんな、探してくれないか?」
ジンは美佐に話すと、美佐は大声で、自己紹介・靖信の勤務先やよく顔を見せる場所・特徴など、延々と虫達へ説明した。
最後にジンが「もし少しでも手掛かりがあったり、他に協力してくれる事があれば、俺か美佐に呼びかけてくれ!」と言うと、無数の虫達は「わかった~!」と言って立ち去った。
次の日の晴れた朝、獲物を探している美佐は、ジンから「おい美佐、お客さん第一号だ!外に出て来てくれんか」と呼ばれた。
巣に近付くと、美佐より背が少し低く、背中の丸い物体が現れた。
「ヨウ、美佐ちゃん……だっけ?オイラ、テントウムシの“ケンゴ”。ヨロシクな!」
赤と黒の背中を、木漏れ日が艶やかに光らせていた。
「お前に頼みたい事があるんだが」
「おう、どうした?隣のちっこい人間ぐらいなら、刺すどころか張り倒せば殺れるぞ」
「いや、そうじゃないんだ。この美佐はある理由で小さくなったんだが、吊り上げて周りを見せてやってくれんか?」
「なんだ、そんな事なら簡単簡単……報酬として、喰ってもいいのか?」
「いや、それはダメだ……狩りの能力は抜群でな」
「ダハハ……ジン、冗談だ。今までの恩もあるからな、心得た!」
話し終えると、チュンチーは美佐の服をヒョイッと掴み、羽で轟音を立てながらリフトアップし始めた。木々を少しずつ抜け続けながら、美佐は一通りの説明をしてから質問した。
「ジンさんとはどんな関係なんです?」
「狩りの穴場の情報を教え合う仲でな」
「アリを襲ったりはしないんですか?」
「もし奴らが何十匹で襲ってきたら無力だろうしな……あと実は、俺達とアリは、分類的に近いんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ。どう説明すればいいかな……人間とサルのように。むしろ俺達は、ミツバチとかよりもアリの近親でな」
チュンチーの話を聞き驚いていると、木々を抜けた。
美佐は静かに風景を見下ろすと、その光景に涙した。
見た事のあるスーパー・美佐が勤める研究所・そしてあの夜、靖信を待ったホテル……巣は小高い山の奥だったが、途方にくれない場所で安心した。
「美佐、どうした?」
「いや……チュンチーさんありがとう。ある程度の場所が判ってホッとした」
その言葉を合図に、チュンチーはゆっくりと、木々の間をすり抜けながら、待機するジンのもとへ戻った。
チュンチーが「じゃあ、またな」と飛び去ろうとした時、美佐は「ちょっと良いですか?」と引き止めた。
「あの……チュンチーさんって、人探しをする事って出来ます?」
「いや、勘弁してくれ……人里に出た時点で、大騒ぎされるからな」
「そうですか……じゃあ、殺さない程度に人を襲う事は?」
「それは出来ないな……同じ蜂なら、ミツバチの奴らに頼んだ方がいいんじゃないかな?」
「ミツバチさんに話をする事は出来ます?」
「いやいや……実は奴らは、俺達を団子状に襲って殺しちまうから、怯えてるんだ」
「そうなんですか……わかりました、ありがとうございます!」
「また何かあったら呼んでくれな」
そう言うとチュンチーは、ブンッと飛び去って行った。
直後、ジンは「じゃあ、少し移動するか」と、美佐を誘った。5分ほど歩くと、パッと色鮮やかな空間が広がる。白・ピンク・オレンジ・黄色・紫・そして緑……そこは、見事なほどの、モザイク絵のような花畑だった。
「き、綺麗……」と美佐は見とれていたが、ジンからの「おい、行くぞ」という言葉で我に返り、花畑の中へ入っていくジンについて行った。
暫くするとジンは立ち止まり、急に「さぁ、みんな集まってくれ!」と叫んだ。すると、周りの葉がザワザワと揺れ始め、「なんだなんだ?」数多くの虫が姿を現した。ある程度集まったところで、ジンは語り始めた。
「お前らにお願いしたい事がある!実はこの小さな人間は、ある人間を探している。しかし、俺達には遠くへ探しに行く手段がない……みんな、探してくれないか?」
ジンは美佐に話すと、美佐は大声で、自己紹介・靖信の勤務先やよく顔を見せる場所・特徴など、延々と虫達へ説明した。
最後にジンが「もし少しでも手掛かりがあったり、他に協力してくれる事があれば、俺か美佐に呼びかけてくれ!」と言うと、無数の虫達は「わかった~!」と言って立ち去った。
次の日の晴れた朝、獲物を探している美佐は、ジンから「おい美佐、お客さん第一号だ!外に出て来てくれんか」と呼ばれた。
巣に近付くと、美佐より背が少し低く、背中の丸い物体が現れた。
「ヨウ、美佐ちゃん……だっけ?オイラ、テントウムシの“ケンゴ”。ヨロシクな!」
赤と黒の背中を、木漏れ日が艶やかに光らせていた。
太陽が少し昇った午前10時頃、ジンと巣を出た美佐は、何度も首を傾げながら呟いていた。
「……ワヤ?……ワヤ?」
「ん?……美佐、どうした?」
「あの~……女王様が話してた“ワヤ”って何ですか?」
「ああ、それか。そうだな……“泣きっ面に蜂”ってトコかな」
「つまりは、開発を横取りされた上に、小さくされた事に対してですか?」
「まぁそういう事だな」
「それでは、“最初エラいかもしれんけど”とは……新人なのに“偉い”って言われるのは変かと」
「ハハハハ……それは上下関係の“偉い”ではなく、“凄く疲れる”って事だ」
「えっと……こういう言葉って、蟻さんの言葉ですか?」
「女王様はナゴヤってトコの出身だからな……向こうの言葉らしい」
「すると、ここは名古屋なんですか?」
「いや、フクシマだ……女王様は、ナゴヤからの人間の乗り物で来たらしいぞ」
美佐はホッとした……福島県内に放り出されたのが、何よりの救いだった。
狩りの対象や狩りの方法を教えて貰った。ジンらアリ達は、自身が持つ大きな顎で、獲物を噛み殺して運ぶ。しかし元々人間の美佐には、同じような狩りが出来ないし、巣に獲物を持ち運ぶ体力があるハズもない。
「それでは……」と美佐が提案したのが、美佐自身は小枝や砂などの道具を使った狩り専門となり、運搬は他のアリにお願いする……という手法。これが上手くいったようで、なんと2時間ほどで大量の食料が巣に運ばれた。これに大満足した女王は美佐に、午後からジンと今後の戦略を検討する事を認めた。また“英雄扱い”で、専用の部屋も増設してくれるという。
部屋が準備できると、ジンは美佐を迎え入れて話し始めた。
「美佐……人間ってやっぱ凄いなぁ!」
「いえいえ……アリさんの方々の体力には及びません」
「部下に聞いたんだが……普段の3日分は貯まったらしいぞ」
「えっ、そんなに?」
「女王様が褒めてたぞ……この場を設けてくれたのも、女王様のおかげだな」
「ホントに感謝します!」
「じゃあ本題に……最終的にどうしたいんだっけ?」
「靖信という男に仕返しをして、身体を元に戻したいんです」
「ああ、そうだったな、まずは靖信を……か。居場所の目星は?」
「いえいえ……そもそも私が今、どこいるのかも分かりませんし」
「どうすれば今の場所が分かると思う?」
「そうですね~……高い所から望めば、わかるかもしれません」
「そっか……ただ、オレ達に羽が生えるのはもう少し後だし、かと言って山頂も遠いからな~」
「難しい……ですよね?」
「……あっ!美佐、出来るかもしれんぞ。おい、誰かぁ!」
ジンは、部屋の入り口を通りかかった部下を呼び止め、「今から“チュンチー”を呼んでくれ」と依頼した。
初めて聞く名前に、美佐はジンに問い掛けた。
「ジンさん……“チュンチー”って誰です?仲間ですか?」
「う~ん……アリではないが、アリに近い関係。人間から何て呼ばれてるかは知らん。根はいいヤツだ」
「そうですか、少し安心しました」
そう言うと、美佐は続けて話した。
「あとジンさん。例え靖信を見付けたとしても、どう仕返ししましょう?」
「どれぐらいの仕返しをしたいんだ?」
「殺したくはないですね……文句も言いたいし、身体を元に戻す方法も聞きたいし」
「そうなると……それはチュンチー以外だな。手分けして協力者を探そう」
ジンの言葉に、美佐は『?』と感じた。
すると、さっきの部下が「失礼します!」に部屋に呼びに来た。美佐とジンは巣穴の出入り口に向かったが、差し込む光と比例して部下達のざわめきも大きくなっていった。巣穴を出ると、大きな虫が立ちはだかる。
「チュンチー、よく来てくれた!」
“チュンチー”は、アリと顔や体の形が似て、顎も大きい。しかし、大きさはアリの十倍で、長めの羽を背負い、色は黒と黄色。
「よう、ジン……久し振りだなぁ」
“チュンチー”の正体……それを人間は、“スズメバチ”と呼ぶ。
「……ワヤ?……ワヤ?」
「ん?……美佐、どうした?」
「あの~……女王様が話してた“ワヤ”って何ですか?」
「ああ、それか。そうだな……“泣きっ面に蜂”ってトコかな」
「つまりは、開発を横取りされた上に、小さくされた事に対してですか?」
「まぁそういう事だな」
「それでは、“最初エラいかもしれんけど”とは……新人なのに“偉い”って言われるのは変かと」
「ハハハハ……それは上下関係の“偉い”ではなく、“凄く疲れる”って事だ」
「えっと……こういう言葉って、蟻さんの言葉ですか?」
「女王様はナゴヤってトコの出身だからな……向こうの言葉らしい」
「すると、ここは名古屋なんですか?」
「いや、フクシマだ……女王様は、ナゴヤからの人間の乗り物で来たらしいぞ」
美佐はホッとした……福島県内に放り出されたのが、何よりの救いだった。
狩りの対象や狩りの方法を教えて貰った。ジンらアリ達は、自身が持つ大きな顎で、獲物を噛み殺して運ぶ。しかし元々人間の美佐には、同じような狩りが出来ないし、巣に獲物を持ち運ぶ体力があるハズもない。
「それでは……」と美佐が提案したのが、美佐自身は小枝や砂などの道具を使った狩り専門となり、運搬は他のアリにお願いする……という手法。これが上手くいったようで、なんと2時間ほどで大量の食料が巣に運ばれた。これに大満足した女王は美佐に、午後からジンと今後の戦略を検討する事を認めた。また“英雄扱い”で、専用の部屋も増設してくれるという。
部屋が準備できると、ジンは美佐を迎え入れて話し始めた。
「美佐……人間ってやっぱ凄いなぁ!」
「いえいえ……アリさんの方々の体力には及びません」
「部下に聞いたんだが……普段の3日分は貯まったらしいぞ」
「えっ、そんなに?」
「女王様が褒めてたぞ……この場を設けてくれたのも、女王様のおかげだな」
「ホントに感謝します!」
「じゃあ本題に……最終的にどうしたいんだっけ?」
「靖信という男に仕返しをして、身体を元に戻したいんです」
「ああ、そうだったな、まずは靖信を……か。居場所の目星は?」
「いえいえ……そもそも私が今、どこいるのかも分かりませんし」
「どうすれば今の場所が分かると思う?」
「そうですね~……高い所から望めば、わかるかもしれません」
「そっか……ただ、オレ達に羽が生えるのはもう少し後だし、かと言って山頂も遠いからな~」
「難しい……ですよね?」
「……あっ!美佐、出来るかもしれんぞ。おい、誰かぁ!」
ジンは、部屋の入り口を通りかかった部下を呼び止め、「今から“チュンチー”を呼んでくれ」と依頼した。
初めて聞く名前に、美佐はジンに問い掛けた。
「ジンさん……“チュンチー”って誰です?仲間ですか?」
「う~ん……アリではないが、アリに近い関係。人間から何て呼ばれてるかは知らん。根はいいヤツだ」
「そうですか、少し安心しました」
そう言うと、美佐は続けて話した。
「あとジンさん。例え靖信を見付けたとしても、どう仕返ししましょう?」
「どれぐらいの仕返しをしたいんだ?」
「殺したくはないですね……文句も言いたいし、身体を元に戻す方法も聞きたいし」
「そうなると……それはチュンチー以外だな。手分けして協力者を探そう」
ジンの言葉に、美佐は『?』と感じた。
すると、さっきの部下が「失礼します!」に部屋に呼びに来た。美佐とジンは巣穴の出入り口に向かったが、差し込む光と比例して部下達のざわめきも大きくなっていった。巣穴を出ると、大きな虫が立ちはだかる。
「チュンチー、よく来てくれた!」
“チュンチー”は、アリと顔や体の形が似て、顎も大きい。しかし、大きさはアリの十倍で、長めの羽を背負い、色は黒と黄色。
「よう、ジン……久し振りだなぁ」
“チュンチー”の正体……それを人間は、“スズメバチ”と呼ぶ。