岡下昌平です。
以下、伊吹先生のFacebookを引用します。
ご一読ください。
米イランの緊張関係で、中東地域は不安定状態です。中東は世界の原油供給地であり、イスラム教内の宗派が違う国の対立の激しい地域です。まとまりの悪さに乗じ、欧州諸国が植民地化や委任統治の取り付けを繰り返した歴史は、中東情勢を考えるうえで忘れてはならない点です。キリスト教ヨーロッパとイスラム教アラブの対立ともいえます。
 千年以上前、ローマ教皇ウルバヌス2世が聖地エルサレム奪還を名目に、十字軍結成を欧州諸侯に呼びかけました。以降二百年、欧州とアラブは一進一退の戦いを続けました。イスラム諸国では、一神教のイスラムは、アッラーの教えが法であり、社会規範であり、宗教指導者が国の最高指導者です。約11億人の信者は、中東、北アフリカ、アジア等に及びます。多数を占めるスンニ派(サウジ等)に対し、シーア派(イラン等)等73のセクトがあるとされ、信仰上の対立が国家間の対立(サウジ対イラン)なのが現実です。
 産業革命以降の欧州諸国は、中東地域の実質的支配にしのぎを削りました。英国に代わり中東地域の安定の役割を担ったのは米国です。米国の経済力、軍事力はなお世界一ですが、その力は相対的に低下しています。加えて、目前の大統領選挙の為、自国第一で軍事的衝突は避けたい、だがコアの支持組織の福音派キリスト教に配慮し、イスラムに強く出なければならないトランプ大統領の政策矛盾の為、中東は混迷を深めているように思えます。
 駐イラク米国大使館攻撃への報復として、米軍はイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官を攻撃、死去させました。その報復として今度は、イラク米軍基地をイランが攻撃するなかで、ウクライナ旅客機を誤射し、カナダ、イラン、ウクライナ国民等167人が死去。注目すべきは、イランの首都テヘランで、国教シーア派の下の政府に対し、国民による想定外の抗議デモが行われていることです。体制が揺らぐことを懸念するイラン政府の出方が注目されます。
 米国は世界一の産油国で原油輸入量はわずか。EUも北海油田やロシア等から原油調達。逆に中東原油の輸入が多いのは、中国、インド、日本の順ですが、日本は81%のずば抜けた中東依存国です。中東の混乱は、備蓄があっても、日本経済と国民生活を直撃します。今日からの国会では、与野党とも何故自衛隊を中東派遣するのか等、現実を直視した外交議論をしたいものです。