「今昔物語」 水木しげる | ネオ・ビジョンかわら板

「今昔物語」 水木しげる

「今昔物語」

 

さて、反日感情の問題は、ちょっとしばらく忘れたいな、と考えています。

 

そこで最近読んだコミックシリーズ。今回は日本のまさに古典?な「今昔物語」を鬼太郎でおなじみ

水木しげるが漫画化した作品です。

 

ちなみに今昔物語は12世紀に編纂された、1000以上の説話による日本最大のの説話集です。

その中には芥川龍之介の「藪の中」の下地になった作品もあります。

 

 

んで、読んでみて、いやぁ、これがかなりおもしろい!

何がおもろいかって、オチなし・教訓なし・いいかげん・とんま・下ネタ、な話のオンパレードなとこ。

 

 その中の一部を紹介すると・・・

「色事師平中」では、平安一のプレイボーイ(これがマンガの中じゃえらく不細工なのがおかしい)が、ある女性に恋して、あれやこれやと手をつくすが女はふりむいてくれない。思い余ったこの色男が、何するかといえば、女の召使いから、女の糞尿の入った箱(平安時代の高貴な女性は、下女に自分の下の世話をさせていたんですね)を奪い取ってしまう・・・でも、その箱には、男の行動を見透かした女が、糞尿に似せた練り物が入っていました・・・男はそれを見て、「なんて洒落の利いた素敵な女性なんだぁぁ・・」とさらに恋心をたぎらせ、あげくの果ては(恋の?)病に伏して、死んでしまいましたとさ。ちゃんちゃん。

 

「かぶら男」では、旅の途中、男が急に「もよおして」しまい、畑の「かぶ」に穴をほり、あろうことか自慰をしてしまいます(いわゆるこんにゃくに穴、みたいなもん)。んで「尻も軽くなったぞ」と立ち去ってしまう。

それから、その畑の主の娘が、豊作のかぶの中に、男の自慰に使われたかぶを見つけて、「あら、おいしそうな液体がついてるわ」と、思わずかぶりついてしまう。で、その男の「淫気」がついたかぶを食べた女は、なんとまぁ、妊娠してしまいました。生娘だった娘が妊娠したとあって、すったもんだはありますが、結局最後はその男のしわざと分かり、二人はめでたく結婚しましたとさ。ちゃんちゃん。

 

その他にも、女と交わりたいばかりに、死んで鬼となる坊主の話やら、ペニスを失わせる幻術「まら術」を身につけようとがんばる男の話やら、サナダ虫が人間に化けてでてくる話やら、すっとんきょーな話が目白押し。

 

特にあほな話ばかりピックアップしてしまいましたが、その他には、ひたすらのんびりした庶民の、ちょっと心温まる話もたくさんあります。教訓らしい教訓はないですが、それがまたいい。

ついでに、あまりえぐい争いの話がないのが、いいんです。

 

これを読むと、色恋大好きだわ、妖怪やら魔物やらと「共生」できてるわ、ひたすらのんびり生きることが大好きな、古き良き日本の伝統・日本人気質のルーツを、しみじみと感じることができます。

 

結局、日本人って、元来争いを好まない民族だなぁ、平和が大好きなんだなぁ、というのがよく分かる1冊。

 

そしてそれは、戦争体験を色濃く作品の中に反映させている(逆説的に、ね)水木しげる先生の描く絵だからこそ、より強く浮きだたせることができる、ということも忘れてはなりません。

 

オススメです。