「寄生獣」 | ネオ・ビジョンかわら板

「寄生獣」

「寄生獣」

まずは文句なく傑作でしょう。

ストーリーは、宇宙から飛来してきた蛇のような生命体(高度な知性体でもある)が、人間に「寄生」し、人間の頭部をのっとると同時に、「食物」として人間を食らう。彼ら寄生獣の頭部は、変幻自在で。いろんな人間の顔に変化できるし、武器ともなるし、巨大な牙を剥いた口にもなる。そんな脅威の生物となって人間を食らい続ける寄生獣の中、間違えて主人公シンイチの右手に寄生してしまった寄生獣「ミギー」。シンイチとミギーは奇妙な共生生活のなか、時に反発しながら友情を育み、ともに他の寄生獣と戦う運命共同体となっていく・・・

そんな話ですが、まずは人間の頭部が、不気味に変幻する造形美が、気持ち悪くもある意味美しく、マンガ表現として大変面白い。このへんの設定は、懐かしの映画「遊星からの物体X」からイメージをインスパイアされたのかとも思えますね。あと後の「ターミネーター2」の液体金属のやつにも近いです。

でもこのマンガが面白かったのは、その漫画的な造形のインパクトとともにそのテーマ性。

人間を食らう寄生獣に対して「悪魔の仕業か?」などと人間が騒ぐ様子を見て、寄生獣たちの台詞・・・

「平気で豚や牛やらミンチにしている人間が何いってんだか」

さらにシイイチに寄生した寄生獣ミギーがごく当たり前のことのように言う台詞・・・

「悪魔、という言葉を辞書で調べたが、一番近いのは人間だろ」

動物たちがただ生きるためだけに他の動物たちを食らう。

同じくただ生きるために、「人間」を食らう寄生獣。

寄生獣たちは、高度な知性を持つ生物であると同時に、そんな生きるための「本能」のみに忠実な生物として描かれています。そしてまた、必要以上の食物(=人間)は食らわない、そんな秩序も備えた高度な社会性のある存在としても描かれています。

対して人間はどうだ?

「生きる目的」以外で、どれだけの他の生き物を殺し、またどれだけの同胞を殺してきたのか・・

万物の霊長である人間が、「生きるため」以外の不必要な目的(過剰な食欲やら性欲やら、さらに宗教観やら自由主義やらの思想も含め)のために、どれだけの犠牲を生み出してきた生物なのか・・・

そんな、根本的な「人間のあり方」に対する疑問を投げかけているのが本著なのです。

必読!!

PS:このマンガは、永井郷原作版の「デビルマン」とも似た感触あります。「デビルマン」もかなり衝撃的な話だったんですが、要するに、人間ってそんなたいした生き物なのか?偉そうに人類愛やら、地球愛(動物や自然にやさしく、ね)やら語るがその実体は・・・?

そんな根本的な偽善に対して、大きな疑問を投げかけているのが両作品なんでしょう。

まだ未読な方は、あわせて読んでおくのをオススメします!

しかし、映画版「デビルマン」・・・とりあえず、そのすべり具合を、見ておかねば。ですね・・・