インスタグラムの運用を始める多くの人々は、純粋な願いを持っています。
少しでも家計を助けたい、家族との時間を豊かにしたい、自分のスキルで誰かの役に立ちたい。
子育ての合間を縫って、あるいは本業の傍らで、未来への希望を胸に発信活動をスタートさせるのです。
しかし、運用を続けるうちに、いつの間にかその純粋だったはずの「目的」がすり替わってしまう現象を、私は危惧しています。
「フォロワーを増やすこと」や「収益を上げること」が、本来の目的を追い越し、それ自体がゴールになってしまうのです。
これは、先日開催した小規模なオフラインの集まりでも、非常に深い議論となったテーマでした。
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25歳｜株式会社S.Line 代表
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あなたの「目的」は、インスタのフォロワーを増やすことでしたか？
そもそも、あなたがインスタグラムを始めたのは、なぜだったでしょうか。
多くの場合、それは「インスタ運用で1万人に行くこと」ではなかったはずです。
例えば、子育ての悩みを共有し、少しでも心が楽になる情報を届けたいとか、自分の働き方を変えて、子どもと向き合う時間を一秒でも多く作りたいとか、そういった切実な「目的」があったのではないでしょうか。
ところが、「インスタ運用」という言葉の響きは、時として私たちを数字の追求へと駆り立てます。
インプレッションの数、エンゲージメント率、そしてフォロワーの増減。
これらは本来、目的を達成するための「指標」でしかないにもかかわらず、いつしかこの数字を伸ばすこと自体が「目的」へと昇華してしまうのです。
アルゴリズムに最適化することを考えすぎた結果、発信内容が歪み、投稿を作成することが「作業」と化していきます。
手段が目的にすり替わった瞬間、私たちは本当に大切にすべきものを見失い始めるのかもしれません。
この「目的の転倒」こそが、インスタ運用が持つ最も恐ろしい罠の一つであると、私は強く感じています。
数字のために犠牲にしているもの。それは「取り返しのつかないもの」かもしれない。
手段が目的化してしまった時、私たちは恐ろしいほどの「割り切り」を見せることがあります。
「伸ばすためだから」「成果を出すためだから」という大義名分のもと、本来の目的であったはずの「大切なもの」を、容赦なく天秤にかけてしまうのです。
これは、非常に危ういバランスの上に成り立っている状態と言わざるを得ません。
その犠牲が、取り返しのつかない領域にまで及んでいないか、今一度立ち止まって考える必要があります。
「子どもの顔出し」その投稿に、お子さんの意思はありますか？
インスタグラムの世界では、「子どもを見せた方が伸びやすい」という一種の定説が存在します。
確かに、無邪気な子どもの姿は多くの人の共感を呼び、インプレッションを獲得しやすいコンテンツであることは事実でしょう。
同じ境遇の親御さんたちからの、温かいコメントも集まるかもしれません。
しかし、私たちは問わなければなりません。「その投稿に、お子さん本人の明確な意思は反映されているのか」と。
「伸びるから」という理由だけで、まだ意思表示のできない子どもの顔やプライバシーを、不特定多数の目に晒し続けて良いのでしょうか。
あなたが投稿したその画像は、デジタルタトゥーとして半永久的にインターネットの海に残り続けます。
将来、お子さんが大きくなった時、自分の知らないところで消費されていた過去を知り、どう感じるでしょうか。
そのリスクを天秤にかけてまで、あなたは「インプレッション」や「収益」が欲しいのですか。
これは、「子どもを見せること」そのものを全否定したいわけではありません。
ただ、それが「あなたが稼ぐため」の手段として子どもを安易に利用している構図になっていないか、その倫理観を厳しく問うべきだと考えています。
もし胸を張って「子どもの将来のためにもなっている」と断言できないのなら、その発信は根本から見直す時期に来ているのかもしれません。
夫婦で発信、家族で協力。その裏で軋む「心」の音。
インスタ運用において、家族の協力は非常に大きな力となります。
夫婦で一緒に発信したり、パートナーに撮影や編集を手伝ってもらったりする姿は、傍から見れば微笑ましいものです。
しかし、その裏側で、見えない「強制」や「我慢」が発生していないでしょうか。
「発信のために、こうしてほしい」という要求が、いつしかパートナーへの過度な負担となり、心をすり減らさせている可能性はないでしょうか。
インスタ運用は、周知の通り、膨大な時間の投下を必要とします。
その時間を確保するために、家族団らんの時間が犠牲になったり、会話がスマホの画面越しになったりしてはいないでしょうか。
これは、ある種のトレードオフとして避けられない部分もあるのは事実です。
何かを得るためには、何かを差し出す必要があるという現実から、目をそむけることはできません。
ですが、そのトレードオフが「許容範囲」を大きく超えてしまった時、関係性は修復不可能なレベルで崩壊を始めます。
本来、家族関係をより良くするため、家族の未来のために始めたはずのインスタが、離婚や家庭崩壊の引き金になってしまう。
これほど本末転倒な話があるでしょうか。
手段であったはずのインスタが、最も守りたかったはずの「目的」そのものを破壊してしまうのです。
インスタ界隈の「離婚ブーム」に感じる強烈な違和感。
これは、私がこの業界に長く身を置き、様々な側面をメタ的に観察してきたからこそ感じる、一つの不穏な「風潮」です。
特に、子育てや暮らしを発信していた女性が、インスタで大きな収益を上げ、経済的自立を果たした結果、それまでのパートナーと離婚する、というケースが散見されるのです。
もちろん、個々の家庭には様々な事情があり、離婚という選択自体に善悪の物差しを当てるつもりは一切ありません。
それは当事者間の意思決定であり、尊重されるべきものです。
私が違和感を覚えるのは、その「プロセス」と「風潮」です。
「インスタで稼げるようになったから、旦那を捨てて自立しました」というストーリーが、あたかも一つの「成功体験」や「正義」であるかのように語られることがあるのです。
本当に、それが成し遂げたかった目標の終着点だったのでしょうか。
夫婦関係が良好だったにもかかわらず、インスタでの成功がきっかけで関係がこじれ、結果として離婚に至ったのだとしたら、それはあまりにも危うい。
さらに深刻なのは、そうした発信者が「インスタコンサルタント」となり、同じように悩むママたちを集め、そのコミュニティの中で「離婚すること」が推奨されるような空気感が生まれることです。
「あなたも自立して、嫌な旦那さんとはお別れしましょう」と。
それは、人生の選択肢を広げるアドバイスではなく、特定のゴールへと誘導する危険な流れではないでしょうか。
結婚生活というものは、双方の合意と契約のもとに成り立っています。
それを解消するという決断は、登山に例えるなら、最低限の装備で富士山に挑むような、非常に重い覚悟を伴うものです。
その重い決断の引き金を、インスタという「手段」が安易に引いてしまうような風潮には、強い警戒心を持たなければならないと痛感しています。
家族が応援してくれるインスタ運用こそが、本当の成功ではないか。
では、私たちはインスタ運用とどう向き合っていくべきなのでしょうか。
私は、何よりもまず「家族や周りの人たちが応援してくれる状況下を作ること」が、あらゆる成果に優先されるべきだと考えています。
犠牲の上に成り立つ成功は、非常に脆く、長続きしません。
「ママ（パパ）は、私たちのために頑張ってくれている。だから応援するよ」と、家族が心から思ってくれる関係性。
「インスタのせいで、私たちのことを構ってくれない」と不満を抱かせるのではなく、むしろその頑張りが家族の結束を強めるような状態。
これこそが、インスタ運用における、いや、人生における「本当の成功」の土台ではないでしょうか。
もちろん、そのためには、運用者が一方的に努力するだけでは不十分です。
家族ときちんと向き合い、なぜ今これを頑張っているのか、将来どうなりたいのかを真剣に話し合うプロセス（アサーション）が不可欠です。
家族という最も重要な基盤を疎かにしてまで得る「フォロワー数」や「収益」に、一体どれほどの価値があるというのでしょうか。
その基盤が崩壊してしまえば、手にしたはずの成果も砂上の楼閣のように崩れ去っていくでしょう。
「ママを救う」という言葉に隠された、巧妙なマーケティング。
この「家族関係」や「自立」というテーマは、インスタ界隈のマネタリズムと密接に結びついています。
特に「ママ向け」と銘打たれた講座やコンサルティングサービスには、注意深く目を向ける必要があります。
「ママを救う」「女性の自立を支援する」という言葉は、一見すると非常に崇高で、正義感に満ち溢れているように聞こえます。
しかし、その言葉の裏側には、巧妙に計算されたマーケティング戦略が隠されている場合が少なくありません。
それは、「ママは立場が弱い」「旦那に依存している」「経済的に自立できていない」という、ある種の差別的な前提を巧みに利用する手法です。
社会的な立場の弱さや、将来への漠然とした不安を煽り立て、「このままではいけない」「自分一人の力で生きていく力を身につけなければ」という危機感を植え付けます。
そして、その唯一の解決策が「インスタ運用だ」と提示されるのです。
これは、現代社会が「女性も平等であるべきだ」と声を上げている一方で、ビジネスの現場では真逆の「女性＝弱者」という前提を利用して収益を上げている、という深刻な矛盾をはらんでいます。
その結果、家族関係を改善するために始めたはずのインスタが、むしろ家族の分断を助長し、高額な講座費用だけが残る…という悲劇も起こり得ます。
もちろん、全てのサービスがそうだとは言いませんが、私たちはそうした構造が存在するという事実を知り、高いリテラシーを持って情報を見極める必要があります。
もう一度問う。インスタは「手段」の一つでしかない。
ここまで繰り返し述べてきた通り、インスタグラムは、あなたの人生を彩るための、そして理想の未来を実現するための「手段」の一つでしかありません。
それは、あくまでもツールであり、可能性の一つです。
フォロワー数を伸ばすことも、インプレッションを高めることも、全ては手段の過程に過ぎません。
アフィリエイトで収益を上げようが、PR案件を受けようが、自社商品を販売しようが、それらも全て「どの手段を選択するか」という話でしかないのです。
そして、そこでお金を稼ぐことが絶対的な「正義」かと言われれば、決してそうではないと断言します。
もし、その収益が、フォロワーの不安を過度に煽ったり、家族の犠牲の上に成り立っていたり、人間関係を崩壊させて得たものだったりするならば、それはもはや「成功」とは呼べません。
元も子もない、とはまさにこのことです。
あなたが本当にしたいことは何だったのか。
本当に成すべきことは何だったのか。
インスタの画面を見つめる時間を少しだけ止めて、その原点に立ち返ってみてください。
そこを見失ってまで得るフォロワー数や収益の先に、あなたが望んだ未来はありません。
よくわからない発信者同士のコミュニティの中で「それが正しい」と肯定し合い、現実から目をそむけた結果、気づいた時には本当に大切なものをすべて失っている。
そんな結末を迎えないためにも、「インスタは手段でしかない」という言葉を、どうか忘れないでください。
あなたの人生の主役は、インスタのアルゴリズムではなく、あなた自身と、あなたが愛する人々であるはずです。
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