前回の記事では卒論発表会とその後の打ち上げの写真を紹介しつつ、ゼミ最大のイベントがどんな雰囲気で開催されたのかを「速報」としてお伝えしました。今年度の3年生と4年生はとても仲がよく、3年生は、発表会の資料も「卒業アルバム」のような手の込んだ編集をしてくれたり、会の終了後のサプライズ花束贈呈、打ち上げの場でのビデオメッセージの上映など、4年生へのアツい思いが溢れる発表会&打ち上げとなりました。

 今回の記事では『発表資料』に掲載された4年生の「研究の動機と研究目的」を紹介し、岡本ゼミの卒論テーマの多様性、自由さについてお伝えできたらと思っております。

 

 

 

「個人書店の開業要因の分析」

~クラスター分析による検討~

W.K

 日本の書店数の減少は周知の事実である。「若者の活字離れ」、「オンライン書店の台頭」といった要因が挙けられ、避けがたいうねりとして受容する風潮が広がる一方で、ここ数年、書店を開業する個人に注目する記事が増えている。衰退市場において、経営資源が限られる個人が開業するという矛盾した現象がなぜ発生しているのかについて興味を持った。また、この現象を解き明かすことは、人口減少によって縮小する日本市場の将来に、一つの希望を与えうると考え本研究テーマを選択した。

 

 

「Aquors の街・沼津」は

どのように完成したのか

~聖地の波及に着目して~

S.Y

 アニメ聖地巡礼がコンテンツツーリズムの一貫として注目を集め始めた約20年の歴史の中で、沼津市と『ラブライブ! サンシャイン! ! 』の関係性は、沼津市内の広範囲にわたってアニメと地域が一体となり、アニメ放送から7年経っても絶えることのない盛り上かりを見せている珍しい事例である。昨今、観光形態の一つとしてコンテンツツーリズムが注目されている。長期的に、そして広範囲で作品と地域とが融合し、多くのファンに受け入れられている理由を調査することで、今後のコンテンツツーリズムにおける作品と地域との関わり方を検討する端緒を得たい。

 

 

日本における

ポジティブ思考の育成

~教育に着目して~

H.E

 我々の日常は、変化が多いVUCA時代と言われている。このような現代の中で「ポジティブ思考」という思考方法が注目されており、ポジティブ思考に関するテーマの本の出版数は年々増加している。そこで、ポジティブ思考の定義を改めて定め、海外に比べてポジティブ思考の傾向が弱い日本におけるポジティブ思考の育成のために教育的アプローチを提言するべく、仮説を設定し、研究と考察を行った。

 

 

なぜドラマ「silent 」は

ヒットし たのか

~「共感系ドラマ」と「20代女性」に

着目して~

U.N

 昨今のメディアのあり方としてドラマの評価軸を「視聴率の多寡」で見る傾向がある。見逃し配信サイトやサブスクリプションの普及が進み、テレビを取り巻く環境 が変化しているにも関わらず、なぜ「視聴率」という評価軸にいつまでも固執しているのだろうか。silent をはじめ、他のドラマにおいても 「視聴率」という評価軸から のみにおいて「ヒッ トしていない」と評価してしまうことは 、ドラマの可能性や今後の面白いドラマの誕生を狭めてしまうこと にも繋がると考える。silent について研究することで新しい「ヒット」の評価軸の可能性や現代において現代人が面白いと思うドラマが何なのかについて明らかにしていきたい。

 

 

競技かるたの団体戦の

声掛けの価値とは

—声掛けありの団体戦は

  声掛けな しの団体戦よりも

  個人のパフオーマンスを向上 させるのか—

Y.H

 2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大してから、競技かるたの団体戦の声掛けについての間が方が変化している。感染拡大のために試合中の声掛けを禁止して以来、声掛けをせずに個人が黙々と試合をすとが本来の競技かるたの姿であるという主張がなされることがある。一方で、声掛けにより個人のパフォーマンスが向上すると述べる指導者も存在する。そこで、声掛けは本当に個人のパフォーマンスに良い影響を与えているのか調査する。

 

 

理想的な高校野球の

あり方について

—メディアの物語生成に着目して—

H.M

 近年、高校野球はその体質を変化させ、「精神主義」の時代から、 「科学主義」の時代に移行 している。こうした 時代の変遷から、高校野球の物語性が、現代的な高校野球の実践や人々の価値観と相いれない部分あるのではないかという問題意識を抱いた。そのため、本論文では、若者が高校野球を魅力に感じるコンテンツとは如何なるものかを紐解いた 上で、現在のメディアが生成する高校野球の物語性について分析し、若者の高校野球に携わる意欲を醸成するための必要条件について考察を行う。

 

 

歴史的変遷から考察する

現代和太鼓の役割

〜震災と和太鼓の関係性を事例 として〜

S.S

 研究動機の原点は和太鼓における自身の経験にある。現代の エンターテインメントとして消費される和太鼓に触れれば触れるほと、その価値はここ数十年にみられるほんの一部分でしかないと実感した。ゆえに本論文では、日本の伝統楽器である和太鼓を研究対象として扱い、和太鼓の本来的な価値は何であるのか、そこから導き出される現代社会における和太鼓の役割は何であるのか、を考察していく。

 

 

広告の印象によって

ダイエットヘの態度は変わるのか

ー広告が再生産する体型ステレオタイプ ー

I.M

 自粛ムードでYoutub eの利用が増えた2020年4月、署名運動をきっかけに外見を蔑視する広告へ抗議の声が高まった。しかし、広告の過激化や接触の増加、社会的風潮の変化等が重なったタイミン グで表面化したに過ぎず、コンプレックス産業において 「広告が都合の良い価値観を呈示 →社会に浸透→人々がそれに基づいて行動する」という構造は当然のように利用され人々の不安を煽ってきたのではないかと問題意識を抱いた。なかでも社会的な関心が高いダイエットを取り上げ、関連する価値観である 「体型ステレオタイプ」に

着目して、動画広告がダイエットにどう影響を与えているのか明らかにすることを研究課題とした。

 

 

弓道におけるイップス

「早気」を改善するための一提言

F.R

 大学で弓道部に所属し毎日練習に励む中で、弓道の中で一番メジャーなイップスである早気(はやけ)に悩 まされてきた。結果が出せず 、非常に苦しんだ。そこで同じく早気に悩む、あるいはまだ早気になっていない後輩たちに有益なことを還元したいと考え、研究に至った。

*早気とは、会という状態が維持できず、自分の意思と関係なく矢を離してしまう症状をさす。

 

 

日本における

ライフスタイルスポーツとしてのパルクール

S.K

 パルクールは2000 年ごろに誕生した比較的新しい概念だが、SNS などの映像メディアの発達とともに近年その認知度は拡大している。しかし映像メディアの特性上か、世間一般ではパルクールを「むやみな危険行 為」とする誤った認識をされていることが多い。私自身パルクールを5年ほど実践しているが、他人にそれ紹介したときは怪我を連想されることが頻繁にあると感じる。ただし同じく誤った認識をされながらも 、日本と西洋では社会におけるパルクールの受け入れられ方に明確な差があるのではないか、という感覚がある。それが本当だとすればどのような要因で差が生まれているのか、そ してその上で日本におけるライフスタイルスポ ーツとしてのパルクールはどのように評価できるかを検討する。

 

 

部員一人一人のモチベーションを高める理想のアプローチ方法とは

一橋大学女子ラクロス部のプレイヤーを対象に

O.M

 本論文執筆のための研究を進めるにあたり、私は自身が大学生活で最も力を入れていた「部活動」に還元できる内容の研究を行いたいと考えた。そこで、部活動団体の多くが直面する課題の一つであり、私自身も団体の中心人物として活動をする中で実際に課題意識を持っていた「部員のモチベーション」に焦点を当 て、調査を進めることにした。また、研究の主目的は一橋大学女子ラクロス部への直接的な還元であるため、調査対象を当団体のみとし、手軽に実践できるようなアプローチを追及していった

 

 

ライフスタイル移住を促進する

要素とは

~渡嘉敷島での現地調査を例に~

I.H

 都市部に比べ地方では生産年齢人口の減少や少子高齢化などの課題がより深刻になっているため、移住者拡大による地域振興が注目されている。また 人々の移住への意識が変化しており、理想となるライフスタイルを実現するための移住なども拡大している。このような社会の潮流に関心があったため、自身が 2か月滞在した沖縄県島尻郡渡嘉敷村での事例をもとに、移住を促進するうえで鍵になる点について明らかにしようと考えた。

 

 

なぜ麻雀に賭けるのか

~違法賭け麻雀をなくすために~

S.K

 Mリーグの発足や麻雀アプリの台頭により、近年麻雀は娯楽としての地位を高めている。レジャー白書2023によると 、囲碁と将棋の参加人口が過去 1 0 年で減り続けている一方で、麻雀では2020年400万人、2021年450万人、2022年500万人と、直近 2 年の参加人口が増加している。しかしその一方で麻雀はギャンブルと根深い関係があり、未だに違法賭け麻雀が行われている現実がある。私自身も麻雀プ レーヤーの一人だ が、麻雀は金銭のやり取りが無くても十分に楽しいと考えているので、違法賭け麻雀の話を間くた びに、な ぜ麻雀に賭けるのか?と疑問に思っていた。こそで、「なぜ麻雀に賭けるのか」という問いを解明することで、違法賭け麻雀をなく していきたいと考え、本研究を行った。

 

 

国立地球屋は

なぜ人を虜にするのか

~ ライブハウスを自治する Prosumer~

N.H

 いまや、街中をいくほとんどの人がワイヤレスイヤホンを装着し、Spotify やらAmazon MusicやらApple Music やら何かしらのアプ リを開いてサブスクで音楽を聴いているような時代である。しかし、そんな時代に、私の大好きなロックバンドであるKing Gnuは「ライブ」に強い拘りを見せる。本研究では、誰でも簡にスマホ で音楽が聞ける現代に、なぜ人々がわざわざライブハウスに行くのか、ライブハウスの実態を解明 する。そして、どうすれば私た ちは豊かに生きていくことができるか、そのヒン トを一つでも見つけるというのが 、本研究の最大の目的である。

 

 

特殊な演奏会は

クラシック・ファン以外への

マーケティングに有効か

W.A

 オーケストラのコンサートはそのほとんどがクラシック音楽の公演であり、演奏とアナウンスのみで構成されている。このような形式の演奏会は既存のクラシック ・ファンを囲い込むことに優れているが、その一方であまりオーケストラに馴染みのない観客からは 、ハードルが高いという意見も多く寄せられている。このような現状から、オ ーケストラ団体はより積極的に幅広い観客層の開拓に取り組むべきではないかという問題意識を抱き、卒業論文のテーマに設定した。近年、既存の観客以外へのマーケティングとして話題になっているのが、クラシック以外の曲を演奏したり、曲の説明をするMC を取り入れたりする、新しい形式の演奏会である。本論文ではこれらの演奏会を、既存の形式の演奏会と対比 し「特殊な演奏会」と定義する。特殊な演奏会の開催状況と効果を明らかにした上で、今後のオーケストラ業界がクラシック ・ファン以外の観客へのマ ーケティングを行ってい く上での示唆を得ることが、本論文の目的である。