2023年度 第26回授業 議事録 12月21日 (岡本🐻加筆修正)

山口大学西尾ゼミとの合同ゼミ(ユニバーサルツーリズムについて)

 

15:15〜16:55 ユニバーサルツーリズムについての発表

ユニバーサルツーリズムの普及という議題で、山口大学経済学部西尾ゼミとの合同ゼミを行った。

三年生が中心となり、プレゼンテーションおよび質疑対応、フィードバックを行った。

🐻山口大学経済学部の西尾先生とゼミ担当者の岡本は「ユニバーサルなアウトドア・アクティビティ観光」をテーマとして共同研究(科研費プロジェクト)を行っています。今回はそれぞれのゼミの学生に「ユニバーサルツーリズムの普及・促進」に関する施策について考えてもらいました。

 

 

◇山口大学西尾ゼミの発表 テーマ:「格差なくアウトドア観光を楽しむには」

 

先行研究の調査について

国連の発表や厚生労働省の調査を参照した。

ユニバーサルツーリズムとはユニバーサルデザインを用いたツーリズムである。

派生的な概念として、バリアフリーツーリズムがある。

一歩進んで誰でも気軽に旅行をできるような取り組みの考案を目指した。

 

先行事例の研究について

・長野県 「信州型ユニバーサルツーリズム」

人材・機器・地域をキーワードとしている。

人材→セミナーや会議を通して人材育成を図る。

機器→サポート機器の導入

地域→自然を観光資源として活用する。学習旅行も促進。

 

・HIS 「ユニバーサルツーリズムデスク」

専門知識を持つスタッフが受付・サポートを行う。

オーダーメイドに旅行計画も行っている。

 

観光要素を細分化したうえでの問題提起

課題となるのは・・・公共施設において、突発的なイベントに対応できる体制を整えることではないか。

 

ユニバーサルツーリズムを実現するためのアイデア

外国人観光客への対応 ピクトグラム・留学生によるイベントの設営

障がい者の方への対応 介護タクシー・アクセスブックの普及

高齢者の方への対応  休憩所の設置等、体力的な問題への対応。

 

 

これらを総合的に取り込んだ、

「多様なバリアフリーのアイデアが複合したレジャー施設デザイン」の提案

→誰でも楽しめるアウトドア環境の実現

 

<質疑応答パート>

・現状として、何を旅行の阻害要因として考えているか?

→オーバーツーリズムではないかと考えている。

・対象者を絞ることなくできることを多角的に考えていてよいと感じた。

取り組みとしては、なぜレジャー施設を選んだのか理由を知りたい。

→ツアーで来るという仕組みにすることで、非日常の体験を提供できる。ワークショップをきっかけとして理解の促進も見込むことができる。

・運営する主体としてはどこを想定しているか。

「特に想定なし。地域の団体が運営することになるかもしれない。外国人相手には留学生が関わる。」

 

◇一橋大学1班の発表 テーマ:「ユニバーサルツーリズムの普及」

 

始めに

ユニバーサルツーリズムの定義そのものの認知度が低い。

現状としては

①            認知のずれ(健常者への意識が足らない)

②            土壌 観光地、旅行会社、観光客のそれぞれの意識が不足

 

そのような状況を改善するための解決策

「三世代旅行」の提案

魅力 親孝行になる。家族の交流を促進するイベントになる。

「三世代旅行」を提案する目的と効果

 利用者側に対して ユニバーサルツーリズムの現状と困難を伝える

 事業者側に対して  社会的なユニバーサルツーリズムの需要の伝達が見込める。

 

普及までの流れ

既に環境が整っている施設をめぐるパッケージを作る

社会におけるユニバーサルツーリズムに対する需要の理解を促進し、観光地における環境整備の第一歩とする。

 

 

<質疑応答パート>

・課題として資金不足があったが、それに対するアイデアは?

→ユニバーサルツーリズム関連の予算がない=重要視されていないというのが現状の課題であると考えている。まずは社会に需要を理解してもらう段階にあると思う。

・三世代旅行そのものへの需要と、具体的な観光地の策定は行ったか。

→現状の候補としてはその観光地としての特性から伊豆を考えている

・「ユニバーサルツーリズムという意識なく行っていることも多いため、面白いアイデアだと感じた。概念や考え方を広めずとも、パックを媒介として社会に浸透させることが出来るのではないか」

 

◇一橋大学2班 テーマ:「ユニバーサルツーリズム普及のための取り組み」

 

 

始めに

 ユニバーサルツーリズムが普及しないのには、「心のバリアフリー」が達成されていないためであると考える。

 

心のバリアフリーとは

様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと。

 

これを達成するために、日常生活からの意識づけが効果的であると考えた。

 

参考にした事例

STAR BUCKS nonowa国立店の取り組み

筆談等を利用し、障がい者と健常者がどちらも「普通に」コミュニケーションを行える環境を整備している。

 

 

 

このような事例のような店舗を積極的に設置することによって、

障がい者・健常者のコミュニケーション機会の増加

→障がい者・健常者が「普通」に一緒に生活する社会の実現

→ユニバーサルツーリズムへの意欲向上の好循環を生み出したい。

 

〈質疑応答パート〉

・ユニバーサルツーリズムの課題として情報発信が不足しているとあった。障がい者の  方々を対象としたときの取り組みとして考えたことはあるか。

→まとめられた情報を、掲示板のように公開することが有効なのではないかという話し合いがあった。

・「紹介した事例のようなスターバックスはどの程度あるのか」

→世界でも5か国程度、日本では国立店の一店舗にとどまる。これは聾学校が国立の近くにあることなどの、地域的な特性があると考えられる。

・「(山口大学の生徒さんに対して)山口県のスターバックスで働いていると聞いたが、 国立店のような取り組みはあるのか。」

→山口県のスターバックスの取り組みについて

病院が近くにあることもあり、簡単な手話での対応がマニュアル化されている。

 

「日常に着目した発想や戦略は興味深い。」

 

 

 

 

◇一橋大学3班 テーマ:「ユニバーサルツーリズム普及のための取り組み」

 

現状の整理

普及は不十分

先行事例としてはHISのユニバーサルツーリズムデスクによる商品展開がある。

制限された旅行を変化させ、全員が楽しめる旅行を作りたいと考えた。

 

普及しない原因の分析

1                準備されたパッケージは消費者のニーズに合っていない

  ←現状、ユニバーサルデザインを必要とする人々の7割は個人で手配を行っている。

2                観光事業者がユニバーサルツーリズムに消極的な状況にある。

→そのため、今ある健常者の旅行をユニバーサルにデザインしなおすことが必要だと考えられる。

 

現状の課題解決のための提案 「食×自動運転」

現状として、移動にハードルを感じる対象者が多い。しかし移動は旅行への関わりが深く、それが楽しみにもなる。

そこに誰でも楽しめるコンテンツである買い物や食事を掛け合わせる。

 

自動運転を利用した先行モデル

・「富士見高原天空カート」

だれでも負担なく移動を楽しめる。移動後の移動も楽になる(荷物の運搬が可能)

・「BOLDLY」 地域の人の足になる新たな移動方法。

 

 

 

これらのアイデアをもとにして、

→自動運転による広域での食べ歩きを実現するのがよいのではないか?

移動のハードルを解消しながら、旅行の魅力を高める

 

今後の展望

特定のモデル地域での開催し、その後は全国へ展開していく。

 

施策のメリット

・全国に展開可能と考えられるモデルである。

・ユニバーサルデザインへの意識の向上。

・健常者の現状の課題への意識が高まる契機となる。

・観光体験の価値の高まり

 

考えられる課題への対応

全国への展開は可能か?→潜在的な顧客層は多く、需要は大きいと考えている。

事業者の意識向上にはつながるのか?→施策と同時並行的にセミナーを開催する。

 

<質疑応答パート>

・自動運転と食の組み合わせは面白いと感じたものの、免許等の運転者の管理はどうなるのか、自動運転に対する技術的な課題への展望について教えてほしい。

→免許がない状態での自動運転の実現が求められる。中国のバス等の先行事例はあるため、不可能ではないと考えている。

・パッケージツアーとして、今回の施策を利用することは考えているか。

→主眼は健常者も巻き込んだ、公共交通機関的な立ち位置にすることが施策の主眼である。

そのため現状ではパッケージ化は想定していない。

・移動というハードルに対し”自動“がどのように作用するのか。

→自動運転が一種のレジャーになるのではないかと考えている。また各家庭・団体にあった容易な移動を実現することで、移動障壁を取り除けると考える。

・プランが実装できるタイミングは、自動運転が普通になっているのではないか。その中で特別感を演出することは本当にできるのか。

→そのような視点は確かに不足していた。しかしながら現代のレンタカー的な扱いとして、一種の楽しみにはつながるのではないか

                                                                                                          

「広義に捉えると、既にユニバーサルが実現されている分野もあるのかも知れない。ライドシェア等の拡充に伴って情報×移動が実現できる可能性がある。」

 

 

◇全体を通した合同ゼミの感想

「山口ではユニバーサルデザインに触れることが少ない。東京的な視点が面白い。次は山口で会いましょう」

「議論の前提の部分の分析が十分にされていると感じた。定義を考えることの重要性を考えさせられた。今後に活用したい。」

 

 

16:55〜17:05 休憩

 

17:05〜17:45 卒論検討(生徒A,B,C,D)

 

卒論検討

生徒A

大枠は固まってきた。各節を論理的に整合性がとれるように整理する。

 

生徒B

CQRQの整理を前回までは行っていたものの、結論ありきだった。

もう一年時間ができたので、今後は再構築していく。

2月3日の卒論発表では、とりあえず中間発表を行う

・今回の卒論検討で行ったこと

パルクールのナッジに関するアイデア出し

・アスレチックは大人でもするものの、一方で施設の利用にとどまる

拡大のために必要な視点を持つとよいものが作れる。

 

生徒C

これからインタビューを行うため、その内容づくりを話し合った。

・自分が売買するときより 消費者オア売り手の立場がはっきりしていないときのシチュエーション(金銭を伴わない関係)→先行研究調査

例えば・・・利用しているところと同じ質の新しい店が出来たら、コスパがよかったら乗り換えるか? 具体的には日用品では?美容院では?

 

卒論の内容 「半市場経済を探す」→ライブハウスに落とし込んで調査を進めていく

相手がだれであっても成り立つ市場経済と対照的 贈与交換に近い関係性。

路上ライブが一例

反市場経済の例を挙げ、精査していく。

 

「市場経済や贈与には経済学・社会学・人類学による定義がされている。参照し規定し明確化すること」

 

生徒D

独立系の書店の創業について

2000年から活発化。(盛り上がっている)

開業動機と完成した店舗の関係性について調査した。

サンプルを増やしたかったため、ネット検索できる共通点を見つけ出した。

CQ→「なぜ」ではなく、仮説の肯定・否定を盛り込む形に変更する。

広く浅く150程度を分析

 

「できれば分析をしてカテゴライズ・タイプ化すると、各タイプへのインタビューが可能になり、議論が立体的になる」

 

客側の分析は行わない

「店主と顧客間の分析をするのがよいかもしれない」

 

最後に

伝達事項

 四年生から一言→追い出しコンパ時に行う

追い出しコンパは卒論発表会の後。

四年生は一言を考えておいてください。

 

今年度の通常授業は本日で終了です。