こんにちは。

アレテーを求めて~

今日もトコトコ( ・ω・)

弁護士の岡本卓大です。

 

絶賛連載中の

神武征討記

今回は、外伝です( ・ω・)

 

 

 

 

神武征討記外伝

海を越えた愛

~ショウリュウキの悲恋

 

 

ストーリーテラーのアメノウズメでございます。

「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。

今回の外伝の主人公は、ショウリュウキです。

ショウリュウキの本編での初登場は、第3話。

沖縄をルーツに持つ、神武十将軍の一人である女性武将です。

 

 

今回の物語の舞台は、本編関東争乱編から5年後、神武東征編の7年前。

神武様やショウリュウキが23歳のときのお話です。

この頃は、神武勢力と大和勢力は停戦期間中であり、大規模な戦闘は

起こっていませんでした。

神武様は、アイラとの間に長男タギシミミ(4歳)、次男キスミミ(2歳)をもうけ、

またアチタケルとサルメノウズメの娘ヒムカノナミ(5歳)、チチブカネビメと

サキタマハニマルの息子ウラワツキノミヤ(5歳)も、日中は、高千穂王宮の保育の間で、

過ごしていました。

 

 

ショウリュウキ「神武王太子。ショウリュウキ、まかり越しました。」

 

神武「ぎ~!」

 

 

子どもたちに髪の毛や耳を引っ張られている神武様。

まあまあ、保育の間は、大変な騒ぎね。

 

 

ショウリュウキ「ジ、神武・・・」

 

神武「こら。大事な話があるのじゃ。

離れんか。お~い。ハニマル、助けてくれ!」

 

サキタマハニマル「はにゃ~。みんな、ハニマルおじさんが遊んであげるから、

神武おじさんから離れて~」

 

子どもたち「は~い。きゃっきゃっ、きゃっきゃっ。」

 

神武「ふ~、やっと離れてくれたか。

子どもの扱いは、ハニマルにはかなわんな( ・ω・)」

 

ショウリュウキ「ふっ、子育ても大変そうだな。」

 

神武「まったく、家に怪獣がたくさんいるようだ。

どこの家庭も大変だろう。

育児、保育のためには手厚い予算をつけていく必要がありそうだな。」

 

ショウリュウキ「それで、今日はどうしたのだ?」

 

神武「うむ。実は、筑紫(福岡県)のダザイテンマンからの知らせでね。

中華の大陸からの船が筑紫に来ている。」

 

ショウリュウキ「中華の大陸からの船?皇帝の使者か?」

 

神武「いや、公式な中華の帝国からの使者ではなく、

どうも、私商人・・・いわゆる密貿易というやつのようだ。

まあ、中華の大陸の商人が筑紫に来ておるわけだ( ・ω・)」

 

ショウリュウキ「それで?」

 

神武「ダザイテンマンは、漢字は読めるが、中国語は話せん。

書簡だけでやりとりするのも大変だから、中国語が話せる者を

筑紫に送って欲しいとのことだ。

ショウリュウキは、中国語も話せたな?」

 

ショウリュウキ「ええ。沖縄にいた頃に、大陸の学者から教わったから。」

 

神武「すまんが、俺の名代として、その大陸の商人の相手をしてくれ。

俺も大陸の文物には興味があるが、子どもたちがこの有様だから、

しばらく高千穂を離れられそうにないのでな( ・ω・)」

 

ショウリュウキ「わかった。その任。謹んでお受けする。」

 

 

中華の大陸から来た密貿易の商人。

その対応をするために、ショウリュウキは、神武様の名代として、

筑紫(福岡県)に向かいます。

 

 

ダザイテンマン「おお。ショウリュウキ殿。

よく来て下さった。我らは、大陸の言葉がわからず、

難儀しておった。」

 

ショウリュウキ「ダザイテンマン殿。その商人というのは?」

 

ダザイテンマン「あの者です。」

 

 

ダザイテンマンに案内され、大陸の商人という男と会うショウリュウキ。

その男は、眉目秀麗な美しい若者でした。

その若者に中国語で声をかけるショウリュウキ。

 

 

ショウリュウキ「ニーハオ!」

 

陸瑜「ニーハオ。あなたは、中国語がわかるのですか?」

 

ショウリュウキ「ええ。昔、私の故郷・沖縄に流れてきた

大陸の学者から教わりました。」

 

陸瑜「なるほど。私は、姓は陸、名は瑜。字を伯謹と申します。」

 

ショウリュウキ「天孫一族神武王太子が臣。ショウリュウキと申します。」

 

 

中国語で、商品についてのやりとりを行うショウリュウキと陸瑜。

しかし、お互いになにか意識し合っているようです・・・

 

 

陸瑜「(ショウリュウキ・・・東夷の島国で、我らの言葉を話せるだけでなく、

なんと美しい女性・・・)」

 

ショウリュウキ「(陸瑜伯謹・・・こんな美しい男性がいるなんて・・・

これが大陸の男・・・)」

 

 

取引は無事に終了し、陸瑜が大陸から持ってきた商品は、全て完売しました。

 

 

陸瑜「ショウリュウキ殿。おかげで良い商売をさせていただきました。」

 

ショウリュウキ「陸瑜殿。こちらこそ。この絹などは、

神武王太子も、アイラツヒメ王太子妃もお喜びになりましょう。」

 

陸瑜「せっかくこの倭国(日本のこと)に来たので、倭国の品を仕入れて

帰りたいと思います。すみませんが、ショウリュウキ殿、通訳として

お手伝いしていただけませんか?」

 

ショウリュウキ「良いでしょう。せっかくです。我らの主・神武王太子の

いる高千穂までご案内いたしましょう。

途中の豊後(大分県)に、とても良い温泉があります。

そちらも、ご案内いたしますわ。」

 

陸瑜「ほう。オンセンですか?大地から湯が沸いているのですか?

それは楽しみだ。」

 

 

ショウリュウキと陸瑜は、豊後を経由して高千穂に向かいます。

行く先々で日本のことを案内するショウリュウキ。そして、陸瑜からは

大陸の中華の帝国のことや、陸瑜の先祖のことなどを聞きます。

 

 

ショウリュウキ「ほう。陸瑜殿の先祖は、中華が三国に分かれていた時代の呉という国の

大都督だったのか。」

 

陸瑜「先祖は、呉の孫家という王家に仕えておりました。

陸遜、陸抗の二代は、呉の大都督として、一番の名将と言われておりました。

ですが、陸抗の死後、呉は、魏の曹家から帝位を簒奪した司馬炎の起こした

晋により滅ぼされました。

もっとも、その司馬家の晋も、その後、分裂し、様々な異民族の侵攻を受け、

我が祖国は、戦乱のまっただ中ですよ。」

 

ショウリュウキ「なるほど。世が世なら、陸瑜殿は、中華の帝国の一角をなす

大国の大将軍だったわけか。」

 

陸瑜「ははっ。私は、軍事・・・戦争なんて嫌いです。

それよりも、商売が性に合う。

戦争は、人を殺す。

商売は、人を豊かにする。

私は、大将軍になどなるよりも、今のように在野の商人の身でいることが

気に入っています。」

 

ショウリュウキ「なるほど。」

 

陸瑜「それよりも、ショウリュウキ殿。通訳をしていただいたお礼がしたい。

何か欲しいものはありませんか?」

 

ショウリュウキ「書物が欲しいな。」

 

陸瑜「書物ですか・・・書物は貴重なものです。

書物を印刷する技術があればよいのですが、

書物は、みな手書きで一文字一文字書き写さねばならず、

大変な作業です。

大陸の学者たちは、一生をかけて、書物を書き写すのが

仕事のようなものです。」

 

ショウリュウキ「なるほど。やはり書物は高価なものなのだな。」

 

陸瑜「書物ほどではありませんが、それなりに貴重なものを。

この珊瑚の髪飾りを差し上げましょう。

きっとお似合いですよ。」

 

ショウリュウキ「ほう。これは綺麗な・・・

お代はいくらですか?」

 

陸瑜「お礼と申し上げたはずです。お代は、けっこうです。

強いて言えば・・・」

 

ショウリュウキ「強いて言えば・・・?」

 

陸瑜「あなたがこの髪飾りをつけた美しい笑顔を見せてくれると

なによりのお代ですね。」

 

ショウリュウキ「まあ・・・」

 

あらあら?

この二人、なんか良い感じになっちゃんてるんじゃな~い?

そして、豊後(大分県)で二人は宿を取ります。

温泉に入る陸瑜。

 

 

陸瑜「うーん。倭国のオンセン。すばらしい。」

 

ショウリュウキ「陸瑜殿。お背中を流しましょう。」

 

陸瑜「ショ、ショウリュウキ殿!?男女が裸で同じ湯に

入るなど!」

 

ショウリュウキ「あら、ここは混浴よ。

男も女も同じ湯に入る。そういう場所なの。」

 

陸瑜「ふ~。倭国の女性のなんと大胆な。」

 

ショウリュウキ「陸瑜殿は、呉の名将の子孫として、

国のことは気にならないの?」

 

陸瑜「気になりますよ。私の生まれた国ですもの。

中華の帝国も、戦ばかりせずに、平和で安定した国になってほしい。

もともと、すばらしい文化、文明を持った国なのですから。」

 

ショウリュウキ「あなた自身で、国を作るとしたら、

どんな国を作りたい?」

 

陸瑜「そうですね・・・戦をする武の国ではなく。

文化や貿易などの経済でみなを栄えさせ幸せにできる国にしたいですね。」

 

ショウリュウキ「文化や経済でみなを栄えさせる国か・・・」

 

陸瑜「いつか、いつの日か、そんな国を作りたい。

私にはムリでも、私の子孫によって・・・」

 

ショウリュウキ「私達の子孫がそんな国を作ってくれるといいわね・・・」

 

陸瑜「ショウリュウキ・・・」

 

ショウリュウキ「陸瑜・・・」

 

陸瑜「ウォー アイ ニー(あなたを愛している)」

 

ショウリュウキ「ウォー アイ ニー・・・」

 

 

この夜、二人は結ばれました・・・

 

 

さて、数日後、日向(宮崎県)の高千穂王宮。

 

 

神武「中華の商人、陸瑜殿。たいそうな品々。

良い買い物をさせていただいた( ・ω・)」

 

アイラツヒメ「この壺も・・・この絹織物もすばらしいわね!」

 

神武「こういう品々を作れる中華の帝国・・・

我が国でも、こういう物を作れるようになりたいものだな( ・ω・)」

 

ショウリュウキ「神武様。陸瑜は、感謝に堪えませんと申しております。」

 

神武「海の旅は危険だ。帰路も気をつけてな。」

 

 

神武様との謁見と倭国の品々の仕入れを終えて、陸瑜が帰国する日が来ました。

筑紫の港にて・・・

 

 

ショウリュウキ「陸瑜。気をつけてね。」

 

陸瑜「また来るよ。今度は、ショウリュウキの欲しがっている

書物を手に入れてくるよ。」

 

ショウリュウキ「楽しみにしてるわ。」

 

陸瑜「ショウリュウキ。ウォー アイ ニー。」

 

ショウリュウキ「ウォー アイ ニー。」

 

 

中華の大陸に向けて船を出す陸瑜。

しかし、折り悪く、出港後に、台風が九州西部から朝鮮半島方面を襲います。

そして、台風が去った後、対馬にて、陸瑜の船の残骸が打ち上げられます。

高千穂王宮にて・・・

 

 

ショウリュウキ「神武!その知らせは、まことなのか!?」

 

神武「ショウリュウキ。対馬からの報告だ。

陸瑜殿の船に間違いないらしい。

残念ながら、生存者はいない・・・

陸瑜殿も・・・」

 

ショウリュウキ「おおぅ~~~!ああああ~~~~!!!」

 

 

泣き叫びながら駆け出すショウリュウキ・・・

 

 

神武「ショウリュウキ!?」

 

アイラツヒメ「あなた。ここは、私が。」

 

 

海辺で一人泣き続けるショウリュウキ・・・

そこにアイラが声をかけます。

 

 

アイラツヒメ「ショウリュウキ・・・あなた、

もしかして、陸瑜殿と・・・?」

 

ショウリュウキ「愛し合っていた・・・

また会うと約束した・・・

書物を持ってくると・・・

書物など・・・どうでもよい・・・

陸瑜・・・陸瑜・・・もう一度、会いたい・・・

戻ってきて・・・」

 

アイラツヒメ「やはりそうなのね・・・

私達にとっては、面識を得た良き他国の友・・・

でも、あなたにとっては、愛する人の死だったのね・・・」

 

ショウリュウキ「初めて・・・人を、男を愛した・・・

その男が・・・死んでしまうなんて・・・

約束したのに・・・

戦をする武の国ではなく!

文化や貿易などの経済でみなを栄えさせ幸せにできる国

を私達の子孫が作ると約束したのに~~~~!!!」

 

アイラツヒメ「ショウリュウキ・・・」

 

ショウリュウキ「うっ・・・!?」

 

 

突然、嘔吐するショウリュウキ・・・

 

 

アイラツヒメ「ショウリュウキ!

あなた、もしかして、子を宿してる!?」

 

ショウリュウキ「えっ!?子・・・

私と・・・陸瑜の・・・子が!?」

 

アイラツヒメ「すぐに医師に診てもらいましょう!」

 

 

ショウリュウキは、妊娠していました。

その後、ショウリュウキは、一人の男子を出産します。

そう、陸瑜との間の子です。

その子は、ショウリュウケンと名付けられました。

 

 

ショウリュウキ「陸瑜・・・あなたは死んでしまったけど。

私は、あなたの子を産んだ・・・

あなたの血をこの世に残したわよ・・・

きっと、この子を守り育ててみせる。

あなたとの約束を守るために・・・」

 

 

陸瑜とショウリュウキの息子ショウリュウケン・・・

武ではなく、文化や経済でみなを栄えさせる国を作るという

陸瑜とショウリュウキの夢と血は、ショウリュウケンを通じて、

後の世に引き継がれることとなる。

そして、その血と志は、千年近い年月を経て、1372年に

誕生する初代琉球国王・尚巴志へと受け継がれていくことになる・・・