こんにちは。
アレテーを求めて~
今日もトコトコ( ・ω・)
弁護士の岡本卓大です。
知っておきたい暮らしに役立つ民法( ・ω・)
のお時間です。
今日は、ある設例を立てて、100万円を返せといえるかどうか、
金銭消費貸借と贈与の話をしてみましょう( ・ω・)
【設例】
登場人物 Aさん(35歳の男性)、Bさん(27歳の女性)
AさんとBさんは、Bさんが働くキャバクラで知り合います。
Aさんは、Bさんのことが気に入り、頻繁に店に通い、Bさんも
お店では、Aさんを接待します。
Bさんは、ある日、ある事情があり100万円が必要になって
困っていることをAさんに話します。
Bさんの気を引きたいAさんは、Bさんに100万円を渡すことにします。
後日、AさんがBさんに肉体関係を迫ったところ、Bさんはこれを拒否します。
Aさんは、Bさんに100万円を返せと言い出しました。
Bさんは、100万円を返す義務があるでしょうか?
はい。この設例を元に、いくつかのパターンを考えてみましょう( ・ω・)
①金銭消費貸借契約が成立している場合
民法587条(消費貸借)
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを
約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
民法591条(返還の時期)
1 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて
返還の催告をすることができる。
2 借主は、いつでも返還をすることができる。
はい。まずは、消費貸借契約が成立している場合です。
消費貸借契約は、実際の社会では、ほぼ金銭消費貸借契約で、
借りたお金の同額(利息の約定があれば利息を付けて)を
返還(返済)時期に返すという契約です。
金銭消費貸借が成立していると言えるためには、
①金銭の交付(お金を渡す)
②返還の合意(返すという約束)
が必要です。
必ずしも、借用書などの書面を作る必要はありません。
(ただし、借用書などの書面は、直接的な証拠になります。)
なので、BさんがAさんに「返すという約束」を100万円受け取るときに
していたのであれば、当然に、Bさんは、100万円を返す義務があります。
②贈与の場合
民法549条(贈与)
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、
相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
民法550条(書面によらない贈与)
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
贈与は、自分の物やお金を無償(タダで)相手にあげる契約です。
贈与であれば、もらった100万円は当然返す義務がありません。
なので、Bさんと肉体関係を持ちたいというAさんの動機が実現しようが、しまいが、
Bさんは、受け取った100万円を返す義務はありません。
こういう、しょうもないトラブル、多いよね( ・ω・)
③詐欺の場合
では、次の場合は、どうでしょうか?
Bさんは、Aさんに独身であると話していました。Aさんと結婚を前提に
真剣に交際したいと話しています。家族のことで困ったことがあり、
どうしても100万円が必要なので、助けてほしいとAさんに頼みます。
それを聞いたAさんは、Bさんが将来結婚してくれると信じて、
返さなくてよいからと100万円をBさんに渡します。
ところが、Bさんは、なんと既婚者でした。お金の使い道も、家族が
困っているのではなく、夫に内緒で贅沢して作った借金の返済のためでした。
・・・
これ、詐欺よね( ・ω・)
詐欺は、刑法上も、詐欺罪(刑法246条1項)として犯罪ですが、
民事上も、不法行為(民法709条)として損害賠償責任が生じます。
ここまで、完全な詐欺事案なら、100万円を損害として、Bさんは
賠償しなければならないでしょうね。
回収できるかどうかは知らんけど( ・ω・)
④金銭交付が肉体関係を持つことの対価だった場合
さて、もう一つ問題です。
Aさんは、Bさんに、自分と継続的な肉体関係を持つことを条件に、
金銭に窮したBさんに100万円を渡します。
しかし、Bさんは、Aさんと肉体関係を持つことがどうしてもイヤで、
Aさんとの肉体関係を拒否します。
怒ったAさんは、だったら100万円をすぐ返せとBさんに迫ります。
この場合に、Bさんに100万円を返すか、
それができないならば、Aさんと肉体関係を持たなければならないのでしょうか?
継続的な肉体関係の対価として100万円を支払う。
このような契約は、公序良俗違反で、民法上、無効です。
民法90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、
無効とする。
民法708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を
請求することができない。ただし、不法な原因が受益者のみに
ついてのみ存したときは、この限りでない。
不法な原因のために給付された100万円は返せということができません。
公序良俗規定や不法原因給付の規定は、「法は不法に助力しない」という
クリーンハンズの原則の表れです。
正義を実現すべきために法はありますからね( ・ω・)
まあ、お金のやりとりは、トラブルの元なので、
特に大金を動かすときは、きちんと契約内容を書面で
残しておくべきでしょうね。
読んでくださり、ありがとうございました。