こんにちは。
アレテーを求めて~
今日もトコトコ( ・ω・)
弁護士の岡本卓大です。
政治的にニュートラルな弁護士 岡本卓大としては、
せっかくの憲法記念日なので、
自由民主党の発表している
『日本国憲法改正実現に向けて』
https://storage.jimin.jp/pdf/constitution/document/kenpou_manual20220513.pdf
なる資料を読んでみました。
率直な感想・・・
自民党の国会議員のみなさん、
憲法を勉強したことありますか?
茨城でやっている水島朝穂教授の講演でも、
今の日本の国会議員の憲法知識があまりにも
ひどいことが実例を挙げて紹介されていましたが、
立場のちがい、うんぬんの前に、
あまりにも無知な人たちが憲法改正を議論しているのだと
いうことに愕然とします。
これは、サルとも言われちゃうな( ・ω・)
まず、スタートから間違ってます。
自民党の資料では、
憲法を、
「憲法」=「権力の付与」+「権力の制限」+「国のかたちの提示」
としています。
しかし、ここには立憲主義の根本である個人の尊厳・人権保障は掲げられていません。
私の『宇宙一わかりやすい僕らの憲法のお話( ・ω・)』の第一話を紹介します。
憲法とは以下のようなものです。
①権力者は、憲法の決めたルールに従わなければならない。
②権力者は、憲法の与えていない権限を行使してはならない。
③権力者は、憲法の保障する人権を侵害するような政治をしてはならない。
まず、スタートがちがうのであれば、議論がかみ合うはずがありませんね。
主役を「国家」と見ているか主役を「(一人一人の)国民」と見ているかの根底がちがいます。
次に、自民党の資料では、
【時代・社会に応じたアップデート】
を掲げ、他の国では、
アメリカ6回、フランス27回、ドイツ65回、イタリア17回、カナダ19回
の憲法改正が行われていることが挙げられています。
しかし、日本国憲法は、もともと根本的な基本理念だけを憲法に規定し、
細部の多くを法律に委任する規定の仕方をしています。
他の国々での憲法改正というのは、日本であれば国会法や国家公務員法等に
あたるような法律で規定している事項の改正です。
日本国憲法で規定されているような根本的な規範の改正はまったくされていません。
そのため、他の国では、憲法改正が多数回行われているということを
憲法改正が必要な理由に掲げることは、「憲法に対する無知の告白」です。
その他の内容については、個々、コメントする必要も無さそうです。
私のブログと自民党の資料を読み比べてください( ・ω・)
せっかくなので、自由民主党憲法改正草案のうち、
現在の日本国憲法9条を変える部分について紹介しましょう。
国防軍。それが自民党が本当にやりたい憲法改正です。
自由民主党憲法改正草案第9条(平和主義)
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
自由民主党憲法改正草案第9条の2(国防軍)
我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、
内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、
法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第1項に規定する任務を遂行するための活動のほか、
法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために
国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は
国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前2条に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持
に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪
又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、
法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合に
おいては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければ
ならない。
自由民主党憲法改正草案第9条の3(領土等の保全等)
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び
領空を保全し、その資源を確保しなければならない。
自由民主党の憲法改正草案については全文が公開されているので、
誰でも見ることができます。
自民党が本音で作りたい憲法、日本という国の姿が見えてきます。
国防関係について、簡単にコメントすると、
自衛のためなら、平和主義の制限は無い=自衛のため戦争できる。
はい、ちなみに、太平洋戦争を侵略戦争ではなく、
日本の自衛のための戦争、大東亜戦争と呼ぶ人たちは、
第二次世界大戦で日本がアジア・太平洋諸国に行ったような戦争も、
自衛戦争として行えると解釈しそうですね。
自衛軍の最高指揮官は、内閣総理大臣。
つまり戦前の統帥権は、内閣総理大臣にあるということですね。
国会の承認は、法律で別の統制を決めておけば必要なさそうです。
気になる部分としては自衛軍は、
「国際的に協調して行われる活動」にも軍として参加できるようです。
同盟国アメリカに協力して戦争しろと求められたら、きっと日本政府は
断れずに、一緒に戦争することになることは間違いないですね。
自衛軍は、「公の秩序を維持」するための出動もできるようです。
いわゆる治安出動。そこで自衛軍に撃たれるのは、日本国民ですね。
軍人の職務犯罪だけでなく、軍の機密に関する犯罪も、
軍法会議で裁かれるということですね。
特定秘密保護法を改正して軍法会議の管轄にすれば、
国民の知る権利のために国の持っている情報にアクセスしようとする
ジャーナリストも軍法会議で裁かれることになりそうですね。
ちなみに、現在の我が国の自衛隊の幕僚総長は、
この自民党憲法改正草案の起草に関わった人物のようです。
「水島朝穂」で検索してみてください。
水島先生のツイッターが出てきます。
なお、9条の3からすると、
国防のための協力は、国民にも当然に求められそうです。
増税や労働力としてだけでなく、
私有財産の収用や兵役も、そのうち、国益のために課されるかも知れませんね。
戦前みたいに。
古今東西、国民を守った軍隊はありません。
軍隊は、国民ではなく、国家=権力者を守ります。
ウクライナだって、ウクライナ国民を守るための戦争ではなく、
ウクライナの男性たちは、戦場に駆り出されています。
戦争が起こる状況を作り出した時点で、
政治は敗北なんですよ・・・
精一杯ニュートラルに書いてみたつもりではあるのですが・・・
ムリだな。
法と歴史を学んだ人間が、
この憲法改正草案を
肯定的に論じるのは(^^;)
読んでくださり、ありがとうございました。