こんにちは。

アレテーを求めて~

今日もトコトコ( ・ω・)

弁護士の岡本卓大です。

 

知っておきたい暮らしに役立つ民法( ・ω・)

のお時間です。

 

 

法律相談を受けていて、一番多い相談というと・・・

 

慰謝料取れますか?!

慰謝料いくら取れますか?!

 

という慰謝料についての相談が圧倒的に多いように感じてます。

ただ、慰謝料って、一体なんでしょうか?

今日は、この慰謝料について、考えてみたいと思います( ・ω・)

 

法律家は、まずは条文から考えます。

慰謝料の根拠になる民法の条文を見てみましょう。

 

 

民法709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって

他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、

これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

民法710条(財産以外の損害の賠償)

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合

のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、

財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

民法711条(近親者に対する損害の賠償)

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

 

不法行為についての民法の条文です。

民法710条と711条は、精神的損害に対する賠償を定めた規定です。

この精神的損害に対する賠償が、「慰謝料」です。

 

加害者の損害賠償義務の内容は、その被害者が受けた損害を

金額に算定して、金銭により支払うこととされています。

この考え方を金銭賠償の原則といいます。

 

人身損害、つまり、生命、身体、自由、名誉、貞操の侵害などについては、

被害者はそれにより精神的な苦痛を受けるものです。

その精神的な苦痛の元になったものを、不法行為があった以前の状態に

戻すことはできません。

そのため、その精神的な損害を、金銭による金額に算定して、加害者への

損害賠償請求を認めたものが、この「慰謝料」と呼ばれる損害賠償という

ことになります。

 

この慰謝料の金額については、もともとが「金銭に換算できない」精神的苦痛という損害に

対する賠償です。

そのため、精神的苦痛を慰謝料という金額による損害賠償によって補填するという考え方は、

ある種のフィクションと言えるでしょう。

 

本来的な、慰謝料金額の算定は、とても難しいものです。

「精神的苦痛」は、形があるものではなく、もともと数値化すること自体がフィクションだからです。

 

大審院(戦前の最高裁にあたる裁判所)の判例の積み重ねからは、

被害者および加害者の社会的地位・職業・資産・加害者の故意もしくは過失の大小、

加害行為に対する倫理的非難の程度など、諸般の事情を考量し、公平の観念に訴えて、

これを判断するほかないとされています。

(大判明治43年4月5日民録16輯273頁、大刑判大正3年6月10日刑録20輯1157頁、

大刑判大正5年5月11日刑録22輯728頁、大判大正9年5月20日民録26輯710頁等)

 

また、慰謝料も、その賠償の範囲は、いわゆる相当因果関係の範囲にとどまるべきものなので、

被害者がとくに精神的苦痛に敏感な者であったという場合であっても、そのことは、特別の

事情として考慮される以外には、賠償の対象には含まれず、結局、社会の合理的な一般人

こうむるべき精神的苦痛を賠償させるということになります。

 

慰謝料の額については、判例の積み重ねのなかから、おのずから一定の標準が看取されるということは

あるが、裁判所の自由裁量に委ねられているというのが判例の立場です(最判昭和52年3月15日

民集31巻289頁、最判昭和56年10月8日判時1023号47頁)。

もっとも、裁判所の自由裁量としながらも、

認定額が低すぎると原判決を破棄差し戻しした最高裁判決

あります(最判平成6年2月22日判時1499号32頁【長崎じん肺訴訟上告審判決】)。

 

実際のところ、慰謝料は、全損害額が多すぎたり、少なすぎたりしないように、

慰謝料の金額によって全体の賠償額を調整するという機能

も果たしていると言われています。

 

まあ、こういう慰謝料算定の作業は、過去の事例からの幅は出せても、

AIには、できない作業でしょうね( ・ω・)

 

読んでくださり、ありがとうございました。