芸術家に宿る狂気
昨日書いた17歳のピアニストの話の続きです🎹最近のコンクールのファイナルの演奏に続いて、予選の動画もアップされていたので聴いてみた。曲目J.S. Bach WTC Volume I: Prelude and Fugue B-flat minor, BWV 867F. Chopin Piano Sonata №3 in B-flat minor, op.58, I mov.I.F. Stravinsky «Trois mouvements de Petrouchka»:1. Danse russe (Russian Dance)2. Chez Pétrouchka (Petrushka’s Room)3. La semaine grasse (The Shrovetide Fair)バッハのプレリュードとフーガ。自己を内省するような、暗く悲しい音楽。作曲家と演奏者の孤独な心象風景が目の前に広がるようだ。ショパンのソナタ第3番第1楽章。10月のコンクールでは抑制ぎみに感じられた表現が、この日はまるでその時の鬱憤を晴らしているかのよう。彼のピアノには、例えば明るいワルツを弾いても、おそらく本人も意図しない哀愁が漂う。彼の持つ資質がそう感じさせるのだろうか。そして、彼の本質が最もよく表れていると思ったのが、ペトルーシュカからの3楽章。もともと狂ったような曲だが、彼の演奏は冒頭から最後まで、まったく狂気じみていた。超絶技巧として知られる曲だが、コンクールにもかかわらず上手く弾こうなどとはこれっぽっちも思っていないのが分かる。「自分の信じた道を行くだけ」という彼の心の声が聞こえてくるような演奏だった。彼を指導したという世界的ピアニストが「彼はショパンコンクールには合わなかったのかもしれない」と言っているのをどこかで読んだ。その言葉を知った時「私は彼が弾くショパンがいちばん好きなのに」と疑問に思った。でも今回、自由奔放にストラヴィンスキーを弾く彼の姿をみて、世界的ピアニストが何を言おうとしているのか分かるような気がした。この17歳の少年には、芸術家に必要な狂気がたしかに宿っている。あぁ、いつか日本に来てリサイタルしてくれないかなぁ…