「THE WORD」 著者:オカレノン/okalennon
第6章 Drive my car その1
休日の日曜日、結城和哉はいつもと同じように早朝からドライブへと出かけた。
和哉の趣味は愛車の白いスポーツカーで早朝の空いている時間帯でドライブをすることだった。
都心の環状高速を気ままに走り抜けて戻ってくると家の近所にある行きつけのファミリーレストランへ立ち寄った。
和哉はそこでモーニングセットを食べながら窓から見える愛車を眺めるのが好きだった。
和哉は朝食を終えて駐車場に戻るとちょうど横に駐車してきた車を見た。
どこかで見たことある車だと思ったら竜之介の青いスポーツカーだった。
「よう、カズ。今日もドライブ帰りかい?」
竜之介は窓を開けて言った。トレンドマークの黒いサングラスが少し光った。
「竜ちゃん、今日はどうしたの?」
和哉が言うと竜之介は助手席を指差しながら言った。
「見ての通りデート。飯食ったらちょっくら海まで行ってくるわ。」
「いいねえ。彼女がいて羨ましいわ。」
「カズも車ばっかじゃなくて早く女作んなよ。せっかくのイケメンが台無しよ。」
和哉は竜之介の言葉に笑って応えると愛車に乗り込んだ。
そして竜之介に手を振ると一気にエンジンを蒸して走って行った。
和哉は運転しながら竜之介の言葉を思い出していた。
彼女か・・・。
和哉は高校を卒業して近所の自動車修理屋で直ぐ働き始めた。
高校2年の時に1ヶ月だけ付き合った彼女がいたがそれからはずっといない。
かれこれ彼女いない歴8年目に突入した。
和哉は家に帰る前に近所のガソリンスタンドに寄った。
ガソリンを入れる以外にも目的はあった。
ここのお店のオーナーに会いに来たのだ。
いや正確に言うと、オーナーの娘、穂奈美に会いに来たのだ。
歳は和哉より2つ上でここで親父さんと一緒に働いている。
親父さん曰く、まだ独身で彼氏はいないそうだ。
和哉は穂奈美に片思いをしていたのだ。
「よう、カズちゃん。今日もご機嫌かい?」
店内に入るなりカウンターに座っていた親父さんが声をかけてきた。
「俺も車もご機嫌よ。」
和哉はそう言って店内を見渡した。穂奈美の姿が見えない。
「穂奈美さんいないの?」
和哉が聞くと親父さんは立ち上がって答えた。
「あいつも朝からひとっ走り行っちまったよ。もうすぐ戻ってくるんじゃないか?」
親父さんがそう言った時、赤いスポーツカーが店に入ってきた。
和哉の車の横に停車してドアが開くと中からすらっとした長身でつなぎを着た女性が出てきた。
このガソリンスタンドの一人娘の穂奈美だった。
和哉はその車から出てくる華麗な姿にただ見とれていた。
つづく