●隻眼の少女● | 君 次 第 ο

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斜め前向きに生きているο

最近、本の感想ばかりですいません。。

春休みで時間があるので週に3,4冊ペースで読んでます。





【隻眼の少女】
麻耶雄嵩


22時くらいから2時半までぶっ続けで読みました。。

これは、、何といえばよいのやら。。。

しかし書かずには眠れない類の本だったので、午前3時からカタカタ綴ります...!!



まず簡単なあらすじを。



第一部は1985年、静馬は自殺するため人里離れた村を訪れる。

しかしその村で殺人事件が起き、そこで出会った17歳で駆け出しの探偵・御陵みかげと共に

事件を解き明かしていく。


第一部と、それから18年後の2003年の物語である第二部からなる、

長編ミステリです。



こうやってあらすじを書くとよくありがちなミステリのようですが、

なんてったって作者はあの『麻耶雄嵩』さんです...!!



麻耶さんについて少し書きますね。


京大の工学部出身で、43歳です。

メルカトル鮎のシリーズが有名なようです。


かの汰はそのシリーズは読んだことがないです。

麻耶さんの本自体、【隻眼の少女】を除けば2冊しか読んだことがないです。



しかし、どちらも私の心にトラウマに近い衝撃を与えました...!!



最初に読んだのは中学2年か3年の時です。

当時のかの汰は森博嗣に心酔してまして、片っ端から読みふけってました。


図書館で、児童向けっぽいコーナーにあった森博嗣の【探偵伯爵とぼく】を借りて、

同じ棚に置かれてた麻耶さんの【神様ゲーム】が目に留まって借りてみました。


その時は題名が何となく気になって借りた程度だったのですが、

これが、、、驚きました。


なんで児童向けコーナーにあったのか理解できないくらい、えげつない。

いい意味で気持ち悪い。

「え??これで終わるの??真相は??」

って感じで、すごく後味が悪い。

中学生でまだそこまで冊数も読んでなかったかの汰には、すごく衝撃的なミステリでした。

こんなにすっきりしない読後感のミステリがあっていいのか、って思うくらい。



読んだ後に調べてみると、

麻耶さんは『アンチミステリ』と評されることが多い方のようです。

本人は特に意識していないようですが。


謎をすっきり解き明かす!!という王道展開ではなく、

ミスリードの多用や解決されない伏線、真実をはっきり明かさないことにより、

有耶無耶で様々な解釈を与えています。



森博嗣作品もそのような趣向があるときもあるのだけど、

それとは違う感じ。

森博嗣のは真相が明かされなくても話自体はすっきりしてるし、

森博嗣の中ではっきり「答え」がちゃんとあるような気がします。


私は頭がそこまで良くないのでその真意に気づけないのですが、

もっと頭の良い方たちのレビューを読んで納得します。


でも麻耶さんの作品は違う。

話自体が何となく、もやってゆーか、どろってゆーか、、気持ち悪い感じのまま終わります。

レビューとか読んでみても、みんなはっきり解決してないようです。


『いい意味で気持ち悪い読後感』

それが麻耶さんの作品の特徴の一つだと思います。

読んだ後はすごく怖くて、でも中毒的な興奮を感じました。



時は流れて、高校1、2年生の時。


再び図書館で何を借りようか物色していると、麻耶さんの本に目が留まりました。

【螢】という本で、題名と装飾、何より麻耶雄嵩の作品ということで借りました。


麻耶さんがアンチミステリ作家だということ、

何より中学の時の経験を踏まえた上で読んでみました。



結果。

衝撃的なラスト。

どろどろ心に滞留する読後感。。


これも夜に4,5時間ぶっ続けで読んだ記憶があります。

【神様ゲーム】が特別だったのかとも思っていたのですが、

この人は間違いなく本物だと思いました。


細かいトリックは覚えていないのですが、

ラストの衝撃だけは覚えています。

、、、マジか!!って思いました。



今まで麻耶さんの本はこの2冊しか読んでいませんでした。

にも関わらず、かの汰が好きな作家を10人選ぶとしたら麻耶さんが入ってきます。


何故か??

それは独特の読後感だけではありません。



麻耶さん、本格ミステリを書かれる方なんです。


現場の状況や人間関係について細かく描写し、

理論だてて推理を組み立てていく。

仮説に重なる仮説。

推理の果てにたどり着く真相。


推理に置いては非常に本格ミステリです。


証拠や仮説から読者も真相を推理していけるという、

最近のミステリにはなかなか無い、古典的でまさにミステリだと思います。


そこがミステリ好きの私には嬉しいところです。

そこに刺激的な結末要素が加わり、衝撃を与えます。



普段私が読むのは、わりとさらっと読める有川浩さんや伊坂さん、森見さんなど、

面白いけどどちらかといえば平凡な本が多いです。


しかし物足りなくなって、刺激が欲しい時に、

森博嗣や麻耶さんに手を伸ばします。


この類の本を読む時には結構な決心が必要で、

ある程度まで読むと途中で中断できなくなるし、

読後には心にそれなりの衝撃がくるので、

心と時間に余裕がある時にしか読めないです。


麻耶さんはそういった、いわば『最終兵器』みたいな作家さんです。


結構、刺激があって好みがはっきり分かれる方なので、

あまり積極的に人に薦めにくいのですが、

麻耶さんの作品を読まれた方と一度語りあって見たいです。




長々と書いてしまいましたが、【隻眼の少女】に戻りますね。

ここからネタバレに入るので注意してください。


読み始めた時は、最近のミステリに多いキャラものかと思ってました。

なんてったって探偵であるみかげの風貌が、


・平安時代っぽい装束

・黒髪

・片目は碧色の義眼


って何て厨2チック!!

舞台は人里離れた、特有の信仰を持つ村ってあたりも王道ですね。


そんな村で起こる連続殺人!!(これも王道!!)


しかしだな、殺され方がだな、、、。

麻耶さんらしくぶっ飛んでる←



だって作品中で5人が首を切り落とされて死ぬんだぜ??

サイコかっていう。。。


首切断っていうとどうしても森博嗣の【すべてがFになる】を連想しました。

理系出身ということで森博嗣を意識しているかとインタビューで聞れたようですが、

「特に意識はしてない」そうです。



しかし推理が始まってみれば至って本格。

証拠、仮説、証拠、また仮説、、、。

古いといわれようがこの構造が好きですね。

推理の部分は純粋に楽しみました。



この作品の見どころは、

真相、を逆手に取った真相、をさらに逆手に取る

って感じですかね。


いかにもアンチミステリらしい感じです。

「名探偵の推理は何で正しいといえるのか」

「それ自体が犯人の偽トリックなんじゃないのか」

というミステリの禁忌に踏み入った作品かと。



私のレビューは主観的で不十分な点も多々あるので、

この本を読んだら是非他の方のレビューを読んでほしいです。

以上。






ここから私の心の叫びを少々、、、。

※さらにネタバレ注意!!







・腹話術って無理あるだろ

・オコジョって無理あるだろ

・お父さんの異常さには気づいてた。

・親子2代で隻眼ってのがおかしいのも思ってた。

・スガル様の信仰の衰退と対照的に、崇拝化されていく御陵みかげを皮肉るラストだと思ってた。

(結末が麻耶さんにしては良い感じだった)

・「静馬に夢中だった」とか言ったけど、そんなこともなかったんじゃない??

岩倉さんも予備みたいな感じにしてたって、たぶん。

・これだけ凄惨な事件を起こすにしては、動機が甘い。

・どうせなら花菜ちゃんも殺されて、完成すればよかったのでは。