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ご近所に、この春から空き家になっている
Mさん宅があります。
老夫婦で過ごされていましたが、
奥様が倒れられて入院。
ひとりになったご主人が、息子さんのお宅に引っ越されたのです。

奥様は気さくな方で、ゴミ集積所(井戸端)会議の主要メンバー。笑
年齢は離れていますが、親しくさせてもらっていました。

急なお引越し。
ご近所みんなショックでした。
年齢の近い、
お隣のおばあちゃんなどは、
秋がきても…
冬になっても…
まだ涙ぐんでおられます。


Mさんのお宅の前に、小さな公園があります。
まちこさんが仔犬の頃、よくその公園で遊ばせていました。
ご近所の同い年のラブラドール
「らぶちゃん」と、くんずほぐれつ犬相撲。
「らぶちゃんは相撲取り。
まちこさんはボクサー。」
「らぶパパ」の評です。笑

しかし、ある日
犬嫌いのMさんのご主人から、
「うるさい!」
「犬畜生が!」
と一喝されて。

話す言葉がすべて怒鳴り声になる方って、
時々いらっしゃいますよね。
それほど悪気はないのでしょうが、
怒鳴られた方はコタえます。
Mさんのご主人が、そういう方。
あまりにも怖かったので、公園の犬相撲は、
その日でおしまいになりました。

その後も、散歩中に会うと、
「犬は畜生やからなぁ!」
「飼う人の気がしれへんわ」
などと言われてしまうので、
Mさんの姿を見かけると、
遠回りするようになりました。

三十六計逃げるに如かず。
逃げるは恥だが役に立つ。笑


さて先日。大晦日の夕方のこと。
散歩の帰り道に、公園の前を通りかかると、
入り口の石段にMさんが腰掛けていました。

「お〜っと!油断してた!」
「逃げも隠れもできへん距離!」
一瞬そんなことを思いましたが。

…いやいや私は大人! 笑
奥様の具合を訊いて、みんなに伝えなくてはっ!

勇気を出して
「お加減はいかがですか?」
と話しかけてみました。
こわ〜!(><)

…驚きました!
和服に身を包んだMさん。
1年も経たないうちに、
別人のように穏やかになっておられて。
(まちこさんを連れているにもかかわらず)
石段からご自宅を眺めながら、
今の暮らし、奥さまの病状など、
静かにお話をされます。
今後も息子さんのお家で過ごされるとのこと。
年越しにあたり、こちらの家に
(お別れを言いに?)
いらしたようでした。
正装していらっしゃいます。

お別れするときは、若輩者の私に
なんと最敬礼!
私も最敬礼で
たぶんもう会うことのないMさんに
今までのお礼を言いました。

…人とのお別れは、
どんな関係であっても切ないものですね。

Mさんが、ほんの短い時間、
立ち寄られたお家。
Mさんと、お家との、(おそらくは)
お別れの場面に立ち会って、
お話ができた。

すごいことだったと思います。
寒い時期ゆえ、タイミングが5分ずれても、
かなわなかったこと。
神さまが(?)そこに配置した人間が
なぜ私だったのかな?
と思わずにいられません。

おかげさまで、Mさんのイメージを
「犬畜生!のおじいさん」から
「穏やかな紳士」に
上書き保存することができました。

終わり良ければすべて良し。
良かった  よかった!