緑のカーテンを兼ねて!などと欲張ったため、夜に庭まで出ないと香りを楽しめない。
夜は雨戸を閉めるので、花と逢うのに風情もない…
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今年は場所どりに失敗しましたが、夕顔をほぼ毎年育てています。
何よりも、香りが好きで。
闇にぽっと浮かぶ、大きめの顔もなつかしくて。
そして、「夕顔」という名前に魅かれて。

「夕顔」といえば「源氏物語」。
若い頃は、「かわいいひと」「儚いひと」と、夕顔に憧れました。
五十路なかばの今は、彼女の軽いしたたかさが見えるように。
例えば源氏とのなれそめは、お忍びの高貴な男性を、光源氏だと察した、夕顔の方から歌を詠みかけています。扇に夕顔の花を乗せて。
頭中将と光源氏、二人の貴公子を夢中にさせただけある、ちょっとした計算。
女なら誰でも(?)そんな要素はあるけれど、しゃらっと程よい歌が詠めるあたり、ただかわいいだけのオンナじゃないなあと思います。
それなのにまあ、六条御息所の生き霊に接した時の、源氏に頼り切った嫋々たる風情。死んでしまうくらいだから、決して演技ではないはかなさです。
つまりは、したたかさもひっくるめて「かわいいひと」というほかない。
魅力的な女性だと思います。

20年以上前に、友人と「源氏物語の女君のうち、自分はどのタイプだと思うか?」という話をしたことがありました。
その時は憧れも手伝って「夕顔!」と言ったように思います。
年月を重ね、何度か考えてみるたび、不思議に毎回違う女性に変化するのです。
というより、登場するすべての女君に、自分を投影できる「部分!(^_-)」を見つけるようになった。
われ知らず生き霊になるほどの六条御息所の執着と矜恃。若い源氏への気おくれ。
末摘花の、世間も自分も知らない一途。
朧月夜の奔放なパッションは、ままならぬ身分へのいらだちかしら。
マイフェアレディのように自分を源氏色に変える、紫上の素直さ。次々現れる女君への嫉妬。
花散里のあきらめと、それゆえの博愛。
ほど良い明石の身の処し方の影の、大人の計算。
誇り高い空蝉の、みすみす捨てられるくやしさと恐れゆえの敵前逃亡。

女の心模様を、サンプルのように切り取った作品。
源氏物語の凄みを感じます。

ただ、手相で観ると、私は異常に多面性があるらしい。
だから、心模様サンプル説は私だけにあてはまるのかもしれません。
他の女性は、歳を重ねて源氏物語をどう読むのか、いちど聴いてみたいテーマです。