「キャプテンとしてどうしたらよいでしょう?」

以前から中高生中心に相談のメッセージを頂きますが、いくつかあったのがこの質問です。

今回は、ちょうど大学時代や会計士受験で「経営学」を学んでいるので、その紹介も兼ねて関連したお話をしたいと思います。

経営学的に見て「団体スポーツ」と「企業組織」は共通点が多く、有名スポーツ選手やチームを例に挙げて組織経営の参考にしている新聞記事もよくあります。学生の「部活動」も「企業組織」に似ていて、社会に出る前に企業組織を学べる場だと思います。だから、就活で運動部を経験してきた学生は有利とも言われるのです。

さて、経営学「が」スポーツを参考にしているのですから、逆にスポーツ選手「が」経営学を参考にすることも当たり前だと思うんです。なので、今回は少しその話をさせてください。


経営学の中に「リーダーシップ論」という名前で、一つの学問としてとして成り立っている研究があります。

リーダーシップ論の歴史の大きな流れとして、当初、リーダーは『特性論』という考え方のもとで研究されていました。これは、優れたリーダーの特徴(たとえば、責任感・知能指数・外見・社交性・決断力・・・など)を研究し、ある意味「リーダーは生まれながらにして特別な能力を持っている」ということが前提のものでした。この考え方によれば、素質が無ければリーダーにはなれないということになりますね。

ですが、しばらくしてから『行動理論』という考え方が生まれてきました。これは、「リーダーのとるべき行動」に焦点をあてて、「リーダーは生まれながらの才能ではなく、とるべき行動を訓練することによって誰でもなれる」という前提のものです。リーダーを育てたい企業組織にとってはこちらのほうが都合のよい考え方でもありました。僕は今回、この考え方を推してみたいと思います。

行動理論によれば、リーダーの主な行動は「仕事の遂行」と「人間関係」の二つの次元にあると言われています。前者は仕事をがつがつやらせる、厳しいリーダーというイメージで。後者は人間関係の調和をはかって和やかなムードを作る、優しいリーダーというイメージです。

部活動のキャプテンでも当てはめることができますね。ざっくり言えば、「厳しいか、優しいか」です。

これら二つを“同時に”引き上げることが、生産性の向上につながると言われています。しかし、これを同時に一人の人間が行うには矛盾が生じる場合もあり、うまくいかないケースがあります。そのためには役割分担が効果的と言われています。厳しいキャプテンの他に、優しい副キャプテンを置くというような具合です。

この二つのどちらを重視した方がよいかという答えは経営学上でも意見は分かれているので、「バランスが大事」と、当たり障りのない結論でまとめさせてください。大事なことは、努力すれば良いリーダーになることが出来るということです。詳しい内容は経営学の本に書いてあります。易しい本もたくさんあるので、読んでみると為になると思います。

(※参考:そもそも、経営学は様々な学者がそれぞれの研究を行い、似たような理論や異なる見解もあります。そのため、今回書いた理論はあくまで「一つの考え方の紹介」であり、他にもたくさんの考え方があります。例えば、近年はカリスマ的リーダーシップ論、変革的リーダーシップ論というリーダーの特性に基づいた、やや「特性論寄り」の研究がなされていたりもします。)


さて、以上でカタイ話は終わりにします。

あなたは、ひたすら自分の考え方を厳しく押し付けているだけのキャプテンではありませんか?逆に、嫌われたくないからといって人に対して怒ることができないキャプテンではありませんか?

二つはバランスが大事です。

そして、バスケはチームスポーツですから、キャプテン一人が全てやろうなんて思わなくていいと思います。後輩たちに一番良いパフォーマンスで手助けしてもらうために、上級生が全員キャプテンのつもりでリーダーシップをとるべきだと思います。

僕も振り返ってみると実は中学から大学まで、意外にも(?)ずっとキャプテンをやらせてもらいましたが、同級生のみんなが自分に足りない部分をサポートしてくれました。

そして、素質うんぬんを考えるよりも、リーダーとしてどうあるべきか考えることが、第一歩だと思います。そういった意味で、「キャプテンとしてどうしたらよいか?」と質問してきた方はもうあるべき行動を取っていることになります。自信を持って頑張ってくださいね。

参考までに、僕が一つ信念として貫いていたことは、練習を誰よりも必死にやることです。それが一番の信頼につながります。チームからの信頼を勝ち取ることが出来れば、「あいつが言うことなら」と、自然と発言にも耳を傾けてくれるでしょう。単純なことですが大事なことです。

以上、相談してくれたキャプテン候補の中学生や高校生のみなさんへ、何らかのヒントになればいいなと思います。

ではでは。

(追記)

・新しくJBLに参入したリンク栃木のHPを見ると、経営学的思考が多く散りばめられています。プロ組織としてのスタンスがにじみ出ているように感じます。どの部分か意識してみると面白いですよ。

・スラムダンク「10 DAYS AFTER」(※)にて、宮城リョータが新キャプテンに就任し、読んでいた本を知っていますか?きっとコアなファンしか分かりませんよね(笑)

確か、「リーダーに関する本」だったと思います。宮城リョータはキャプテンとして、まず必要だと思う行動を取っていたのですね。

(※スラムダンク連載終了後の10日後の物語。「スラムダンク1億冊感謝記念」DVD