新リーグNBLについて(1)からの続き

<NBLのサラリーキャップ制度概要>

NBLの概要を見ると、成功するか否かは別として、いくつかの点で工夫が見られ、前に進もうとしていることは伺えます。企業チームとプロチーム双方の意見の擦り合わせがあるので難しい問題もあるのですが、うまく調整している点もあります。ただ、一つだけ見逃すことの出来ない、選手の不利益となる制度をトップダウンで押し付けました。それは、サラリーキャップです。

サラリーキャップとは、選手の給与総額に上限(キャップ)を設けることで、チーム経営を安定化させ、リーグ戦力を均衡化させるという効果があります。つまり、お金のあるチームだけが良い選手を集めて優勝し続けることを防ぐことが出来ます。要は、接戦を増やし、試合を「面白くする」のです。

当然、サラリーキャップが減れば選手の平均サラリーも減ることになり、選手にとっては不利益な制度です。上限は高いに越したことはありません。競技問わずプロリーグであれば選手会や組合がある為、ストライキ問題になった事例もしばしばあります。バスケ界には選手会も労働組合も無いので、そんな問題になるはずもなく、あっさり決まりました。

ただ、あまり知られていませんが、現状のJBLにもサラリーキャップは存在します。「日本人選手だけの総額」で2.15億円(NBL説明会)です。また、外国籍選手にも上限があり、1人約18万ドル(NBL説明会)です。一方、NBLでは「外国籍選手も含む全選手の総額」で1.5億円(NBLサイト)です。これは、選手に力が無いことを利用した、買い叩きと言ってもよいかもしれません。


<選手に対するNBLの姿勢と、選手の立場からの主張>

こういう話をすると、共感してくれる方がいる一方で、「そもそもバスケ選手にそんな価値は無い。今までが貰いすぎだ。」という批判も飛んでくるでしょう(※実際、何件か飛んできました)。ただ、長年JBLのチームが選手に支払ってきた水準が事実としてある以上、貰いすぎという根拠の無い主観的な水準よりも、それが客観的な指標の一つです。少なくとも、バスケ選手の労働市場が存在していたのです。

本来の自由市場の考え方であれば、労働対価であるサラリーは(スポーツ選手に限らず)需要と供給でしか決まらないし、現状JBL選手が得ている報酬は不当に得たものでも何でもなく、正当な対価です。その体系を一旦壊すわけですから、「少なくとも配慮くらい」は必要です。(※配慮くらいはしてほしいとしか言っていませんが、「自分の給料が減るのが嫌なんだろ」「単なる愚痴か」という罵りがあったのは、まぁ想定通りです。反論する価値もありません。)

選手の利益ばかり主張するつもりではありません。将来のバスケ界の為なら選手も多少の犠牲は必要だと思います。プロチームがなければリーグが成り立たないので、経営健全化の為にもサラリーキャップが必要なことも理解しています。

ただ、そのしわ寄せが全て選手にいくことを許してはならないし、声をあげるべきことです。42試合から54試合に増え、シーズンも一ヶ月間伸び、その上でサラリーキャップも大幅に下げられ、選手の負担が増えるのは目に見えて明らかなのに、選手に対する説明がまだ無いことには納得がいかないです。(※その後、3月13日にようやく選手向けの説明会がありました。)

選手の権利が何一つ主張出来ずに物事が決まっていくリーグでは、子供達の目にバスケ選手が魅力的な職業として映るでしょうか。将来有望な高校生や大学生がプロの道を選ぶでしょうか。(※ここでも、子供達の夢の為にサラリーは支払えないという揚げ足取りがありましたが、「選手の意見が何も反映されないこと」に、魅力を感じるか否か、問いただけです。)


<Twitterで長文連投をした意図>

ブログではなく、先にTwitterでわざわざ長文を連投した理由は色々あります。まずは、多くの人に知ってもらいたかったので、Twitterを最も情報が広まるツールとして選びました。この事実をあまり知らない人もいると思ったので、誰かは言わなきゃいけないと思ったので、というのもあります。(※後日、多くの方から前向きなメッセージを頂き、実際にお会いすることも出来て、今後に繋がる話が出来ました。色々と協力をして下さる方が増えたことはありがたいことです。)

また、Twitterでの発言は他の選手も見ています。みんな理不尽さは感じているものの、発言しづらかったり、うまく言葉に出来なかったりするでしょう。まずは選手間の共通認識として、この事実関係は整理しておいてほしいなと思ってツイートしました。(※後日、他チームの選手達からも賛同の声をもらえました。シーズンが落ち着いたら、選手達で話す場を作ろうということになりました。)


→新リーグNBLについて(3)