前項からの続き・・・。

 

  新会社の話から、いつしかロッド製作に関する深いい話に突入。

 

建築士の資格を持つという社長の話は時に難しすぎて、タッチー船長と目を点にしつつ、海謙君にフォローしてもらい何とか話に付いていく疾風怒濤の3時間!

 

 

 シロウト目線で解釈した内容は以下のような感じです。

 

 

剛樹の創業は2000年。

 

・最初は大手ブランクスメーカーに外注。シビアすぎるブランクスの発注に「できない」との返答を、何とかしてもらって大変苦労したとのこと。

・細かい設計図を提示して作ってもらっても、結局思い通りの仕上がりにはならない(要求の次元が高すぎる?)ことから、大型設備を導入。

・質の良い国産の素材を使い、高精度の製造設備を駆使することで、高剛性のブランクスを生み出すことに成功。

・ブランクス自体の強度が飛躍的にアップしたことにより、副次的に軽くて感度抜群の竿が作れるようになり、体に負担の少ない、使っていて楽しい名竿が続々と登場するに至る。

 

▲「構造力学的視点を含め、色々な角度から見ないと理想的なロッドは作れないんですよね」と弦巻社長。

 

オレ「なるほど~。ところで最近の剛樹さんのマダイロッドってめちゃくちゃ細いじゃないですか。これってカーボンなんですか?」とノー天気な質問を繰り出してみる(笑)。

▲「いやあ何というか、そう簡単なものじゃないんですよね」と苦笑いの社長さん。

 

見かねた海謙君が助け船を出してくれます。

 

ちなみに船の上でお会いしたときには、気軽に「海謙君」などと声をかけてますが、実は剛樹新作ロッドの設計から製作、実釣テストまで担当する次期社長で、ロッド製作のノウハウを全てたたき込まれている凄腕氏なのです。

▲「うちの場合、一から設計し、繊維の種類や組み方、それに対する樹脂量、テーパーの出し方、弾性率、焼く温度等々を釣り物に合わせて変えていきます」。「素材一つにしても、カーボン繊維の裏にガラス繊維が張ってある素材もありますし、非常に複雑で一概にカーボンだグラスだと分けることができないんです」。

 

オレ「だから剛樹さんのカタログには、グラス含有率○%UPという表現が使われているんですね。調べてみたら、インビクタマダイは43%UP、最強ロッドのブラックバイトは60%UPでした」。

 

「そうなんです。素材の組み合わせが複雑なので○%UPと表記するしかないんですよね」と海謙氏。

 

「複雑にすると手間とコストが掛かるんですが、うちはそこにとにかくこだわっています。より良い物を追求していくとどうしても割高になる・・・」と社長。

 

高級ロッド“剛樹”の値段は、質と性能にとことんまでこだわった結果ということなんですねえ。

 

  チューブラーブランクスも強度抜群。


「ちなみに、ソリッドだけじゃなく、チューブラーブランクスもかなり進化してるんですよ」と、海謙氏が手渡してくれたのが、

▲マダイ用に開発中のチューブラー素材。中空で極軽量。

▲「マダイが掛かるとこんな感じで曲がっていきます」「軽くて良いですね~。張りと曲がりのバランスも理想的じゃないっすか」と喜ぶタチ君とオレ。

 

すると、「曲げてみないとロッドの真価はわからない」と、社長登場。

▲「立川船長、大鯛ヒットしたと思ってしっかり構えてよ」と言いつつ負荷を掛けていきます。

▲「えー、マダイロッドですよね、こんなに曲げて大丈夫ですか」とタチ君。「まだまだ」と社長がさらに負荷を掛けていき、ご覧の曲がりに。10㎏以上の負荷も余裕という尋常ならざる強度に目が点・・・。

▲「ソリッドの方が強いと単純に考えがちですが、チューブラー構造でも必要充分な強度は出せるんです。東京タワーやスカイツリーはみんなチューブラー構造ですよね。直径と繊維の種類と方向と樹脂量・・・全てを突き詰めていくことで、軽さと強度という相反する要素をクリアできるんです」と社長。

▲チューブラーブランクスの見本。これを、

▲たたけと言うんです(笑)。

▲300号オモリで力一杯殴りつけてもびくともしない・・・。踏んでも殴っても割れない壊れない素材がマジで凄い。

 

このマダイ用チューブラーブランクスは、ハリス16号でブリの泳がせにも余裕で使えそうな強度でした。マダイロッドにさえ、これだけの強度をおごる剛樹って・・・。

 

  製品になったチューブラーロッドも見せてくれました。

LTアルティザン。ヒラメやイサキからワラサ釣りまで何にでも使える五目竿。軽量でライトな釣り用の竿かと思いきや・・・。

▲社長「しっかり持ってよ」。タチ君「なんだか怖いんですけど(笑)」。

▲「ウソでしょ」。竿の扱いに慣れたタチ君もびっくりするほど曲げていく社長。

▲「えー、ヤバイヤバイ!」。最後はタチ君がのされるという結末。

 

自重300g程度のライトロッドがここまでの強度を持つなんて!!

 

この竿でワラサはもちろんキメジやカツオも余裕で行けそう。キハダが掛かっちゃってもなんとかなりそうな、恐るべきポテンシャルのロッドでした。

 

  イディアライズマダイは最新技術の結晶。

 

▲「これは最新の特殊複合素材を使ったマダイロッド“イディアライズマダイ”なんですけど、この竿にもこだわりが詰まってます」と、手に持った竿をグニューッと曲げる社長。

 

竿先を竿尻に付けるまで曲げるんだけど、見てるこっちが怖い(笑)。もちろん竿は飴細工のようにU字に曲がっても壊れる気配皆無。それでいて適度に張りがある。

 

これだけ曲がっても大丈夫なら、ワラサやサメの不意の襲来を受けても安心して使うことができます。

しかもこの竿、この手のハンドメイドロッドとしては考えられない265gという軽さ。

 

この軽さであの強度というのはちょっと考えられない世界・・・。

 

※もちろん、不適切な使い方をすればどんな竿でも簡単に折れます。例えば、竿先に道糸を絡ませて過度な負荷を掛けるとか、ブランクスの一部をどこかに挟んで強い力を加える等々。正しい扱い方をしてくださいませ。

 

※負荷をかけ過ぎたり、必要以上に曲げたりするのは、ガイド等の破損につながるのでご注意ください。あそこまで曲げて良いのは社長だけ(笑)。

 

  剛樹ロッドは細部までこだわり満載。

 

剛樹のこだわりはブランクの強度だけじゃないんです。

 

イディアライズを例に取ると、

▲「リールを締め付けるフロントグリップ兼用のネジ部分は、どんなに緩めてもガイド方向に抜けないので、竿を傷付けません」。

▲バランスの取れたバット・・・しかし剛樹のバットはかっこいいですねえ。バットエンド付近のギザギザとツルツルの金部分は、どちらにロッドホルダーのヘッドを着けても良い設計だそうです。

▲グリップ部分の形状を見直すことでパーミング性も向上。「とても握りやすいですね。かっこいいし」とハギさん。ご協力ありがとうございます。

 

さらに重量バランスとベンディングカーブ、ガイド位置など、全てのバランスを追求することで持ち重りを軽減し、ヒット中のやり取りのしやすさ(魚の浮かせやすさ)が際立つ仕上がりになっているとのこと。

 

このライトマダイロッド“イディアライズ”、一義丸常連の間でじわじわ浸透中。早くも手にした人多数で、ショートマダイロッドのメインストリームになりそう。

▲イディアライズにマダイ1㎏級ヒット中。余裕過ぎる曲がり。

イディアライズM215で、7.8㎏の超大鯛とファイト中。「バットがしっかり残るのでやり取りがしやすいですね。かつてのゴッドマダイに似た曲がりで使いやすいですよ」とコイちゃんも太鼓判(笑)。

 

  世界最強のロッド。

 

マダイロッドや五目ロッドでさえこの強度ですから、大型青物やマグロ用ロッドの強度は超絶無比!! 

他の追随を許さないブランドだというのはご存じの通りで、一義丸マグロ船もそうですが、大物狙いの船は軒並み剛樹ロッドが多数を占めるほど。

 

”竿の強度”の話題に入ると、

 “最強ロッド”に対する気概と誇りが親子二代の言葉からほとばしります。

 

▲「剛樹というと、強度のある手作りの竿だ、という漠然としたイメージを持たれると思いますが、実は強度に対するこだわりといったら、それはもう・・・」と社長。

 

「それと、強度を竿の元径/先径で判断しがちですが、強度は竿の太さやテーパーじゃなく構造なんです」と海謙氏。

 

うーん、難しくディープな話になってきた(笑)。

▲「構造とは繊維の種類と樹脂量、テーピングの厚さ、焼き付け温度と時間、ガイドのサイズと位置、塗料の種類と厚さ等々、全てのバランスで成り立っています」。

 

うんうんと頷きつつ社長が補足してくれます。

▲「強度のある竿を作ると言っても、その裏には力学や流体学、構造学に物理学など、全てを加味した設計・制作が必要なんです」。

 

顔を見合わせるタチ君とオレ・・・。

「そこまでは、使っている人にはわからないですよねえ」と、タチ君船長。

「自分もそんな技術の粋が込められてるなんて知らずに使ってました(笑)。それがわかっている釣り人なんて、ほとんどいないんじゃないですか」とオレ。

 

▲「設備もどんどん新しくなるし新素材も次々登場するしで、設計・開発でオヤジともめたりして、とにかく大変ですよ(笑)」。

▲「うちの竿の設計は二人でやってるんだけど、とにかくこだわるから、もめるわけです(笑)。でも、それぐらいこだわり抜かないと納得できる竿はできない・・・。新作ロッドを買ってもらって、もう一本と言ってもらえたら勝ちだと思うんですよ(笑)」。

 

オレ 「じゃあ、一義では勝ちまくりです。ねえタチ君(笑)」。

海謙氏「いやいや、まだまだですよ。夢に見るんです、自分が設計して世に出した竿が折れる悪夢・・・。毎日、“もういいよ”と“まだまだ”のせめぎ合いです。好きじゃ無きゃできないです(笑)」

「設計して・作って・設計し直してまた作っての繰り返しで、正直ここまでやる必要あるのかと思うことも。でも、使っている人の事を思うと妥協できません」。

 

より良い竿が作りたいという親子タッグの強い意志が原動力となって、最強ロッドが生み出される・・・。

 

一本の竿に熱い思いと技術の粋がこめられているからこそ、これだけ多くのエキスパートアングラーに支持されるのだと大いに納得したのでした。

 

”最強ロッド”のコンセプトの元、30㎏以上の負荷を掛けても折れず、アングラーの体も壊さない、そんなロッドがすでに完成しているとのこと。

▲剛樹ブラックバイト。300㎏以上の黒マグロをターゲットにした剛樹史上最強のロッドで、ドラグ負荷30㎏以上でもびくともしない実績あり。竿の前にガイドやリール、釣り人が壊れちゃいそうなぐらい強いそうです。

 

https://www.facebook.com/ymogi

▲世界の海で300㎏級の巨大マグロを追う茂木氏監修の“剛樹MOGI-SP”は、ドラグMAX30㎏以上。剛樹ロッドで巨大マグロゲットの実績多数。詳細は茂木氏のFacebookをご確認くださいませ。マグロ規制に関する、考えさせられる・考えるべき話題満載です。

 

  こだわりは海よりも深く・・・。

 

強度と使いやすさを両立させるためには、ブランクスの強度だけを上げれば良いわけでは無く、ガイドの取り付け方や位置、塗料の種類など、全ての要素をクリアする必要があるそうです。

▲ガイドを巻くスレッドもオリジナル。一巻き3㎏の強度×数百巻きでガイドを固定。

▲剛樹のアルミバッド。「ここにも色んな意味が込められています。ネジ部分にテフロンリングを噛ますことで破損や緩みを防止したり、リールシートのすぐ後ろのギザギザ部分にロッドキーパーのヘッドを取り付けることでトリガーの役割を持たせて、すっぽ抜けを防止しています」。

▲剛樹ロッドのアイコンともなっているこの3つの刻み。これにも意味があるって知ってましたか?

「この刻みをよく見ていただくと、上下非対称な位置になっています。青物などの大型魚がエサをくわえ込んだとき、脇に挟んでいた竿尻を瞬時に腹に当てる必要があるんですが、竿尻を掴んだときに滑らないようにするための刻みなんです」。

 

全ては実用性から生まれたデザインなんですね、知らなかったなあ。実用美の塊です!!

 

  こだわり抜いた外観は、もはや工芸品の世界。

 

剛樹ロッドと言えば、その絢爛豪華な外装に目を奪われます。竿作りを趣味にすればするほど、装飾の技術性の高さに圧倒されます。

▲全身に金箔や銀箔をまとい、所々削り出してラメを散らせる・・・。剛樹オリジナルの装飾は、とにかくゴージャス。

 

角度によって様々なカラーに変化するマジョーラカラー漆塗り技法を取り入れたもの、竹をイメージした独特の世界観など、世界を見渡してもこれだけ意匠を凝らした外見を持つロッドはない・・・唯一無比。

▲「装飾にもとことんこだわり抜いていますよ、箔の職人から学んだりしてね」。

 

竿の装飾に関しても、次々と新しい技法を生み出していく先進性が遺憾なく発揮されています。

 

  お値段妥当と言うより、むしろお安いぐらい?

 

強度抜群のブランクに加え、独特な世界観を生み出す美しすぎる装飾を見るに付け、高価なお値段がお手頃だと感じてきた・・・。むしろ電動リール数個分で、自分だけの美術工芸品的ロッドが手に入るのなら安いと思えてくるから不思議。

 

大きく深い“剛樹”という名の沼が広がっていて、ハマったら抜け出せない・・・要注意です(笑)。

 

以上。簡単ですが、剛樹ロッドの魅力の一端をおわかりいただければ幸いです。

 

ところでお前は自作ロッドばかり使っているじゃないかって?

いえいえ、ブランクが剛樹製のものを何本も所有していて、マダイだけで数千匹釣った竿も未だ現役中なんです。

 

10年以上過酷に使ってもまったく壊れず・へたらずの剛樹ロッド、マジで凄いです。

まあかなりお高い竿ですけど、それだけの価値は間違いなくあります。機会があったらアナタも一本、作ってみてはいかがでしょうか。

 

※ちなみに今回の内容は、宣伝・広告の類いではありません、何の報酬も受け取ってませんので(笑)。

 

様々な剛樹ロッドを使い込んできた自分が、社長と二代目の話をお聞きして感じた忖度無しの個人的な感想です。

 

バイバイ