さて、今回は渋渋の国語を簡単に分析してみようと思います。

まずは、分析から。

 

一 

文学的文章 高瀬隼子 お小遣いの成果

 

文章の難度・・・易

 

題名みて分かるように、小学生でも読みやすい物語

サピックスや予習シリーズだと4年から5年で扱うような難度。

ただ文章量は多い。ざっと9000字は超える

これを□一に持ってきたので、そのまま戦略なしに解いた生徒は時間が足りなかっただろう。

 

文章内容は、友人に合わせて自分が買いたいものをお小遣いで買わず、友人が欲しがったものを買ったあゆみ(主人公)が、園葉という以前仲良しであった友人の祖母に偶然出会い、園葉が良いことをして先生に褒められたことを伝えたら、その祖母からお小遣いをもらった。受け取るべきではないと思いつつも、自分が欲しがっていた本を買えなかったので、その小遣いを受け取り、欲しかった本を手に入れた。ただ罪悪感は消えず、罪滅ぼしの意味で園葉を誘い、ジュースをおごったが、結局、園葉の母が子供同士のお金のやり取りは良くないと言われて、おごった代金を返却され、複雑な気持ちになっているという内容。

 

心情自体は読み取りやすいが、長文であること、人物関係の説明がほとんどない(注釈に書かれているので、それを読まないと理解できない)ことから、文章を読んで理解することに時間はかかっただろう。

 

設問の難度・・・やや易

 

選択肢中心で、記述1問。

選択肢文は長文。だから、選択肢文の分解は必須

また途中まで同じ、もしくは似た内容の選択肢が多いので、しっかり読まないと誤答につながる。

感想型選択肢が最後にある。

これは感想と言いながら、内容を理解できているかどうかを試す選択問題なので、実質、内容一致問題

 

記述は対比を意識させたものであるが、心情は読み取りやすい。(喜び、興奮⇔罪悪感)

ただ字数制限があるので、この字数内にまとめるのに時間がかかりそう

なぜなら、それぞれの心情理由も書かないといけないからだ。

 

設問全体としては、渋渋は細部の読み取りの正確さを求めるので、前後だけ雑に読んで考えるなどをすると誤答につながりやすい。この点は、形式も含め、渋幕と作り方は似ている。

 

説明的文章 二 朱喜哲 『〈公正〉を乗りこなす 正義の反対は別の正義か』

 

文章の難度・・・やや難

 

哲学ではないが、哲学的ではある。

文章量は4800字程度で、一と合わせると14000字とかなりの文章量

 

テーマは多様性。

マイノリティとマジョリティは状況次第で立場が変わる。状況が変わればマイノリティだった人が、ある場所ではマジョリティになる。つまり、あるところではマジョリティという優位な立場、存在であるが、ある場所では、その立場が逆転し、マイノリティという劣位な存在となる。日本人は日本の中ではマジョリティだが、アメリカではマイノリティであるように。まず、このことを自覚していくことが必要で、なぜ、このようなことが起きるかと言えば、多くの社会には、そもそも人間の属性による優劣が歴然と存在するからである。人間は自分が持つ属性により、社会ごとに優劣が変わる、つまり私たちは社会や状況により変わる複数の属性を抱えた存在であることを認識する必要がある。そのうえで、そのようなことに配慮していくことをめんどくさがらずに、多くの人たちとのコミュニケーションを行い、そして新しい視点=マイノリティを発見し、そしてそれを新たな属性の軸として設定することで、より公正な社会を作ること、運用していくことが一市民として大切だという筆者の主張を読み取ることがポイントとなる。

 

単純に抽象的なテーマ、かつ比喩が多く、このような文章に読み慣れていない生徒は相当理解に苦しむと思う。

言い換えれば、読み慣れていれば、なんとか対応はできる文章。

 

□一で時間がかかり、焦って読むと理解に手間取るので、時間配分が上手くできたかどうかがポイントとなっただろう。

 

それにしても、文章量がえぐい。

 

設問の難度・・・やや難

 

選択問題と記述2問。選択問題の特徴は□一と同じ。

記述は文章中の言葉を用いてまとめる問題。因果関係を踏まえ、複数の解答の根拠をまとめる。根拠探しは、設問の意図をしっかり押さえていれば、さほど苦労はしないが、字数制限があるので、指定された字数以内にまとめるのに、一苦労。

 

例えば、問四は

インターセクショナリティという指標で社会を見ることによる効果のうち、筆者が最も価値を見出しているものを記述で説明する問題であるが、この設問にある「筆者が最も価値を見出している」という条件をしっかり理解し、いくつか筆者が述べている中で、もっとも重要だと言っている箇所を探すという手順を踏めたかどうかが、まずポイントになる。

もちろんこれを読み落とすと、解答の根拠自体が間違うことになり、誤答になる。

 

もう一つの問七は、問四とやや解答の重なりがあるので、まとめるときに一抹の不安があったが、恐らくこれは設問のつながりを意識させた問題にしたかったのだろうと推察できる。

 

この解答の根拠自体は、まとめの段落(意味段落)の要点を比喩をどかしながら探すと見つかりやすい

またいきなり解答の根拠を探すのではなく、傍線部の後の内容を確認してから探すと見つかりやすい

 

今回は比喩であるが、傍線部の後の「常に新しい地図のアップデートが必要不可欠」という内容がヒントになっている。

つまり、新しい視点を指していること、地図に喩えたものの説明の中に、解答の手掛かりがあることなどが、この傍線部の後の言葉から読み取れるのだ。それを事前に確認したうえで根拠を探すのと、そうでないのではどちらが有利か、自明の理である。

 

比喩が出てきたときには、この比喩は何をたとえたものかとしっかり押さえながら読むことが大切。

意外と、比喩を使う場所=筆者が分かりやすく伝えたいところ=設問作成者が問題にしたいところなので、その比喩の言い換え(その比喩が何を喩えたものか説明している箇所)が、解答につながりやすいからだ。

 

まとめ

 

設問の作り方自体は、渋幕と酷似している。違いは文章量と文章や設問の難度か。

設問の難度は、渋渋のほうが解きやすい。

今年は、思考力(深く考える、推理する)問題より処理能力を求めるスタイルであり、近年の傾向と変わらないとところもあるが、文章量の多さもあり、より高度な処理能力が求められてきているという点で、総合的に難度は上がったと考えてよいだろう。

もちろん大学入試のことも考えて、このような形態にしたことは容易に想像できる。

 

似たような形態の学校としては女子学院が上げられる。

 

合格するにはどうすればよいか。(加筆分)

 

まず、渋渋は最難関と同レベルの生徒が受験しますが、1日だけはやや受験者レベルが下がると思います。

開成、桜蔭など御三家志望の生徒は受けないからです。

もちろん、それでも大変人気がある学校なので、合格しやすい学校ではないですが。

 

ですから、基本は1日が勝負どころですが、男子の場合、聖光学院も2日にあるため、最上位層は分散するかもしれないので、2日で合格する可能性もなくはないです。男子で共学に絶対行きたいという生徒は多数派ではないので。

 

ただ女子は厳しいと思います。豊島岡、洗足を受験する生徒のレベルは1日の渋渋受験者層とそう変わらないでしょうし、桜蔭の結果も出ていないので、都内だと最上位層も渋渋も受験する可能性があると思います。

女子は共学志向が最近、強いですからね。

 

この受験の流れを踏まえたうえで、国語の対策を簡単に伝えると、

 

1・長文対策

2・選択問題の正答率9割を目指す。

3・記述を字数制限内にまとめる訓練をする。

 

以上になるでしょう。

 

1は、特に説明的文章の難度が高いので、その対策もしたいほうが良いです。

学問的知識を増やすこと、漢字力(漢検3級レベル)、語彙力を強化していくこと、文章を効率的に読むコツ(読み方というやつですね)をつかむこと。これが対策につながります。

 

2は、設問の意図を理解→解答の根拠→選択肢文の分解→選択した解答と傍線部や解答の根拠との照合を徹底することでクリアできるかと。いわゆる分析力強化ですね。解説を理解する際に、なぜこれが正しいのか、なぜ自分の選んだ選択肢は間違いなのか、しっかり分析する習慣をつけることが大切です。

 

3は、まず記述の要素をピックアップ、簡単にポイントをメモ→それをもとに解答を作成。

主語、述語はしっかり書く、指示語、比喩は入れない、文末に気を付ける、設問条件を押さえるなどをしっかり確認しながら、因果関係を意識してまとめるなど、文章の「まとめ方」をしっかり意識しながら、書き直しを何度もしていくと、だんだん書くコツが分かってくると思います。

もちろん、誰かに添削してもらわなければなりませんけど。

 

私の教え子も2年連続渋渋(男子、女子)に合格していますが、このようなことも含め、授業や補強教材(自作)を通して生徒たちを鍛えていました。もちろん4科目なので、国語だけで受かったわけではないでしょうが。

ただ、国語に不安がある生徒ではありました。模試の合格率も40%切ることも多々ありましたし。

 

数年前も渋渋2名、女子ですが、合格しています。

彼女たちも同じ訓練を受けていました。

 

さて、今回はやや長文となりました。加筆もしましたし・・。笑

では、この辺で。

 

よい一日を!

実りある受験生活を。

 

タカウジ

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