フェルマーの最終定理のよくある簡易的証明をご紹介します。
X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素な自然数、nが奇素数として
矛盾を導きます。
流れのポイントは、次の[1][2][3]です。
[1] E=X+Y-Z と X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと
⇒ A+B=C, n|E, n*A|E^n, n*B|E^n, n*C|E^n
[2] E^nが n*A, n*B, n*Cで ちょうど割り切れるとき
⇒ n∤ A*B*Cのとき、 A=a^n, B=b^n, C=c^nの形になる
[3] n∤ A*B*Cと A=a^n, B=b^n, C=c^nと A+B=C から
⇒ a^n+b^n=c^n になり、 E=0と X+Y=Zで 矛盾します。
次に、[1][2][3]の順にご説明します。
[1] E=X+Y-Z と X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと
⇒ A+B=C, n|E, n*A|E^n, n*B|E^n, n*C|E^n のご説明
E=X+Y-Zとして、 X=A+E、Y=B+E、Z=C+Eと置くと、 A+B=Cになります。
なぜなら、
E-Y=X-Z=-B
E-X=Y-Z=-A
E-Z=(X-Z)+(Y-Z)=-C
だから、A+B=Cになります。
AとBのどちらかは、1ではないので、A≠1とする
なぜなら、A=B=1とすると、X=Yになるから。
また、A,B,Cは互いに素です。
なぜなら、
A+B=C だから A,B,Cのうち、
いずれか2つが共通素因数pをもてば、
残りの1つも共通素因数pをもちます。
そして、以下に示す通り、
n*A|E^n だから rad(A)|E
p| rad(A) |Eだから、
X=A+E、Y=B+E、Z=C+E も
共通素因数pをもつことになるからです。
(A+E)^n + (B+E)^n = (C+E)^nなので、
A^n+Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*E^(n-k)+E^n+
B^n+Σ[k=1,n-1]nCk*B^k*E^(n-k)+E^n=
C^n+Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*E^(n-k)+E^n
E^n=
{C^n-A^n-B^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{C^k-A^k-B^k}*E^(n-k)
C=A+Bを代入すると、
E^n=
{(A+B)^n-A^n-B^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{(A+B)^k-A^k-B^k}*E^(n-k)
E^n=
Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*B^(n-k)+
Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*A^m*B^(k-m)}*E^(n-k)
右辺の各項は、nCk*Aを含み、n|nCkだからn*A|E^n
nは3以上の素数なので、n|E, rad(A)|E
右辺の各項と左辺の各項を、n*Aで割ると、
E^n/(n*A)=
{(E^n)/n}/A=
B^(n-1)+{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}+
Σ[k=2,n-1]B*(nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A^(m-1)*B^(k-m-1)}*E^(n-k)
もし、
{(E^n)/n}/AにAの素因数が残っていれば、
rad(A)|Eで、
A|{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}だから、
B^(n-1)もAの素因数を持ちます。
AとBは互いに素だから、これは矛盾します。
なので、
{(E^n)/n}/AにAの素因数は残っていません。
いいかえれば、
{(E^n)/n}は、ちょうどAで割り切れることになります。
Bについても同様にして、
{(E^n)/n}は、ちょうどBで割り切れることになります。
Cについても以下の通り、
{(E^n)/n}は、ちょうどCで割り切れることになります。
※{(E^n)/n}が、ちょうどCで割り切れることのご説明
Z= C+E, X= A+E, Y= B+E だから
Z^n = X^n + Y^n
に代入すると、
(C+E)^n = (A+E)^n + (B+E)^nなので、
(C+E)^n - (B+E)^n - (A+E)^n = 0
B = C-A を代入して
(C+E)^n - (C-A +E)^n - (A+E)^n = 0
(C+E)^n + {(-C+A) -E}^n + {(-A)-E}^n = 0
C^n + Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*E^(n-k) +E^n +
(-C+A)^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-C+A)^k*(-E)^(n-k) +(-E)^n +
(-A)^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-A)^k*(-E)^(n-k) +(-E)^n = 0
-(-E)^n=
{C^n +(-C+A)^n +(-A)^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ C^k*E^(n-k) +(-C+A)^k*(-E)^(n-k) +(-A)^k*(-E)^(n-k) }
E^n=
{C^n -(C-A)^n -A^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ C^k*E^(n-k) -(C-A)^k*E^(n-k) -A^k*E^(n-k) } =
-Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*(-A)^(n-k) +
Σ[k=1,n-1]nCk*{ C^k -(C-A)^k -A^k }*E^(n-k)
E^n=
-Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*(-A)^(n-k) +
-Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*C^m*(-A)^(k-m)}*E^(n-k)
右辺の各項は、nCk*Cを含み、n|nCkだからn*C|E^n
nは奇素数なので、n|E, rad(C)|E
右辺の各項と左辺の各項を、n*Cで割ると、
(E^n)/(n*C)=
{(E^n)/n}/C=
-(-A)^(n-1)-{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*C^(k-1)*(-A)^(n-k)}+
-Σ[k=2,n-1](nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*C^(m-1)*(-A)^(k-m)}*E^(n-k)
もし、
{(E^n)/n}/C に C の素因数が残っていれば、
rad(C)|E で、
C |{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*C^(k-1)*(-A)^(n-k)}だから、
(-A)^(n-1)も C の素因数を持ちます。
A と C は互いに素だから、これは矛盾します。
なので、
{(E^n)/n}/C に C の素因数は残っていません。
いいかえれば、
{(E^n)/n}は、ちょうど C で割り切れることになります。
[2] E^nが n*A, n*B, n*Cで ちょうど割り切れるとき
⇒ n∤ A*B*Cのとき、 A=a^n, B=b^n, C=c^nの形になることのご説明
n∤ A*B*Cのとき、
互いに素なA,B,Cのすべての素因数pは、p≠nで、
A,B,Cは、E^nをちょうど割り切るので、
p| rad(A*B*C) |E のとき
(p^m)|E かつ p^(m+1)∤ Eとすると
Aの素因数pの冪は p^mn の形をしています。
つまり、A=∏ p^mn=(∏ p^m)^n
ここで、(∏ p^m)=aとおくと、A=a^nとなります。
同様に、B=b^n, C=c^nの形にあらわされます。
n|A*B*Cのとき、
A,B,Cは互いに素なので、
n|Cなら、n∤ A*Bだから、A=a^n, B=b^nの形になります。
A+B=Cだから、A+B= a^n + b^n = C
C= a^n + b^n =
(a+b)^n - Σ[k=1,(n-1)/2](nCk){ a^(n-k)*b^k + a^k*b^(n-k) }
n| [右辺の(nCk)] より、
n|C と n|(a+b)^n つまり n|(a+b)は、同値です。
だから、
n|C なら n|(a+b) です。
また、
C= a^n + b^n =
(a+b)[ Σ[k=1,(n-1)/2] { a^(n-k)*(-b)^(k-1) + (-a)^(k-1)*b^(n-k) }+
a^((n-1)/2)*b^((n-1)/2) ]
(a+b)| [右辺の{ a^(n-k)*(-b)^(k-1) + (-a)^(k-1)*b^(n-k) }]
そして、上記2つの式の右辺どうしはひとしいから、
(a+b)^n - Σ[k=1,(n-1)/2](nCk){ a^(n-k)*b^k + a^k*b^(n-k) } =
(a+b)[ Σ[k=1,(n-1)/2] { a^(n-k)*(-b)^(k-1) + (-a)^(k-1)*b^(n-k) }+
a^((n-1)/2)*b^((n-1)/2) ]
両辺を(a+b)で割ると、
(a+b)^(n-1) - Σ[k=1,(n-1)/2](nCk){ a^(n-k)*b^k +
a^k*b^(n-k) }/(a+b) =
[ Σ[k=1,(n-1)/2] { a^(n-k)*(-b)^(k-1) + (-a)^(k-1)*b^(n-k) }+
a^((n-1)/2)*b^((n-1)/2) ]
もし、n|C なら
n|(a+b)で、n| [左辺の(nCk)] より、
n| [左辺]
ところが、間違い
n| [右辺の{ a^(n-k)*(-b)^(k-1) + (-a)^(k-1)*b^(n-k) }] かつ
n|Cなら、n∤ A*Bだから、n∤ [右辺の a^((n-1)/2)*b^((n-1)/2)] なので、
n∤ [右辺]
これは、n| [左辺] なので矛盾です。
なので、n∤ Cがいえます。
同様にして、n∤ A, n∤ Bもいえます。
つまり、n∤ A*B*Cです。
[3] n∤ A*B*Cと A=a^n, B=b^n, C=c^nと A+B=C から
⇒ a^n+b^n=c^n になり、 E=0と X+Y=Zで 矛盾のご説明
上記[2]より、n∤ A*B*Cなので、 A=a^n, B=b^n, C=c^n とおけます。
さらに、A+B=Cより、a^n+b^n=c^nとなります。
ところが、[1][2]より、
nは奇素数,
X,Y,Z,E,A,B,C,a,b,cは自然数なので、
E≠0とすると、
X=A+E>A=a^n>a, Y=B+E>B=b^n>b, Z=C+E>C=c^n>cより
X>a, Y>b, Z>c, a^n+b^n=c^nとなります。
X^n+Y^n=Z^n (nは奇素数)で、
Zの最小性を仮定すれば、矛盾するので、E=0となります。
また、E=0のときは、
E= X+Y-Z= 0 だから X+Y=Z
(X+Y)^n = Z^nより
X^n + Y^n +{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)} = Z^n
X^n + Y^n = Z^nで、X,Yは自然数なので、
{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)}=0となり、矛盾します。
なので、 X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素な自然数で、
nが奇素数の自然数はありません。
なお、n=4のときの証明は既知とします。