映画のエンドロールが流れ始めた。
ジュンピョとの時間の終わりを告げている。
この映画は、現代版人魚姫のお話だった。
ジフ先輩が私に、『人魚姫はだめだよ。』そう言って励ましてくれたことをずっと覚えているから。だからどうしても観たかったのだ。
ジュンピョはこのことを知らないはずなのに…やっぱり何でもお見通しなのかな。
そんなことを考えながら、隣のジュンピョをちらりと見ると、分かってるからって感じで、乱暴に頭をぽんぽんっとなでられた。
「さぁ、もう行かないと時間がないぞ。」
「ジュンピョ…。」
「俺も空港まで行くからな。」
「うん…ありがとう。」
何だか断れなかった。申し訳ないとかではないから、多分自分ももう少しだけ一緒にいたかったのかもしれない。
もうここに来るのは最後だと思うから。
私の手をぎゅっと繋いでいるジュンピョを見上げたら、泣きそうな顔をしていた。こんなに大きい男の人なのに子供みたいに見えて、力いっぱいにぎり返したら、驚いたように私を見下ろしてくる。
「ジュンピョ。ごめんね。ありがとう。」
「べ、別に、何もしてねー。」
「ふふふ、それとね、ジュンピョのお父さんが夕食に誘ってくれてたでしょう?きちんと謝っておいてね。お姉さんにも。それから…お母さんにもよろしくね。」
にっこりとジュンピョを見上げたら、短く「おぉ。」とだけ言ってそっぽを向いてしまった。
そんなジュンピョを眺めていたら、何だか笑いが出てしまって、私は隣でくすくす笑っていた。
空港に着いたら、出国の時刻ギリギリになっていた。
すっと右手を出してジュンピョに握手を求めたら、ジュンピョも迷うことなく私の手を取ってくれた。
「俺はお前が好きだからな。」
「ジュンピョ…。」
「お前は馬鹿で鈍感だから、もう一回ちゃんと言っておきたかった。」
「…。」
「絶対にずっと好きだからな。これからは容赦しねーからな。覚悟しておけよ!」
困ったように目じりを下げたら、真剣な顔でぐいっと抱きしめられた。
私は流れる涙を止めることができずに、心の中で、ありがとうを何度も繰り返した。
俺は最後まで、ジフにちゃんと想いを伝えろとは言えなかった。
あいつのことだ、本当に俺様が納得するまで何も言わずにそっと近くに居るのだろう。つくづく馬鹿な奴なんだ。
ジフも同じで、結局勘違いに勘違いを重ねて、今ではもう諦めようとしているかもしれない。
けれど…俺はそこまでできた人間じゃないから、それでダメになるようだったら、まだまだ俺につけ入る隙があるなどと考えてしまうのだ。ジャンディを失ったら一生後悔することになるから。ジャンディでなければ俺は幸せになれないんだ。
でも、友情も捨てるわけにはいかない。だからヒントだけは出してやないとな。
俺はつないでいたジャンディの手の感触を確かめるように、手のひらを閉じたり開いたりした後に、嫌々ジフにメールを送った。
ジャンディはもう帰ったからな。
それだけ送ると、俺は携帯の電源を切った。
これ以上、お前ほどお人好しにはなれないからな。
ようやく別荘に辿り着くと、辺りは真っ暗になっていた。
韓国の家と同じく、使用人たちは俺がいる時には姿を現さない。
完璧に掃除された部屋に入り、大きなソファにコートも脱がずにうつぶせに倒れた。
メールが来たようだ。
そんなはずないのに、微かに期待してしまう自分がいる。ジャンディからじゃないかと。
ドキドキしながら画面をタッチすると、そこにはジュンピョからで、ジャンディが帰ったと知らせるメールだった。
昼間に見た仲睦まじい二人の姿が脳裏にフラッシュバックする。
意味が分からない…。
どうして俺にそんなことを?しかもどうして日帰り??
さっきまで眠くてたまらなかったはずなのに、急いで次の便のチケットを手配している自分がいる。
ジャンディの非常ベルを聞き間違えるはずがないのにおかしいなって思っていた。
今は何も分からないけれど、この何かを逃してはいけないような気がした。
さっきまでジャンディから離れた方がいいだなんて思っていたのに、そんなのはやっぱり…無理かな。
苦笑いをこぼすと、俺は疲れも忘れて急いで車に乗り込んだ。
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今日は良いお天気ですねぇ。それなのに、昨日から眠くて眠くて…
とてもお出掛けできません