チョコの花より美男ですね

チョコの花より美男ですね

美男ですね、花より男子、成均館スキャンダルの二次小説、スイーツなど、日々のささやかな幸せについて

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大好きな皆様こんばんはです桜

桜の季節からは少し遅くなってしまいましたが…

花より団子より → 夜桜 → 桜流し  です桜

毎年書こうと思っていたのですが、夜桜から桜流しは2年間があいてしまいましたくま

ほんの少しだけでも楽しんでもらえますように桜


─────


川に流れる桜の花びらを、ぼんやりと眺めている。ミニョと二人で。


今日はあいにくの雨。

かろうじて残っていた桜も側を流れる川に吸い寄せられるようにはらはらと散っている。


隣のミニョは、もうミナムではなく、ただのミニョで、ベージュの傘をくるくると回しながら、桜の行方をじっと見つめている。

短かった髪は肩よりも長くなり、ズボンしか履いていなかったくせに、少し強めの風にスカートをふわふわとなびかせながら。


「テギョンさん、私ってやっぱり雨女なのでしょうか。」


下らない。そんなのあるわけがない。
第一雨女などというものが本当に存在するのなら、どこぞの砂漠地帯にでも行ってその力を存分に発揮すればいい。
などと心の中では毒づいているというのに、表面上の俺はどうやら笑っているらしかった。

口角が上がっているのが自分でも分かる。


去年の桜の頃、ミニョはアフリカの広大な大地でボランティア活動に励んでいたのだった。

もしかしたら、雨女であるという根拠のない力を実感する出来事があったのかもしれない。


「アフリカでも雨ばかりだったのか。」

「え?」


テギョンの皮肉に気がつかず、不思議そうに見上げてくるその顔はとんでもなく間抜けで、なんとも面白い顔であるはずなのに、なんだか胸がつまる。

アフリカという広大な大地で二年も生活していたくせに、透き通るように白い肌はそのままに、だいぶほっそりとした体は今までにはなかった儚さを感じさせるせいかもしれない。


早く自分の気持ちを伝えなくては。


二年前、確かに感じたこの気持ちをミニョに伝えることもなく、なんてことのない顔をして見送ってしまったことをずっと後悔していた。

何に見栄を張っていたのか、妙なプライドが邪魔をしたのだ。

なんならお前が言ってこいよ!くらい思っていた自分の傲慢さ。


今こうしてまた一緒に桜を見れていることは、決して当たり前のことではないのだ。


もしアフリカでミニョの身になにか起きていたら。

もしミニョの心が他に移っていたら。


テギョンは決死の覚悟でミニョの手をそっと握った。

ごく普通の男性であればそんなには大そうなことではないかもしれない。でも、テギョンにとっては二年間も会えなかった女性に対して軽くできる行動ではないのだ。


まだ肌寒い風が吹いているというのに、急激に熱くなる体。柔らかく小さな手に眩暈がする。


恐る恐るミニョの顔をのぞき見れば、今もなお目の前を流れ続けている桜のように薄いピンク色の頬をくいっと上げ幸せそうに微笑んでいる。大きな目には涙が浮かんでいるようにも見える。


「…アフリカでは、その…あー、なんというか、うーん、良い男…いや、まぁ、俺様よりイケメンは…いたか?」

「……いえ、テギョンさんより素敵な方はいませんでした。」


ぱっと俯いたミニョの耳がとんでもなく赤い。

これは…自分の都合の良いように考えてもいいのだろうか。

ミニョのつむじを見つめながら、テギョンは大きく息を吸った。


「好きだ。」


弾かれたように顔を上げたミニョは既に泣いている。

ふわふわした頬を流れる涙をコートの袖でぐいっと拭ってやると、すんと鼻をすすり満面の笑みをテギョンに向けた。


「私も大好きです!!」


突然のデカい声にびくりと肩を震わせて、それからまじまじとミニョを凝視した。


今までのミニョであれば、え!?本当ですか??といった具合に、まずは驚いて目を丸くして固まるというのがセオリーのはずだ。
それなのに、テギョンの言ったことを一回で真に受け、しかも自分の気持ちまでも素直に口にするだなんて。


おかしい…なにかがおかしい。

いや、でも。
二年も離れていたのに、こうして桜を見に誘った時点で勘付くものなのかもしれない。

自分はミニョの心変わりにとんでもなくびくついていたが…。


ミニョはミニョで、顎に手をやり何を考えているのか突然黙り込んでしまったテギョンを不安げに見つめた。

「あ、ああの…テギョンさんは私のことをお兄ちゃんに相談して下さっていたんですよね?」

「はぁ?」

「え?だって…」

「だってなんだ!」

「…お兄ちゃんが…今日テギョンさんに告白されるから心の準備をしておけって…」


ちっ!ちっ!ちっ!

舌打ちが止まらない。

ミナムの野郎…


「そ、それに…シヌさんとジェルミからも…色々聞いていて…」

「なんて!」

「…テギョンさんがご飯を食べれないくらい落ち込んでいるとか…私からのメールを自分だけ見てすぐに鍵のかかったフォルダーに移動してしまうとか…」


シヌ…ジェルミ…

今の俺は首まで真っ赤に違いない…。


なんだか笑いが込み上げてくる。


大きな声で笑い始めたテギョンを、今度こそ目を丸くして固まったまま見上げているミニョ。

テギョンはそんなミニョを見て、繋いだままの手を更にぎゅうっと握った。


もうミニョ以外どうでもいい。どうだっていいのだ。


「俺はお前の近くにいるだけで幸せだ。」


ここまで恥をさらされていたのであれば、もうなにも恐れるものはないと思った。だから、素直な気持ちがぽろりとこぼれ落ちたのだった。


ミニョは息をのみ、また静かに涙を流している。


気が付けば傘にぽつぽつと響いていた音は止み、空も少しだけ明るさを取り戻していた。

ミニョのベージュの傘をそっと取り畳んでやり、自分の紺色の傘と共に繋いでいない方の手で持つと、ミニョが小さな声でありがとうございますと言った。

テギョンはそれには特に返事はせず、またコートの袖口でミニョの涙を拭いゆっくりと歩き出した。


桜の流れる向きと同じに。


「桜は満開でなくてもキレイですね。」

にっこりと笑うミニョはたまらなくかわいい。

夢にまで出てくるほどに渇望していたそれは、テギョンの胸を痛いほど締めつける。


「これからも俺様がずっと一緒に桜を見てやる。」

「ふふふ、やっぱりテギョンさんですね。」


お前の近くにいられるだけで幸せだ。


心の中でもう一度呟いて、意地悪く微笑むその桜色の頬にキスをした。



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読んで下さってありがとうございますお星様
なんだかまとまりも盛り上がりもないお話になってしまいました…
まさかまだ気持ちを伝えあっていなかったなんて!!自分でも書いてて驚いてしまいましたクマすみません…

急に寒くなったり暑くなったりと体調管理が難しい時期ですが、お体に気を付けて下さいねくま

また皆様にお会いできる日を楽しみにしております。

特にどうということもなく。だだベッドに横になっている。

今日が晴れなのか雨なのか、そういうこともあまり関係はないように思う。

確か…冬だった気もする。


「テギョンさん!起きて下さい!いつまでそうやって横になっているつもりですか?」

珍しくノックもせずに部屋に入ってきたミニョが、俺を鬼の形相で見下ろしている。

「…誰が勝手に入っていいと言った。」

いつもなら俺の低い声に怯えた表情を浮かべるくせに、今日のミニョは強気の姿勢を崩さない。

「しょうがないじゃないですか!どうせノックしたって開けてくれないんだから!」

とにかく起きて下さい!と、ミニョが勢いよく羽毛布団をはがした。


「さぁさぁこれに着替えて下さい!」

いつの間に用意したのか、最近は袖を通していなかった、細身の黒のスーツと白シャツがきれいにクローゼットに掛けられている。


何故こんな奴の言うことを聞かなければならないのか!と、思ってはいるのだが、まぁ、今日はなんの予定もない、なんてことのない日だ。たまにはこのバカに付き合ってやらないこともない。

心の中で、たくさんの言い訳をしつつ、無言でそのスーツに袖を通した。ミニョをひとにらみすることも忘れなかった。


着替えた俺を見て満足そうに微笑んだミニョは、俺の手をひき洗面所へ連れて行くと、寝癖のついた髪をセットするように促した。

チっ!と、舌打ちをしつつも、顔を洗い髪を簡単にセットした俺は、ミニョに問いかけた。

「…これからどうするつもりだ。」

「そうですねー。まずは美味しいご飯が食べたいな!」

お前がしたいことか!思わずツッコミそうになったが、まぁいい。特に食べたいものなどないのだから。


外に出ると、太陽の光に少し眩暈がした。

もう昼頃なのだろう。


今日のミニョはいつもと一味違うようだ。

タクシーが既に合宿所前で待機している。


どうした、お前らしくもない。そう皮肉でも言ってやろうとしたが、それも止めにした。そんなことを言ったところで面白くもなんともないからだ。


「とりあえず、たくさん食べたいから食べ放題とかどうですか?」

「食べ放題!?ビュッフェのことか?なんで俺が自分で取りに行かないといけないんだ!嫌だ!」

「えー!楽しいですよー?たくさん食べれるし!」


お前はやはりバカだ。

A.N.ANGELのテギョンとミナムがそろって食事を取りに行ってみろ!大変なことになるではないか。食べるどころの話ではない。


「…じゃあ中華。俺は中華が食べたい。個室の中華だ。それ以外は認めん。」

「ちぇー。分かりました。じゃあそこで。テギョンさん、運転手さんに場所言って下さい。」

口を尖らせているものの、どことなく嬉しそうな顔のミニョ。

テギョンもなんとなく楽しい気分になっている。


俺が定宿にしているホテルの中にある高級中華。

こいつは俺様を偉そうに誘っておきながら、タクシーの支払いさえも俺に任せて、さっさと中に入って行く。

最上階にある店へミニョは向かっている。分かってはいるのだが、どうにも先に一人で行かせたくなくて、少し大きな声で呼びとめる。

「ミニョ!ちょっと待て。」

一瞬びっくりして目を丸くしたミニョだったが、その直後ふんわりと微笑み、照れたように俯いた。

テギョンは心拍数が少し上がったのが自分で分かった。


一緒にエレベーターに乗る時、いつもよりも少しだけくっついてミニョの隣に立った。


店に入るなり、今日のおすすめを全部持ってきて下さい!と、大富豪のような注文をするミニョ。それから、事細かにテギョンのアレルギーについての説明をした。

まぁいい。どうせ支払は俺だ。気の済むまで食べたらいい。


目の前の円卓に所狭しと並ぶ色鮮やかな食事。

ミニョは自分のよりも先に、その全ての料理をテギョンに取り分けた。


「おい!こんなに食べれんぞ。」

盛大にため息をついた。しかし、ミニョは、

「ダメです!全部食べるまでここを離れません!」

と、キっ!と、音がしそうなほど、テギョンをにらんだ。


太らせる気か!とか、この俺様にむかってなんたる態度!とか、たくさんたくさん文句を言いたいのだけれど、ミニョの目に涙がたまっているように見えて、ぐうっと我慢した。

食べればいいんだろ、食べれば。


あまり味はしなかったが、次から次に料理に手をつけた。

それを満足げに見つめるミニョ。

「おまえも早く食べろ。」

ミニョは、テギョンさんが食べるのを見てたらお腹いっぱい!と、柔らかく微笑んだだけで、大好きなタピオカプリンにも口をつけなかった。


どう考えても食べ過ぎの腹をさすってエレベーターに乗り込むと、俺の最も嫌悪するあの女があえて同じエレベーターに滑り込んできた。戸籍上は母となっている女だ。

女はただ俺だけを見ている。

まるでミニョが目に入っていないように。


きっと…また俺になにがしかの文句があるのだろう。しかし、今日の俺は気分が良い。そんな嫌な小言聞きたくもない。

1階まで我慢する気でいたが、その女の表情がなんともいえないもので、なんだか心がざわついた。

慌てて次の階を押して、ミニョの手を引きエレベーターを降りた。

ほんの少しだけ目の端に映った女は、なにか口を開きかけていたようだった。


「…テギョンさん…よかったんですか?」

「いい。今日はいいんだ。で?これからどうするんだ?」

「ふふふ、これからはですねー。テギョンさんの歌が聞きたい!」

いつものミニョからは考えられないが、自分の腕にぎゅうっと抱きついてきた。


おいおいおい、今日のおまえはどうした!?

耳が熱くなるのが分かって、抱きつかれていない方の手で、思わず耳を隠した。


歩いて連れてこられたのは、事務所のレコーディングスタジオ。

ミニョが俺の誕生日に小人の真似事をしたあの場所だ。


「最近、新曲聞いてませんよ、なんか作って下さいよ!」

ニコニコしながら言うミニョの頭を思いっ切り小突いた。


ふざけやがって!曲を生む苦しみを知らないからそんな簡単にものが言えるのだ!!

怒鳴り散らしたかったが、小突くだけで堪えてやることにした。

何故なら、新しい曲が浮かびそうな予感がするから。


テギョンは一心不乱に譜面にむかいながらも、ミニョの存在を度々確認した。

ミニョはテギョンの斜め前の椅子に腰かけて、じいっと嬉しそうにテギョンを見つめている。何度確かめてもその姿勢は変わらなかった。


出来上がると、部屋の温度が少し下がっていることに気が付く。

もう日が落ちたのかもしれない。


「…できました?」

ミニョが目をうるうるさせてテギョンを見つめた。


テギョンは返事をする代わりに、キーボードの前ですうっと大きく息を吸い、今できたばかりの曲を弾き、歌った。心を込めて。


ミニョは前奏部分から号泣で、音なんて耳に入ってないんじゃないのか?と、心配になりつつも、最後まで歌い上げた。

乾燥のせいか、寝過ぎたせいだろうか、声の出が悪かった。

こんなことなら発声練習をしてから臨むべきだったと、ほんの少し反省したが。


「…素敵です。すっごく素敵です。テギョンさんはやっぱり天才ですね。」

ミニョが惜しみない拍手を送ってくれる。その拍手は、廊下のバタバタという複数の足音が近づいてくるまでずっと続いた。


「テギョンさん、ちゃんと食べて下さいね。」

流れる涙がキラキラしている。

「テギョンさん、ちゃんと…寝て下さいね。」


今日の俺はどうやらおかしいらしい。

ミニョのことがたまらなく美しく見える。


「テギョンさん、大好き!」

そんなぼーっとしている俺に、ミニョが飛びついてきた。体を痛いくらいぎゅうっと抱きしめられる。


「…言い逃げか?俺は…俺は…」
「テギョンさんは大丈夫!だって…」

ほら!と、ミニョが頭をドアに向けると、そこには、大泣きの男5人。

シヌ、ジェルミ、マ室長、社長、そして、ミナム。


「テギョンさんには皆がいる。私なんかいなくても。」

「…おまえは相変わらずのバカだ。分かっていないようだから言っておく。俺はおまえが好きなんだ。ミニョ。」

なんとなくだが、淡い霧に包まれたように見えるミニョを、力の限り引き寄せて、その唇にそっとキスをした。


ミニョは満面の笑みで、テギョンを見上げた。

「テギョンさんありがとう!私の方が大大大好き!!」

そして、何度も振り返りながら、男5人が立ちすくむ扉に手をかけた。


入れ替わりに入ってくる男5人。

誰もミニョについて触れる者はおらず、ただ涙を流してテギョンを見つめている。


「…テギョン、探したじゃないか。」

シヌがテギョンの前にある譜面を目にして固まった。

その様子を見て駆け寄ってきたジェルミもまた、同様に目にした譜面の前で固まった。


「ミニョ?」

ミニョと同じ顔をしたミナムが、同じようにキラキラと涙を流しながらテギョンを見た。


「…どうやら…俺のことが好きらしい。」

頷いてミナムを見たら、そんなの知ってるよー!と、鼻をすすった。


「これ…」

マ室長が指さした先には、さっきまでミニョが座っていた椅子に、テギョンが作った豚うさぎがちょこんと座っていた。


確かあれは…

「…ミニョ会いに来てくれたんだ。ずるいな。」

シヌが目頭を押さえて顔を背けると、ジェルミもその場で地団太を踏んで悔しがった。

「テギョンさん酷いよ!なんで呼んでくれないの!?」

「……あいつ…兄を差し置いて…」

ミナムは放心状態だ。


「テギョンが一番手がかかるから、仕方なくだよ。」

社長がそう言うと、その場に居る全員が、泣きながら、ぶふっと吹き出した。



テギョンは、あの日、ミニョと一緒に燃やしたはずの豚うさぎを手に取り、胸に抱いた。

ちゃんと生きるよ。と、心の中のミニョに語りかけながら。


でも、どうしてもダメそうな時は、またこうして化けてでも出てきてくれよ、と、泣きながら願った。




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ミニョが死んだのはちょうど一年前。
一人で現場へ行く途中での交通事故だった。

完全に相手方の不注意で、誰も悪くない。それなのに、全員がミニョだけを現場へ行かせたことを悔やんでいた。

特に素直になれていなかったテギョンの落ち込みは酷く、完全に仕事を休養し、季節もなくただ横になって日々を過ごしていた。

という説明を入れようと思ったのですが、なんだかしっくりこなかったので、最後にちょこっと載せてみました。

お久しぶりです♪ 読んで下さってありがとうございますお星様
皆様お元気ですか?忘れずにいて下さり、本当にありがとうございますくま  

よくありがちなお話ですが…なんとなく思い浮かんで書いてみました。
悲しいのは得意ではないのですが、たまに急に読みたくなることがありますよね。

最近は、嵐のニノさんに夢中で夢中で…やはり私は薄い顔が好きなんだー!!!と実感しております。
あの薄い笑みがたまりませんハート
しかし、テギョン熱は収まらずですハート

また、ここへなかなかインできておらず、色々本当にすみませんくま
再度、申請等していただければ、喜んで承認致しますm(__)m
ただ、大した文章でもありませんので、そこも大変申し訳がなく思いますくま

まだまだ寒い日が続きますが、またお会いできる日まで、どうか皆様お体に気を付けて下さい。

こんにちは!お久しぶりですくま

スーパームーンと普通の満月の違いが全く分からなかったチョコですクマ
みな様はどうだったでしょうか??

今回は何となく涼しくなって、何となくほんの少し悲しいお話を読みたくなりました。いつものほのぼのじゃなくてごめんなさいくま 

そして、本編も更新せぬまま、こうしてまた短編を書いてしまうことをお許し下さいくま


──────


事務所からの帰り道。

その日は、俺とミナムだけだった。それに、見上げた空には美しい満月。
なんだか歩きたくなって、二人で散歩して帰ろうと誘った。

ミナムはいつもよりも饒舌だった。それに気を良くした俺は、合宿所からは遠く離れた場所まで足をのばしてしまった。

少し浮かれていたのだ。

歩き始めてから1時間は経ったであろうか、肌寒い風に身震いをしたその時、隣のミナムも同じように肩を震わせた。

寒いのか?などとのんきに思い、声を掛けようとしたのだが、どうも様子がおかしい。固まって動かないばかりか、嬉しいのか困っているのか、妙に複雑な表情を浮かべているのだ。

そして、その視線の先を辿ると、同世代くらいの若い男がこちらを凝視していた。

スラリとした身体にはエプロン、そして手には小さな花束を持っている。暗闇のおかげで顔までは見えない。それでも、きっと自分とは違って溌剌とした健康な人生を送ってきたであろう、明るい雰囲気が漂っている。

「スンギさん…。」

小さな声でミナムが呟いた。その声は、普段ミナムであることを強制されているそれではなく、間違いなくミニョであった。

俺は、どうしていいのか分からなくなって、そのまま無言でいるしかできない。いや、どうもしなくてよいのだが、何かを止めなくてはと、焦っているのだ。

そうしているうちに、そのスンギさんが、少しづつ少しづつ俺とミナムの空間に近づいてくる。
それはまるでホラー映画を見ているような感覚で、俺の恐怖心を煽った。

衝動的に、ミナムの手を取ってその場から逃げ出してしまいたかった。でも、高揚しているミナムを見ると、とてもそんな惨いことはできなかった。

「ミニョちゃん…だよね??」

戸惑いがちで優しい声。

せっかくの暗闇だったのに、この距離では、その人物の顔が見えてしまう。
彼は、童顔だが万人受けする整った顔立ちで期待を裏切らない好青年だった。

ミナムはとても悲しそうだ。

ミニョはミナムであり、嬉しくて飛びつきたいのを必死でこらえているのだから。

それに、ミナムとミニョの違いをこの暗闇の中で、迷うことなく言い当てる彼は、相当に親しい間柄であったのだろう。

そこまで考えて、俺はミナムの体を前に押し出した。

「ミニョ。大丈夫だから。」

俺の笑顔が不自然だったのか、ミナムの表情が曇ったように見える。

「ドンジュンの時はあんなに怒っていたではないですか…。」

「今はMV撮影中ではない。」

それだけ言い捨てると、俺は二人から離れた。

振り返りたかったが、そうしてしまうと、ミナムを連れて帰りたくなるから必死で我慢した。

あのMV撮影の時と、今の俺は決定的に変わってしまったのだ。

ミナムと彼を見ない代わりに、もう一度空を見上げた。

さっきまではあんなに美しく空を彩っていた月が、すっかり姿を消していた。
これから雨になるのか、それとも俺の目に月が映らなくなってしまったのか。

涙などは出ないが、心が軋む音が聞こえてくるようだ。

彼に嫉妬しているだけではない。ミナムの大切な時間を奪ってしまっていること、そして、俺のような人間の傍で苦労させていることへの罪悪感。

ミナムはミニョとして、彼でもドンジュンでもいい。とにかく幸せになれたはずだったのに。

俺という闇の気持ちを知ってしまうと、情の深さゆえに、放っておけなくなるのではないか。そして、闇は簡単に光を飲み込んでしまうだろう。

そこまで考えて、少し笑いが込み上げてきた。

考え過ぎだ。

本物のミナムさえ帰ってきたら、ミニョは闇のことなど忘れて、また明るい道を歩み始めるだろう。それでいいのだ。それがいいのだ。

この傷が最小限で治まるように、またいつものように心を閉ざせばいい。月があまりに美しかったから、開放的になってしまっただけなのだから。

気がつけば、辺りは何もない住宅街であった。

ホラー映画の結末であれば、ミナムが来て俺を助けてくれるのに。いや、何者かにここまで追い込まれて殺される頃かな。

俺は殺される前に逃げ出すことに決め、スマホを取り出しタクシーを呼んだ。

ミナムには彼がいるから大丈夫なはず。

遠くから、「テギョンさーん!待って下さいよー!!」と、聞こえてきたが、その声に振り向くと、また何かが自分の中で始まってしまう気がして、怖くてたまらない。

「スンギさんは、修道院でお世話になっていたお花屋さんなんです!!テギョンさーん!」

特にホッとなどはしなかった。それが良いことなのか悪いことなのか…。

以前の味気ないが寂しさの中に漂っていられた生活と、安心感や喜びを知ってしまった引き換えに、何倍もの寂しさや孤独を感じてしまう今と。どちらを選ぶべきなのか。

タクシーが到着して、俺が乗り込むと、ミナムも滑り込むように隣に座った。

「間に合ってよかったーーー。」

と、息を切らせているミナムは、今、幸せだろうか。それとも…。

俺は窓の外に、また突如として姿を現した月を目にして、途方に暮れていた。

前進も後退も、停止するのも、結果が分からないのなら、その先を見てみたい気もする。でも、その振り幅に俺は耐えられるだろうか。

隣のミナムは、俺が怒っていると思ってシュンとしている。

このままどこか遠くへ行けたら。ミナムと一緒に。

もうじき本物のミナムが帰ってくる。俺はこんなにも追い込まれていたのだな。

居心地の良い暗闇から抜け出す準備はできていると思っていたのに。




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読んで下さってありがとうございますお星様
今回は暗くてすみませんくま
テギョンは幸せに慣れていないから、こんな風な葛藤もあったのではないかと妄想しました。

スンギさんは、『僕の彼女はクミホ』を見て大好きになったイ・スンギさんですクマ

これから夏の疲れが出てくる頃だと思います。ご無理などなさらないよう、ご自愛ください。