半熟温泉 -4ページ目

半熟温泉

27歳、癌告知。
自身の闘病の記録。


「終わりましたよ~」




遠いような近いような場所から
誰かの声がする。


その言葉で意識が戻る。



ああ、終わったんだ。


今どんな姿をしてるんだろう、自分。




目を開けてクラクラしたら嫌だな。

まだ眠いしもう少しこのまま目を閉じて
いよう。


私は看護師さんらしき人の言葉に頷いた。

とりあえず起きてますよー目ぇ覚ましましたよーの意思表示。


すると、

「おおっ頷いた!!」と旦那の驚嘆する声。


んな驚かんでも。




ストレッチャーに乗せられて移動しているのが朧気にわかる。


やがて部屋に着いたようで、私の体はずるりと滑り込むようにベッドに移された。


なんやかんや看護師さんと親たちが話す声。


「お腹へこんだよ」

父らしき人の声。(←後日聞いてみると
そんなこと言ったっけわんわん?と父。
え、じゃあ誰だったんだ)


マジすか。
早く見たいような怖いような。


そのうち看護師さんたちが去り、

「まだまだ眠いだろうからゆっくり寝かせて
あげてね」
と母が旦那に言い両親も部屋を出て行った。



さーてもう一眠りするか ォャスミィィ(-∀-*)zzZZ


と思いきや、私の右手を握る旦那。


何だよ。

どんな顔しているかわからないけどさ。



実は今月はじめ、私と旦那は両方の親を
巻き込んでの大喧嘩をしている。

修羅場というやつだ。


今回の病気を機に、結婚してから今まで
ずっと旦那に対して我慢してきたものが
爆発したのだ。

もちろん私にも非はある。

自分ばかりが被害者面するつもりはない。

旦那が怒って当然という行為を幾度か
やらかしてきた。


だがそれと引き換えても旦那の私への態度は
あまりにひどかった。

自分本位で身勝手。

妊娠中も本当にひどいことをされた。

優しくなんてされなかった。


だけど喧嘩するのも面倒で疲れて、
自分が我慢すればいいんだと思うようにした。

我慢し続けた結果がこれだ。



旦那は今何を思っているんだろう。

少しは後悔の念に苛まされているのだろうか。




ま、悪いが私はもう少し休ませてもらうよ。


ところが

私が「うーん…」と小さく唸るたび

「えっなになに!!?どした??」
と食いついてくる旦那。

同時にBボタンを連打するかのように
私の右の手のひらをプッシュプッシュ
猛プッシュ!!


う、うぜえ。


そんなやりとりが何度も続き、


うるせぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!
  
   (#`Д´)ノノ┻┻


と一喝してやりたくなった。

しかしあいにくそんな気力も体力もあらず。

うちの母が「寝かせてあげて」って言ったの
聞いてなかったのかよ!!

おかげでなかなか寝付けなかった。




どれほど時間が経ったのか、

そのうち看護師さんが来た。

旦那と何か話している。


そろそろ起きてみるかな…とゆっくり
薄目をあける。

旦那「あ、起きた!!」


ええまあ。起きましたよ。

寝付くの大変でしたよ。

だが敢えて文句は言わないことにした。


窓際にソファの置かれた個室。

それほど広さはない。

そーえば術後1日は特別料金かからずに
個室に入れてもらえるって言ってたっけ。


時間を聞くとすでに16時を過ぎていた。

手術は予定通り4時間で終わったとのこと。


ふと足元を見ると両足がくるくると
何かに巻かれて固定されていた。

その先には物々しい機械。

ウィンウィンと小さく唸りを上げている。

今日は体を動かせないので、エコノミークラス症候群を防止するための装置とのこと。

口には酸素マスク。

今日はつけてないとだめらしい。

逆に苦しいんですけどコレ。

そして膀胱に違和感。

やはりトイレに行けないため尿管が
通されている。

何というか、常にトイレに行きたいような
変な感覚。

でもこれをつけてる限りは漏らすことは
ないのよね… (=ω=ο)


さらに喉の痛み。

管が入っていたような感覚がある。

この違和感はまだしばらくは続くという。


もう違和感だらけ。

改造人間にでもなった気分だ。

人造人間なら18号が好き♡




途端に咳の発作に襲われる ( ´Д` )ゴホォ

くそぉ、イソジンパワーが足りなかったか。

麻酔が効いているためか、幸い傷口には
響かない。良かった。

その代わり切れた時がめっちゃ怖いよ (。´Д⊂)


茶、茶をくれえと言いたいところだが
明日まで飲食禁止だった。

辛いので看護師さんが何度か
うがいをさせてくれた。

氷水がわずかに喉を潤す。

まさにオアシス。



やがて、じゃあうがいは旦那さんにやって
もらえそうですね~と看護師さんが去って
いった。




2人になる。


他愛のない会話。

私は旦那が切り出すまで手術の結果は
尋ねなかった。


しばらくして旦那はおもむろに語り出す。

「手術は…結果としては癌細胞は見つから
なかったよ。だから片方の卵巣と子宮は
そのまま」



そっか。


うまく反応ができない。

まだ実感がないからだ。

だけど私の胸に漂うのは少なくとも
絶望感ではない。



「でも」と旦那。


「摘出したのは左のほう。開けてみたら
左のほうが腫れてたらしい」


え?


「そうなの?」

としか言いようがない。

どういうことなんだか。


ちなみに手術中、私の腹から抜き出た腹水の
量は6リットルに及んだらしい。

先生もびっくりだとか。

私としては多いのかどうなのかわからないが
2リットルのペットボトル3本分と考えると
まあ多いような気もしてきた。

相変わらず腹水からも癌細胞は見つからず。



じゃあ一体この病気は何なんだ?

安心していいのか?

油断禁物か?


とにかく、事前に聞いていた本格的な検査の
結果を待つのみ。

今できるのはそれだけだ。


旦那はこの日も面会終了時間まで過ごし
明日も来るねと私の実家に帰っていった。





ひとりになり、静かになる。

ああ夜が長いなあ。

途中途中、看護師さんが様子を見にやって
くる。

体調はまずまずだ。


ただ水分が…水分が欲しい。

手を伸ばせばミニ冷蔵庫にペットボトルたち
が佇んでいる。

「いつから飲み物飲んでも大丈夫ですか?
明日の朝?」

私の目がギラギラと(#゚Д゚)訴えているのを
察してくれたか

「そうですねー、明日までは…。まあでも
一口二口なら今飲んでもいいかな?」

いいんですか??

いいんですね!

じゃあ遠慮なく。

大きく二口。


わー生き返るー ♪──ヽ(*゚∀゚*)ノ──♪

五臓六腑に染み渡るとはこのことか。



しかし、ダメと言われるほどそうしたくなる
のが人間で

やめられない止まらない~♪の罠に見事
はまってしまうのが人の性。


夜中、看護師さんの目を盗んでは
結局ペットボトル半分ほどお茶を飲んで
しまった。

まあいっか。

気持ち的には満足よ
ヽ(●´3`)ノ゛ルンルン♪










その後、

私の腸は

ぐるぐるぐるぐる~
と活発な音を立てて鳴り響き
看護師さんに何度も簡易トイレを持ってきて
もらう羽目に。




完全に調子に乗りました。


自爆が多いんです、私 ( ´_ゝ`)



そんなこんなで夜は更けていった。