銀河鉄道の旅に出よう。

ちなみにこれは機関車ではない。

電車である。

こう言うとアレ?と思うだろう。

思うんだよ!思え!

 


これがD51なのは明らかだろ?

これは賢治と作者が違うからまだわかる。

だが本文を見よう。


「それにこの汽車石炭をたいていないねえ。」

ジョバンニが左手をつき出して

窓から前の方を見ながら云いました。
「アルコールか電気だろう。」

カムパネルラが云いました。


宮沢賢治が『銀河鉄道の夜』を書いた時期は、
1924年から1931年頃とされている。
彼がモチーフにした鉄道は
岩手軽便鉄道といわれており、
本文にも「軽便鉄道」の記述がある。
また、彼は『岩手軽便鉄道の一月』
という詩も残している。
1924年に電車なんかあるか?
多くの人がそう思うだろう。
てことで、
通説ではディーゼル機関車とされてきた。

これにより1930年代から

電気式ディーゼル機関車が米国などで本格的に実用化された[1]


しかし執筆時に実現してないものを書くだろうか?
でも電気はもっとありえないだろ?


1923年(大正12年)8月に
傍系の盛岡電気工業(後の東北配電東北電力))が
釜石方面への電力事業を開始したのに合わせて
電動機駆動に更新されている。
この索道では貨物・郵便物・新聞などが輸送された。


銀河鉄道のモデルとされる岩手軽便鉄道には
電車があった。時期は執筆開始の前年。
つまり、銀河鉄道は電車である。
だいたいアルコールとディーゼルは違うだろうが。
しかも賢治は「春と修羅」にこう書いてある。

わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です


確実に電気を知ってたってこと。
では旅に出よう!

あっれ〜 
そこに行くと部品にされちゃうんじゃ?

「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」
 ジョバンニが云いました。
「銀河ステーションで、もらったんだ。
君もらわなかったの。」
「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。
いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」
 ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北をしました。


はくちょう座

俗に北十時と呼ばれる。

夏の星を探すならまずこれを探すといい。

ちょうど真上からやや北側にいる。

重要なのはデネブ。典型的な白い星。

尾羽の星である。

質量で太陽の15倍、半径は108倍、

光度も太陽の54,400倍以上と、

恒星としては非常に大きくて明るい白色超巨星である。

同じく夏の大三角を形成するベガやアルタイルは、

質量や半径が太陽の2~3倍程度、

光度も太陽のせいぜい数十倍程度であり、

夏の大三角の中ではデネブだけが突出している。


「まあ、あの烏。」カムパネルラのとなりの

かおると呼ばれた女の子が叫びました。

「からすでない。みんなかささぎだ。」

カムパネルラがまた何気なく

叱るように叫びましたので、

ジョバンニはまた思わず笑い、

女の子はきまり悪そうにしました。

まったく河原の青じろいあかりの上に、

黒い鳥がたくさんたくさん

いっぱいに列になってとまって

じっと川の微光を受けているのでした。


天の川で隔てられた
織女星(ベガ)と牽牛星(アルタイル)の間に
一年に一度だけカササギの橋がかかると言う。
そう、ここは七夕伝説から引用されている。

ちなみにこのようになる季節は7月7日ではない。

太陰暦だから旧暦の七月七日である。

つまり銀河鉄道の夜は8月後半の物語だ。

2023年8月22日
2024年8月10日
2025年8月29日


ベガ(こと座)

ほとんど真上、高度89°にある。

七夕とは水桶を置き、

ベガが映り込む(=真上にきた)とき

機織りや字が上手くなりますように、と

お願いする儀式だった。

いつからか「金持ちになれますように」とか書いた札をぶら下げるようになった。

しかし幼稚園児よ。謎の古代文字を書くな

それでは願いも叶えられないぞ。



天の川を挟んで反対にあるのがアルタイルである。

はくちょう座と間違えやすいが、

こちらは十字ではなく矢印になっている。

急降下で降りていく姿になっている。

これら三つの星座の一等星をまとめて

夏の大三角形という。


星の色は温度であり、

ベガアルタイルは明るさと温度がほぼ並ぶ。

だいたい白い。

こういうラインになるのを主系列星という。

デネブはここから外れていて青白い星である。


一人のインデアンが白い鳥の羽根を頭につけ

たくさんの石を腕と胸にかざり

小さな弓に矢を番えて一目散に汽車を追って来るのでした。

「あら、インデアンですよ。インデアンですよ。

ごらんなさい。」


唐突なインディアン。意味がある。

インディアン座という。南半球でしか見られない。


「あれきっと双子のお星さまのお宮だよ。」

男の子がいきなり窓の外をさして叫びました。

 右手の低い丘の上に小さな水晶ででも

こさえたような二つのお宮がならんで立っていました。

「双子のお星さまのお宮って何だい。」


ふたご座、冬の星座である。

あれは何の火だろう。

あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」

ジョバンニが云いました。

「蠍の火だな。」カムパネルラが

地図と首っ引きして答えました。

「あら、蝎の火のことならあたし知ってるわ。」

「蝎の火ってなんだい。」ジョバンニがききました。

「蝎がやけて死んだのよ。

その火がいまでも燃えてるって

あたし何べんもお父さんから聴いたわ。」


夏の空、地平線近くにさそり座はある。
赤色超巨星、アンタレス。


いよいよ地平線を下ろうとしている。、


「ボール投げなら僕決してはずさない。」

 男の子が大威張りで云いました。

「もうじきサウザンクロスです。

おりる支度をして下さい。」

青年がみんなに云いました。


終点はサザンクロス。
旅ははくちょう座の北十字から南十字星である。

「あ、あすこ石炭袋だよ。そらの孔だよ。」

カムパネルラが少しそっちを避けるようにしながら

天の川のひととこを指さしました。

ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。

天の川の一とこに大きなまっくらな孔が

ほんとあいているのです。


コールサックCaldwell 99)は、

みなみじゅうじ座付近に見ることができる

全天で最も目立つ暗黒星雲[3]

天の川を背景として肉眼でもシルエットを確認することができる。



こうして、南十時星に着く前に
カムパネルラは消えていた。
ジョバンニは泣いて目を覚ました。
その晩、カムパネルラは死んでいた。

賢治が眺めていた星座早見は

当時の日本にこれしかなかったので

特定されている。

ちなみに星座早見盤は商標なので、

プロはをつけない。

ホチキスではなくステープラー。

星座早見が正式名称である。



いかがだったろうか、幻想の旅は。