キャベツは1枚づつ剥がして調理する。
切られたものよりも、丸ごと1玉購入するのは量のこともあるが、
切った断面から痛みも早く保存しづらくなるからだ。
1回あたりの消費量が少ない私などは、剥がした葉を1~2枚調理する方法が
ベストだと言えよう。
近頃、春を旬とする野菜が出回り始めており、美味しいのは判っているが
初物価格ゆえに、お値段を見て断念することが多い。
そんな中、春野菜たちを我々庶民に味わわせてあげましょうよと、
大変ありがたい心遣いのチラシがポスティングされていた。
普段は少しお高い価格で、安全安心な食材を提供している近所のスーパーから届いた、
2色刷りのお便りには、恋文にも似た甘いうたい文句やキャッチコピーもほどこされ、
一気にフォーリンラブである。
恋文を握りしめた淑女たち、そして紳士たちで店内は大賑わいだ。
価格もそうだが、売り切れ御免の表示効果が利いたようで、山積みにされた春キャベツには、
群がる淑女たちで鉄壁ができていた。
長年の経験を活かし、鋭い眼力で品定めされた春キャベツたちが、
一玉、また一玉と淑女たちの買物かごへ入れられてゆく。
少々焦りつつも牙城を崩すべく、群がる淑女たちの間から手を差し入れて、むんずと一玉掴んだ。
春キャベツは、外側の葉が少し開いた形状をしており、片手だけでは少々掴み辛いが、
柔らかく甘味を感じられるこの時期を逃すまいと、ぐいぐい鉄壁の中へと入り込んだ。
これか、それともこれなのかと葉の艶や重量などを見極めが、
結局最初に掴んだものが最良であると判断し、長蛇の列を経て購入。
我が家へ連れ帰った。
夕飯の支度に取りかかり、早速食べる分量として春キャベツの外側2枚を剥がすと、
間から何かが飛び出し、キッチンマットの上に着地した。
ひっ、虫が出た。
そう認識するのが早いか、飛び退くのが早いか、とにかく落ちたものから距離を取り、
襲って来ないか警戒するも、その物体が友好的であることをすぐに悟った。
コロリと落ちたのはキラリと光る50円玉だった。
ガレット・デ・ロワのキャベツ版だとすれば、木枯らし吹く我が懐もあったまりそうだ。
