空港は国の玄関のようなもの | 昼寝をしないと 夜も落ち/\眠れない

昼寝をしないと 夜も落ち/\眠れない

おじょぉ の詭弁に満ちた日々

機内では映画と睡眠を堪能したいので、配られた申告書を記入する余裕が無い。

入国審査後の税関に設置してある申告書へ記入すればよいので、慌てず騒がず映画を3本見て、
大いに笑い号泣して鼻水をすすり、隣席に座る客からの視線をチラチラ受けて立つなどして、
快適な空の旅とやらを機内食、おやつやジュースなどで腹を満たして過ごした。

到着後、コンベアを流れる大きめのバックパックを無事に発見して、
旅の思い出がたくさん詰まった我が荷を背負う。

空港というのは不思議なもので、その国々独特の香りがする。
レストランや売店、どこにでもあるチェーン店の香りに混じり、
国民食が売られているからなのだろうが、瞬時に異国を感じさせてくれる。

慣れてしまうと香りの特徴には気付きにくいものだが、空港に降り立ったばかりというのは
妙に鼻が敏感になっているらしく、この違いに気がつくのだ。

日本の空港では醤油の香りがするなどとよく聞くのだが、今回は漬物のような香りがしている。
少々癖はあるが、なんとも日本らしい香りだ。

入国審査をするりと経て、税関へ。
税関職員が立ちはだかる手前に、スタンディングスタイルで記入するテーブルが
用意されており、機内をくつろぎ空間として堪能した客たちが、
こちらで申告書にペンを走らせて項目をうめてゆく。

私も同じくくつろいでいたものだから、ここで書かずには入国ができない。
それではと背負っていたバックパックを降ろし、ペンを探しながらも、
入国審査ゲート以前から、過剰に日本アピールをしてくる臭いに少々嫌気がさしてきた。


機内食も充分過ぎる程食べたので空腹という訳ではないのだが、漬物の香りは付かず離れず、
薄くなることも濃くなることもない。
飲食店はまだ先のはずなのに、臭いはどこまでもついて来ているようだ。

違和感は徐々に増してゆき、なにか事件的な要素をはらんでいそうな緊張感と、
ドラマで培った刑事の感が働き、注意深く周りを見回してみた。

みなさん旅の疲れよりも、素敵な思い出にふける顔でにこやかに税関を通過している。
それほど気にならない、ということだろうか。
そうであるなら私も過剰になることはないのかもしれないなと思い直し、申告書の記入を始めた。

搭乗券とパスポートを取り出して、なんども見比べながら間違いがないよう
注意深く数字を書き込んでいると、職員に連れられた麻薬探知犬が、
私をめがけて迷いも無く近づいてくる。

足下に置いた大きなバックパックにかなり興味津々な様子で、熱心に嗅いでいる。

知らぬ間に麻薬の運び屋になってしまう犯罪話もよく耳にするが、
まさか私のバックパックには入れないでしょう。
いやいや、そんな。

犬の嗅覚捜査はしばらく続き、急激な不安に襲われ始めて申告書を書く手が固まったその時、
麻薬探知犬はペロりと舌なめずりをして、なにごとも無かったように去っていった。

無事に税関を通った後、ロビーでバックパックを開けてみると、かなり強烈な漬物臭が。

なにがどうしたのかと恐ろしくなりつつも、麻薬ではないことは証明されているので、
安堵して中を覗くと、無造作に入れた土産のチーズたちが、気圧の関係なのだろうか、
上空で過剰発酵した臭いだったのだ。

犬にとっては、職務を一瞬忘れそうになるほどの美味そうなチーズの臭を背負い、
悪臭の運び屋は家路へと急いだ。