水切り現象は、科学的に解明しようとすると、実にやっかいな問題です。個体、液体、気体と性質の違う物質が、相互に影響し合う複雑な流体現象だからです。私は遊びとして水切りを考えてきましたが、科学的な好奇心も捨てきれません。

水切りは、あることが間違いないと思っても、３つの物質が相互に影響しあっていますから、一つでも条件が違えば、正解も変わってしまうのです。

先日、地方のテレビ局から問い合わせがありました。水切り石に撥水スプレーを使った場合の効果について感想を求められたのです。私も興味はありましたが、撥水性は、小さな水滴に対して影響を与えるわけですが、水切りの場合は、石の比重や形の影響の方がはるかに大きいと思うので、あまり深くは考えていませんでした。しかし、撥水性も、形との組み合わせで、意外な結果が出る可能性はあるかも知れません。水と石の間にできる泡の問題と何らかの形で関係する可能性も捨て切れないと答えるのが精一杯でした。

水は、石のスピードが早いと、石が割れるほどほど硬く振舞います。それは、石が水から離れる時にも粘着性として強く現れます。石屋さんで作った真っ平らな石は、水から離れる時、この影響を強く受けやすく、水離れが悪くなり、予想外の動きをして、水切りは失敗に終わります。この石の水離れについては、ほとんど研究されていません。水の粘着性も水切り現象に複雑に関わり合っているのは確かですが、以前にも書いた通り、全ては経験によるもので科学とは言えず、勘と想像の域を出ていないのです。

実際の水切りでは、たくさん跳ねさせるためには石のスピードによって石の形や比重を変えなければならないという問題になります。そこが水切り遊びの面白いところで、人によって最適な石が変わるということです。そこに自分に合った自然石との出会いがあり、水切り石のロマンがあると私は思うのです。

4９. 水切り遊びと水切りの科学