これほど皆様の評判が悪かったお話はありません。私は、大変よく書けたと思っていたんですが。とほほ・・。

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平賀源内『屁男の話』

今日、お昼寝をしようと思いまして、

枕に棚の本を３、４冊、頭の下にすけたのですが、

その中に、「平賀源内」の本がありました。

「こんなの読んだっけかなあ。」と思って、

ぱらぱらとめくってみました。

すると、ああ、読んだかも、とあるお話を思い出しました。

このブログとは、全く無縁のお話で、恐縮至極でありますが、覚えているお話を、思い出しながら、綴らせてくださいませ。

＊

平賀源内とは、エレキテルなどを披露して、人々を驚かせた、江戸後期の博学者でしょうか。

日本のダヴィンチという人もいますとか。

源内先生のところには、いつも５、６人の若い書生がいます。

ある日、書生の池田が、急いでやってきました。

池田「先生、桜並木に、けしからぬ男を見ました。」

みんなが集まってくる。

源内「どんな奴かい？」

池田「それが、人を集め、その前で、きたねえケツを見せて、　屁をひるんです。で、器用にも、屁の音をいろいろにひり分けます。『次は、ヒヨコでござい。』などと言い、屁を、ぴよぴよぴよとひってみせる。」

みんなは、あははははと笑います。

池田「先生、これで、５銭、１０銭と金を集めているんです。先生、こんな芸が許されていいのでしょうか。」

木下「屁で金をとるとは、まっこと許せませんな。」

太田「下品にもほどがあります。」

源内「何事も見てみねーと、わかんねーな。

　　　花見がてら、みんなで、屁男を見に行こうじゃないか。」

こうして、行ってみますと、屁男は、えらい人気で、ちょっとした人だかりです。１つ終わると、見物人が、金を置いていく。

屁男「へーい、次で、お仕舞めーだ。一世一代の『鶯の谷渡り～』

ピ、ピ、ピ、ピュル、ピュル、ピュル、ピ～～～～～～。

見物人は、大笑いで拍手喝さい。

みんな、小銭を置いていく。

源内先生一行は、近くで団子を食べながら、

源内「みんな、どうだった？」

Ａ「けしかりません。人前で、きたねえケツをさらし、

　　屁をするとは。」

Ｂ「いかにも。不届き千万、下劣な奴です。」

とみんなは、散々に屁男をけなします。

そこで、源内先生は、口を開きます。

源内

「まあ、俺の話を聞いてからにしねえ。

　人間の体は、いろいろなものからできているが、

　それぞれ、身分というものがある。

　最も身分の高きは、さしずめ、」

Ｃ「脳ですか。」

源内「だろうな。次は。」

Ｄ「心の臓でしょ。」

源内「ああ、これも身分が高いな。」

それから、皆は、胃だの腸だの手だの足だの言って行き、

Ａ「先生、身分の一番低いのは、なんですか。」

源内「俺は、これは、不当と思っているが、世間は、

　　『糞、尿』の類と言うだろうな。」

みんな「そうですね。」

源内「俺が、不当と思うのは、考えてみねえ。糞尿は、肥やしとなり、田畑に撒かれ、立派な米をつくり、野菜、果物を育てる。

　　　言わば、人間に計り知れぬ恩恵をもたらしている。

　　　糞尿を蔑むは、全くもって、不当とは、思わねーか。」

みんな「なるほど。糞尿の身分をもっと上げねばなりませんな。」

源内「ところが、糞尿より蔑まれているものが、一つある。」

みんな「え？もう、みんな出ましたよ。」

源内「屁を忘れてねーか。」

みんな「あーあ。」

源内「人体において、屁ほど役に立たないものはない。

　　　プッなど音をたてて、婦人を恥ずかしく思わせ、

臭いにおいを辺りに広め、

　　　皆を不愉快にさせる。それほどの罪を犯しながら、

　　　償いをするかと思えば、やがて消えて、ひり逃げである。屁こそ、なんの役にも立たず、みんなに忌み嫌われ、最下位にふさわしいものはない。

　　　ところがだ。あの屁男は、その卑しき屁を元手に、

　　　芸を極め、立派に身を立てている。

　　　これを、天晴見事とは、思わねーか？」

みんなは、腕を組み、深くうなずきます。

Ａ「考えてみれば、屁を元手にしようという発想が、すごいですね。」

Ｂ「さすが、先生。人を見る目が違いますね。」

源内「じゃあ、団子を食ったら、もう一度、屁男を見に行こう。今度は、銭を置こう。」

みんな「賛成です。」

こうして、源内先生によって、屁の身分は、

２階級ほど、上がったのでした。

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