今年度の5社の歴史教科書を読み比べて(その1) | そそっぱい おじんつぁん

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多くの分野について、「あまり聞いたことがない考え方だが、なるほど 」と思われるような記事を少しづつ書いて行きたい。

私は、「家永裁判」や「新しい歴史教科書をつくる会」などが話題になってから、日本の歴史教科書に関心を持っている。

 

そして、歴史教科書は、時代を担う生徒たちに「日本に対する誇りと愛情を育む」ものでなければならないと思っている。

 

もちろん歴史教科書だから史実に基づく内容でなければならないが、史実にはネガティブな史実もあればポジティブな史実もある。

もしもネガティブな史実に偏った内容であれば、日本に誇りも愛情も持てないであろう。

かと言って、ポジティブな内容に偏るのもフェアではない。

 

外国から「ファンタジーの歴史教科書」と揶揄される韓国や中国の教科書のように、誇張や嘘の歴史を教えて愛国心や反日心を植え付けるのは言語道断だ。

 

私は、世界が日本を見る目は、韓国と中国を除けば、おおむね好意的であると理解している。

つまり、日本の歴史教科書は、史実を素直にバランスよく記述していけば自然と「日本に誇りと愛情が持てる」内容の教科書になると信じる。

 

逆に言えば、韓国や中国の主張とどのように似通っているかが、教科書の偏りのバロメーターにもなると考えている。

 

私は、それらの偏りは、リベラルか保守かの左右の思想と相関していると思っており、先日、今年度の中学校の教科書検定に合格した次の5社の日本史の歴史教科書を購入してみた。

 

各社の教科書の内容にどのような違いがあるかを読んで、それらを確かめてみたいと思ったからだ。

 

・学び舎:「ともに学ぶ人間の歴史」(もっともリベラル系)
・東京書籍:「新しい社会 歴史」(毎年度採択率が最大)
・育鵬社:「新しい日本の歴史」(保守系、新しい歴史教科書をつくる会から分派)
・自由社:「新しい歴史教科書」(保守系、新しい歴史教科書をつくる会)
・令和書籍:「国史 教科書」(もっとも保守系、明治天皇の玄孫の竹田恒泰氏が編纂)

まだ読み始めたばかりだが、教科書によって内容にあまりにも差があるので愕然としている。



ちなみに、リベラル系の「学び舎」と保守系の「令和書籍」の両極の歴史教科書を 日本の古代史の記述内容で紹介してみよう。

最初に言ってしまうと、「学び舎」の歴史教科書は「この教科書で学んだ生徒は、日本が嫌いになり、とても日本人としての誇りは持てないであろう」というのが 私の率直な感想だ。

何かと朝鮮や中国から伝わったことを強調しているし、日本についてのネガティブな記述に偏りすぎているからだ。

 

たとえば、日本で発掘された遺物の中には世界最古の道具などがあるのに 遺物は紹介しても世界最古であることを紹介しないので、世界のはずれに位置する日本の古代は 何となく世界から立ち遅れていたと思わされてしまう。

 

稲作は むかしの教科書と同じく 朝鮮から渡ってきたように読める。


日本の神話についての内容はほとんどゼロだし、日本書紀や古事記の中身の記述もない。
当然、神武天皇は出てこないので 生徒は祝日の「建国記念日」の由来も理解できないであろう。

だから、もちろん 日本が現存する世界最長の国家であることも説明していない。

百済からの要請で日本が朝鮮半島に出兵して敗北したことばかりが書いてあって、日本が朝鮮南部を支配していて「任那府」があったという記述はない。

この教科書は、随所で日本を自ら ”倭国”,”倭国” と蔑称で呼んでいるので「祖国に誇りと尊敬の念がないのか?!」と言いたくなる。ひどく不愉快だ。

聖徳太子を厩戸皇子と称して僅か2行しか紹介せず、十七条憲法についてはもちろん 隋の皇帝への「天皇」の国書の話もない。

私の孫には、こんな教科書では絶対に学ばせたくない!


これと対照的なのが、「令和書籍」の歴史教科書だ。


この教科書は 4年に1回の教科書検定で過去4回不合格だったが、ご存知のように今年度はじめて合格して話題になった。


私も過去の不合格は知っていたが、読みもせずに「旧皇族かなにか知らないが素人の著者が作った歴史教科書で ひやかし半分の検定申請か?」と正直思っていた。

しかし、今回の検定の合格本を手にして、読み始めたばかりだが、本当にびっくりした。

私の不勉強を執筆者の竹田恒泰氏に謝りたい。


この教科書で学べば、生徒は日本を愛し 日本に誇りを持つようになるに違いない。

 

百田尚樹氏の「日本国紀」を教科書にしたような感じだ。

読むだけでも本当に面白い。

特に、他の教科書には見られない最新の学説をふんだんに取り上げていることに感心させられる。

そして それらは 私の前回のブログで紹介した長浜浩明氏の著書の内容と驚くほど一致している。


よくもまあ 教科書検定委員を説得できたものだ。

たとえば、アフリカで生まれたホモサピエンスがヨーロッパとアジアに散らばって日本にたどりつくまでの様子を説明し、猿人から新人までの進化については 通説とともに最新の学説による異論をも紹介している。


石器や土器については、単にその発生年代を記述するのではなく、日本の磨製石器や土器が世界最古であることを紹介し、他の国の出土品との比較では地層だけでなく放射性炭素年代測定法で判定したことまで説明しているのは恐れ入る。

稲作については、われわれが教わった朝鮮半島から伝わったという学説とともに、DNA分析の結果で 朝鮮半島を経由せずに大陸から直接伝わってきたという学説も載せて強調している。


そしてまた、長い間 力説されてきた朝鮮半島からの大量の渡来人が縄文人と混血して弥生人になったという説を否定しているのには脱帽だ。

 

教科書検定委員の気持ちは正直どんなだったろう?

四世紀の朝鮮半島の記述では、好太王碑文や日本書紀や魏志韓伝の記述と前方後円墳の存在などから、任那の日本府などで朝鮮半島南部を大和朝廷が支配していたことを紹介する一方、現在はその説に疑義を唱える学説の方が主力であることも公平に紹介している。

この教科書の極めて特徴的なことは、日本書紀や古事記そして日本の神話を詳しく紹介していることだ。
われわれの世代は、学校で日本の神話を全く教わらなかったので、むしろギリシャ神話の方が詳しいくらいになってしまったが、この教科書により 生徒は興味深く しかも楽しく日本の神話が学べるであろう。


随所で日本書紀と古事記の原文(読み下し文)と現代語訳を併記して紹介しており、記紀の編纂の目的や両者の内容の微妙な差までも解説しているのには驚く。

そして何より、神話は史実でないと単純に否定するのではなく、史実を想起させる内容も含んでおり、さらに当時の人々の心が反映されていることを強調している。

当然ながら、神武天皇についても詳述しており、神武東征や建国の期日についても説明しているので、生徒は初めて「建国記念日」の祝日の由来が理解できるであろう。

 

また この教科書は、最初の頁で「日本が現存する世界最長の国家」であることを他国との比較で丁寧に解説している。

生徒は、これだけでも日本に誇りを持つのではないか?

聖徳太子については数頁もさいており、その生い立ちと業績を詳しく紹介している。
とくに十七条憲法による今の日本人の心に続く「和の精神」と、隋の皇帝に宛てた国書で「天皇」の称号と隋との対等な外交関係を主張したことは、生徒の日本に対する誇りが増すであろう。

とは言うものの、この「令和書籍」の歴史教科書は、韓国と中国の猛反発を受け、日本のマスコミがそれに呼応し、政府は腰抜けで反論もせず、無駄に存在する教育委員会は左翼の日教組とリベラルばかりの中学校教員の反発を恐れ、マスコミはそのような状況はもちろん上記のような教科書の内容も報じないので、国民は何も知らないまま、結局は全国の採択率がゼロで終わるだろう。

 

どこかの中学校が一校でも この令和書籍の歴史教科書を採択したら奇跡だ。


以上、とりあえず 令和6年度の中学校の日本史の歴史教科書の検定に合格した5社の出版社の教科書のうち2社の教科書について、読み始めたばかりのごくごく一部の内容を紹介をしてみた。

今後、多少時間は掛かるかも知れないが、両教科書の読み比べの続きと、そのあと他の3社の歴史教科書を読み比べを行って、2,3回に分けて このブログで紹介してみたい。

 

(つづく)