痩せる原則


体重の増減は、食事から摂取したカロリーと消費したカロリーの差によって「ほぼ」決まります。


摂取カロリーの方が大きい場合、つまりカロリーを消費しきれなかった場合、余ったカロリーは体脂肪に変換されて体内に貯蔵されます。


消費カロリーの方が大きい場合、つまりカロリーが足りなかった場合、その足りない分は体脂肪を分解してエネルギーに変換するため体脂肪は減少します。


これが原則です。


わかりやすくお金に例えていうと、収入が支出よりも少ないのに貯金が貯まるはずがないのと同じです。


ここで「ほぼ」としているのは、同じカロリーを摂っていてもそれを消化吸収しやすい人、しにくい人といった個人差があるためですが、今回はあまり考慮せずに、原則に則って「痩せる」ための基本を学んでいただければ思います。


一部を除きほとんどの食品はカロリーを持ちます。カロリーは「エネルギー」と言い換えることもでき、体内で酵素の働きにより消化・吸収という手順を踏むと人間にとってのガソリンような働きを担います。


カロリーを持つ栄養素は大きく3つ、「タンパク質」「脂質」「炭水化物(糖質)」です。この3つは三大栄養素と呼ばれ、人の体に必要不可欠な栄養素であり、適切なバランスを保つように食事をすることが推奨されています。それぞれの頭文字をとって、「PFCバランス」とも呼ばれます。


後ほど、痩せる基本の3本柱の項目でより詳しく解説をしていきます。


ひとまず今のところは、摂取カロリーが消費カロリーを上回っていると、痩せることはほぼ不可能、という原則があり、痩せるためには接種カロリーを下げるか消費カロリーを上げるか、またはその両方を行う必要があるということを覚えてください。


その原則を無視して、「◯◯だけ」ダイエットのように、ある特定のエクササイズをするだけ、ある特定の食材を摂るだけ、もっと酷いものだと特定のサプリメントを摂るだけで痩せられるという広告や情報は、全て詐欺だと思った方が賢明です。


消費したカロリーが摂取カロリーを上回ることによって、初めて体脂肪が減ります。例外はあるかもしれませんが、例外になろうとせずに、例に倣って正しく行動しましょう。


ちなみに、体脂肪は(いずれ来るかもしれない飢餓対策の)エネルギーの保管庫ですが、どれだけのエネルギーが蓄えられているかご存知でしょうか?


答えは、約7,000kcalです。


成人男性の1日消費カロリーが2,000kcalだとして、3〜4日活動するためのエネルギーが蓄えられています。


摂取カロリーを今よりも下げるか、あるいは消費カロリーを今よりも何らかの方法で上げるか、またはその両方を行うことにより、200kcalのカロリーが不足している日々を35日間過ごすと、体脂肪が1kg減る計算になります。


もちろんこれは机上の空論であり、計算通りにいかない可能性もあります。しかし、目を瞑って当てずっぽうに石を投げるよりも、しっかりと的を狙って石を投げて、外れたならどれぐらい外れたのかを観察した方が成功する可能性が高まります。


ですから、ある程度計算しながら痩せる行動をとって行くことは重要です。


ということでまずは、自分が毎日どの程度カロリーを消費しているかを計算してみましょう。いくつかの計算式がありますが今回は最も簡易的な方法としてこちらを使用します。


体重(kg) ×25〜 30 = 1日の消費カロリー

※体重が70kgの場合は1,750〜2,100kcal


消費カロリーは基礎代謝と活動代謝によって求めることができます。そのため、実際には体重だけではなく、年齢や筋肉量、それから毎日の活動量や体温などによって変動はあります。それぞれに合わせて、25〜30の範囲内で設定してみましょう。


もっと正確に求めたい方はインターネットのサイトで調べてみるのも良いですが、どこまで行っても概算は概算なので、ひとまずざっくりとした「あたり」をつけて、とにかくダイエットをスタートした方が賢明です。


この「あたり」よりも多くカロリーを摂取していると体重が増えていき、少なく摂取している体重が減っていく、というシンプルな考えがダイエットの大前提であり、痩せる原則となります。



  痩せる基本の3本柱


消費カロリーが摂取カロリーを上回るようにすることが痩せるためには必要だということがご理解いただけたかと思います。


そこで次は、どのようにすればそれが実現可能かについて解説していきたいのですが、実際のところ3つしか方法がありません。食事・筋トレ・有酸素運動です。


食事のコントロールを行い摂取カロリーを適切な範囲内で下げるか、筋力トレーニングによって筋肉量を増やし基礎代謝を高めるか、有酸素運動によって活動代謝を高めるか、基本的にはこの3本柱となります。


逆を言えば、太る理由はこの3本柱が崩れているためです。昔と比べて筋肉量が減って基礎代謝は落ち、運動量が減って活動代謝が落ちているのに、摂取カロリーは変わらないかむしろ増えている、これではなかなか痩せません。


このうち、2つをハードに取り組むか、3つをほどほどに取り組むか、まずどちらにするかを選択しましょう。


なかには、


「1つではダメなの?あまり運動(あるいは食事のコントロール)はしたくないんだけど…」


という方もおられるかと思いますが、1つだけというのはオススメしません。もちろん、ひとまず1つから始めて徐々に2つ、3つと取り組んでいくのは良いと思います。


まず、食事のコントロールだけで痩せることは物理的には可能です。運動量などを変更せずに普通に暮らしていながら今よりも食事量だけ減らせばほぼ確実に痩せるでしょう。


ただし、それと同時に、ほぼ確実に筋肉量も減ります。そうしますと、大事な大事な基礎代謝が落ちてしまうため、同じ体重を維持するためにはより食事量を減らす必要があり、いわゆるリバウンドのリスクが高まります。


また、痩せる痩せない以前に、筋肉を減らすという行為は緩慢な自◯行為です。食事を減らすだけのダイエットは、止めましょう。


次に、筋力トレーニングのみで痩せようとしても、なかなか難しいと言えます。それは、筋力トレーニングによる消費カロリーをそれほど多くないためです。


Metsという「身体運動の単位×体重」によって消費カロリーを計算する式では、筋力トレーニングは「3.5」程度となっていて、これは「掃除機がけ(3.3)よりはやや高いものの、「早歩き(4.3)」よりも低い数値です。


また、一般的な筋力トレーニングは動いている時間よりもインターバルの方が長くなるため、思ったよりも消費カロリーを増やす効果は低いと言えます。


筋力トレーニングによって筋肉量が増えると、基礎代謝が高まることは確かですが、それもそこまで大きな数値ではありません。仮に純粋な筋肉量を1kg増やすことができたとして、その変化は約13kcalだと言われています。砂糖3gほどのカロリーです。また、成長期を過ぎた成人が、純粋な筋肉量を1kg増やすことは、なかなか大変なことです。


筋力トレーニングは痩せるため、というよりも、ダイエット中や痩せた後にも筋肉量=基礎代謝を維持するため、そして生涯にわたって活力を高めるために行う、と考えましょう。


そして最後に有酸素運動ですが、こちらは筋力トレーニングとは異なり、かなりの消費カロリーが期待できます。食事制限とはいかないまでも、現状の摂取カロリーが維持できれば体重を落とすことは可能です。


しかし、これはあまり知られていないかも知れませんが、有酸素運動には筋肉量を維持する効果が期待できません。それどころか、有酸素運動中は血中の糖、筋肉内のグリゴーゲン、体脂肪、それから筋肉を分解しながらエネルギーを生み出していくため、筋肉量を失うリスクも高まります。


そのため、食事管理によって摂取カロリーを制限した場合と同様、一時的に痩せることは可能であっても、その後リバウンドしやすい身体になってしまうリスクが高くなってしまいます。


これらの理由により、どれか1つの方法ではなく最低2つ、出来れば3つを組み合わせて痩せる方が好ましい、と言えるでしょう。


3つに分散した場合は1つ1つの内容は少しマイルドになりますが、2つに絞った場合はややハードな内容になります。具体的な内容をみていきましょう。



食事編に続く