平地GⅠ競走では木曜日に「調教後馬体重」(事前馬体重)が発表される。
この事前馬体重の持つ意味は相当怪しい。
まず統計的に検討してみる。
事前馬体重の発表が始まったのは試験施行された2008年函館記念から。
これ以降のデータから、事前馬体重と前出走時の増減(前日比)、事前馬体重の増減(当日比)の2つを、各出走馬の単勝人気順と着順の差(人気-着)と比べてみた。
前走が海外遠征など、馬体重の比較がつかないケースは除外し、事前馬体重と着順との相関関係を見てみると「全く無関係」と言っていいレベルの結果が出てくる。
競走条件を年齢別、距離別に分割するなど複数の切り口で試算したが、相関係数は「-0.05~0.05」の範囲から出なかった。
相関係数は0に近いほどデータ間の関連性が否定されることになる。
「事前馬体重を前走や出走当日の馬体重と比較しても、着順の類推に全く役に立たない」ということが統計的に示唆された。
この原因は複数ある。
第1に事前馬体重は厩舎の自己申告であること。
厩舎が意図的にうその数値を申告することはないだろうが、計測条件を均一にできないことが問題である。
厩舎はトレセン内の馬体重計で量り、出馬投票時に申告。
トレセン診療所で計測してもらう選択肢もあるが、診療所での計測は決して多数はではない。
用いる馬体重計もバラバラなら目盛りを読む人もバラバラなのだ。
日ごろから体重計に乗る人ならお分かりいただけるだろう。
体重計は上で少しゴソゴソするだけで目盛りが揺れる。
馬体重計も示す値は常に揺らいでいる。
そこから”真の値”を読み取るには、共通した第三者の判断が必要である。
第2に馬自体の計測条件が一定ではない。
450キロ程度の標準体格の競走馬では馬体重の日内変動が約10キロある。
飼い付けや運動からの時間もバラバラではとても意味のある数値は得られない。
対して出走当日の馬体重は、馬体重計は均質。
計測時刻も発走時刻の約70分前と条件も揃う。
目盛りを読むのは開催獣医委員だから客観的だ。
当日発表の馬体重は科学的データとして扱う最低限の条件を備えていると言えるであろう。