僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。空で人を殺した同じ手でボウリングもすれば、ハンバーガーも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。森博嗣、渾身の一作!(文庫本裏表紙より)

気になった箇所を抜粋。

つまり、短期のなのか長期なのか、とにかく、私たちにはまったく理解できない図式、それに動機で、大勢が動くことがある。つまるところ、大風が吹いて草木が揺れるようなもの。風が吹いたら、揺れた方が折れずに済むってことを、本能的にみんなが知ってる。


意識しなくても、
誰もが、どこかで、他人を殺してる。
押しくら饅頭をして、誰が押し出されるのか…。その被害者に直接触れていなくても、みんなで押したことには変わりはないのだ。
私は見なかった。私は触らなかった。
私はただ、自分が押し出されないように踏ん張っただけです。
それで言い訳になるだろうか?
僕は、それは違うと思う。


理解ほど、貴重で入手が困難なものはない。それが得られるのは、きまって、その必要がすっかりなくなったときなのだ。
店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。早朝出勤の途中に、ぐうぜん店をしったOLの理恵は、すっかりしずくのスープの虜になる。理恵は最近、職場の対人関係がぎくしゃくし、ポーチの紛失事件も起こり、ストレスから体調を崩しがちに。店主でシェフの麻野は、そんな理恵の悩みを見抜き、ことの真相を解き明かしていく。心温まる連作ミステリー。(文庫本裏表紙より)

少し前の記事 で「今の警察は優秀すぎて、名探偵のうまれる余地はないのではないか」ということを綾辻行人の『十角館の殺人』の一部を引用しつつ書きましたが、本作のような日常系ミステリーは名探偵を生み出す一つの方法なのではないでしょうか。
「その程度の事件では警察は動かない」、あるいは「警察が本気にならない程度の事件」。殺人事件などの凶悪犯罪に対する警察の怠慢は許せないが、日常にあるささいな事件に警察が顔をつっこんでくると余計ややこしくなる、そんな事件に警察が一々本気になっていたら警察官の数がいくらあっても足りなくなってしまう。そうして警察の参加をなるべく排除しようとしたときに日常系ミステリーというのは、名探偵を生み出すのにうってつけの舞台となるわけです。

また、日常系ミステリーおいては、ミステリーの鉄則である「Who done it(誰がやったのか)」、「Why done it(どうしてやったのか)、「How done it(どうやってやったのか)」ということが、探偵の側に求められることがあります。それはつまり、「誰が推理するのか」、「どうして推理するのか」「どうやって推理するのか」ということです。
加えて「Where done it」、どこで推理するのか、という推理する舞台の設定。「When done it」、いつ推理するのかという点。ただ犯人を指摘するのではなく、犯人や被害者にとって傷が残りにくいであろう「時」を選んで、真相を告げる。
今まで読んできた日常系ミステリーですと、「Where done it」の部分に特にこだわりを持つ作品が多かった気がします。本作もスープ屋という一風変わった舞台ですし、三上延の『ビブリアシリーズ』は古書店、岡崎琢磨の『タレーランシリーズ』は純喫茶、米澤穂信の『氷菓シリーズ』では高校の古典部などそれぞれの舞台設定にこだわりがうかがえます。
孔明、大いに泣く
孫権の裏切りにより関羽が戦士―。
復習の怒りに燃える蜀の皇帝・劉備は孔明の諫言も聞かずに呉へ進撃したが……。

張飛・曹操・劉備……
『三国志』の立役者・英雄たちが孔明だけを残して去る(単行本帯より)


人物まとめ(自分用)
○荊中→蜀
劉備玄徳
諸葛亮孔明
張飛翼徳
関羽雲長
趙雲子竜
?統士元(ほうとうしげん)

○魏
曹操孟徳
曹丕(そうひ)…曹操の息子
曹植…曹操の息子

○呉
孫権仲謀
陸遜伯言(りくそんはくげん)


劉璋季玉

張松(ちょうしょう)永年
法政
孟達

○漢中五斗米道 劉璋の領土に侵攻
張魯公祺(ちょうろこうき)

○関中十部
馬超(ばちょう)孟起


帯にも書いてあるとおり、三国志をほとんど知らない自分でも聞いたことのある三国志上の有名人が次々と亡くなる巻でした。
それにしても、三国志の勢力関係は面白いですね。同盟組んでるはずなのに、境界線で小競り合いしたり(場合によっては侵攻したり)、部下から主君への裏切り行為がいたるところであります。著者の三国志解釈の仕方にもよるのでしょうが、本当にあっさり裏切ります。まぁ、国同士は食うか食われるかの弱肉強食、部下から見れば、どの主君につくかで自分が生き残れるかどうかが決まる(ただし主君に謀殺される可能性もなきにしもあらず…)、文字通り「命懸け」なので仕方がないといえば仕方がないのですが…

それと、内容とは関係ないですが、とにかく名前を把握するのが大変でした。中国を題材にしたものに限らず、海外の方の名前には普段馴染みがないものですから、「これ誰だったかな?」というのがよくあります。あとは地名。この本だと目次のすぐ後あたりのページに地図が記載されているのですが、本を読みながらだと「今、誰それがどこどこにいる」と書かれても、いちいち参照にするのが面倒で、地理の描写に関しては雰囲気で読むという、三国志ファンの方に怒られそうな読み方をしました。地理の雰囲気自体は楽しめたので、個人的にはOKということで…