おかえりなさい。


今、ばぁさまが帰宅しました。

僕が中学の頃から同居始めたばぁさま。

とても僕的に不思議でチャーミングで
魅力的なばぁさまでした。

誰にも頼らずマイペースを貫くばぁさま
逆にそれが戸惑いの種になり不満の花を
咲かす母。どっちつかずな父。

ばぁさまのペースを把握するまでの事で
把握しちゃえばなんとも手のかからない
ばぁさまで。結果、仲良い嫁姑生活でした。

朝からメイクしておしゃれして近所の憩い
の温泉に行くのが習慣でした。後に知った
事ですがばぁさまは温泉行っても風呂には
入らない。なぜなら、スッピン見せたくない
から・・・。

葬式でばぁさまの友達が言った衝撃の事実。
「あら~キヨちゃん84歳だっけの?」
友達の間ではキヨちゃんはまだ64歳だった
らしい・・・。20歳のサバ読み発覚です。

一時体調を崩し救急車を呼ぶかって時も頑な
に拒んだばぁさま。なぜなら、他人に老いた
姿を見られたくなって理由で。。。すごい。
「死<美」そんなばぁさまの方程式って素敵。

でも家族はそんな事言ってらんないので119
番をコール。「もうすぐ来るよ」と心配顔の母
そんな母にばぁさまは涙目でこう言った・・・

「もう来るの?だったらフミちゃん・・・カツラ・・・」

カツラ?その時ばぁさまは手ぬぐいを頭に巻いて
寝ていた。まるでウラベクメコSTYLE夏の装い。
僕はその時まで知らなかったばぁさまがカツラ
だった事に・・・。どうせ来るならせめて、せめて
女でいさせてっていうばぁさま。

軽く肩透かしな母はそっと引き出しからカツラを出して
手渡した。ばぁさまはそのままカツラをかぶり
いつものキヨちゃん自称64歳に。

手ぬぐいの上にカツラじゃ、浅香光代だよ。。と思ったが。
正直そんな事より家族は身体が心配だから。

結局、入院して数ヶ月でばぁさまは天に召された。
老衰だった。本人としては不本意であろう病室での
最期。自宅に戻り息もなく眠るばぁさまは奇麗だった。
確かに64歳でもありだなと思えるほどだった。

正直僕はばぁさまの死に涙が出なかった。。それほどに
まっとうした人生に見えたから。それよりもばぁさまの
死に落胆し泣き崩れる母を見て僕は泣いた。

「もっとして上げられる事があったのに・・・」
と母は泣いた。

この世に生きて残る人は故人に対して後悔が募る。

あの世に生きて昇る人は僕らに対して感謝を募る。

それが理想的な家族とのしばしの別れであって欲しい。

ばぁさまは病室で最期に母の耳元で囁いた。
それはとても小さな優しい声だった。


「フミちゃん、今までありがとう。」