赤い糸のペンダント 第1章(前・後編) | satoの愉快な仲間達...

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~ 第1章 再会?(前編) ~


ある日、行きつけの店で、一人の男と知り合った。
その男の名前は、ユウスケ。
二人は、初対面とは思えない程の速さで親友になった。
この日から、毎週のようにユウスケと、時には、その友達とで週末には遊び歩いていた。
しかし、ある日を境にパッタリと連絡が途絶えた。
だが、またいつか連絡が来るだろうと思っていた。


連絡が途絶え、長い時間が経過し、ユウスケの存在を忘れかけた頃、いきなり携帯がなった。
相手はユウスケだ。偶然なのか、その日は自分の誕生日の1週間前だった。
『1週間後、時間空けとけよ』と、『久しぶり』とかの挨拶など一切無かった。
そんな事より、何故、誕生日を知っているのかが不思議だった。
まだ、誕生日と知っての『1週間後の約束』とは限らないが。


約束どおり1週間後にユウスケは現れた。
いつもの店とは違う場所に、初対面の無数の友達を連れて。
ユウスケとの出会い同様、誰もが昔からの友人のように接してくる。
でも、誰もが自然で異常なまでの明るさで、楽しい時間が過ぎていった。
そんな時、ユウスケが一言だけ自分に言い放った。『誕生日いつだ』と。
正直、酔いが覚めた。

  この会は、一体何の集まり?
  ごく普通の、ただの飲み会なのか?
  何なんだ!このフレンドリーな奴らは!

言ってやった。『今日なんですけど!恐縮です!』って。
ユウスケは、驚く素振りも見せず『やっぱり』と、小さな箱をカバンから取り出した。
ユウスケだけじゃない。
このフレンドリーな一族も、これが合図だったのか、自分にプレゼントらしき物を差し出してきた。
『おめでとう』なんて基本的な言葉なんか無く、『イェ~イ!』と叫びながら。
嬉しいとか、感動とか、そんな言葉では表現できない感覚に襲撃された。
その襲撃チームの中に、一人の女性が居た。


彼女の名前は、カオリ。
カオリは、このサプライズ会の中で特別な存在に感じていた。
それに、始めて会った感じがしなかった。
カオリからのサプライズプレゼントは、唯一何も無かった。
他の奴らからは貰ったのに。
何の迷いも無く自然に聞いてみた。
『何か無いの』って。
カオリは、じっと目を見ながら言った。
微笑んで『何も無いよ。』って。
この些細な会話で、自分の中に衝撃が走った。

 こんな女性に会った事が無い
 これが世間で言う運命の出会いってやつかな・・・

この瞬間、この世の者じゃないと感じるくらいに、完璧な女性に見えてきた。
とっさに、『じゃぁ付き合うか。』と言った。一瞬、自分だけ時間が止まった。
カオリは、また目をじっと見て『・・・。嫌だよ。』と、ほぼ即答だった。
恋愛時間が1分も無い、悲惨な結末が自分を待っていた。誕生日なのに。
普通なら、今日会った相手だし、失恋したなんて感覚を感じない程度の出来事なのに。
何故か、前から好きだった相手に思い切って告白したら失恋したような、絶望的な感覚だった。
この時、思考回路が故障した。
『後悔するなよ!今度、どこか遊びに行こうな。』と、脳死状態の中で言葉が出てきた。
まわりの連中は、そんな失恋ドラマにお構い無しのテンションで盛り上がったままで。
失恋に浸っている暇は無いくらい、自分も盛り上がり、失恋の傷は癒されていった。


気付けば夜が開ける寸前。
朝がダッシュで向かって来た事を知り、逃げるようにみんな散って行った。
自分も家に帰って寝ることにした。
散らばる仲間達と、次の約束など無かった。
でも、長い付き合いになる事は言われなくても感じていた。
せめて最後に、カオリと話をしたかった。
でも、恋心vs眠気では、失恋のパンチを受けた恋心の前では、勝者は眠気だった。


家に帰ると、勿論、一人暮らしの部屋には誰も居るはずもない。
無数のサプライズプレゼントを袋ごと投げ、一目散にベッドに飛び込み、すぐに熟睡モード突入した。


目が覚めて気付くと、昼の11時だった。
帰ってきたのが7時だから、意外と寝てないなと感じながらテレビを付けた。
画面には、誕生日の翌日の番組が。28時間の睡眠は自己新記録更新だ。
携帯を見ると、着信が山のようにあった。昨日の連中からだ。
サプライズの感謝も兼ねて順番に電話してみた。
相変わらずおかしなテンションだ。無意識に笑顔になった。
そんな中、無数の着信の中の一番最後の最後に『カオリ』の名前が刻まれていた。
一番最初に電話をくれたのは、カオリだ。
発信ボタンを押す指が、脳から『押せ』と指令を出す前に、勝手に動いていた。
結果は不在。またもや、唯一の不在だ。
いきなり、28時間にも及ぶ寝疲れの波が体を襲ってきた。
床に転がり込んで、落胆しかけた直後、メールが届いた。

  遅いよ!連絡くれるの
  ずっと待っていたんだから(コラッ!)

カオリからだ。
また、すぐにメールが届いた。『誕生日は何を貰えるのかな?(嬉)』
また、すぐにメールが届いた。『欲しい物何個まで』
また、すぐにメールが届いた。『どうしてもって言うなら、1個だけにしてあげる。』
この後、メールは届かなかった。
メールの連打に圧倒された中で、もう一度電話をしてみた。
やっぱり不在だ。いや、居留守だろう。怒ってんのかな。
それからすぐに、またメールが届いた。

  実は、好きな人が居るの・・・
  相談、聞いてくれる(願)

知りたくない情報だった。
さっきまで、プレゼントとか言ってたくせに、今度はこれか・・・。
すぐまた、メールが届いた。

  その人が、自分の事が好きなのか良くわからないの
  好きそうな・・・
  『好きだよ』って言われた事無いし・・・

この相談は、自分に忘れていた失恋を思い出させる特効薬となって、再起不能な体にしようとしていた。
でも、心の片隅に居る恋のキューピット本能が、自分の気持ちを奮い立たせた。
電話しても、多分出ないだろう。だからメールで返した。本当は、話すのが辛いからだけど。

  聞いてみれば良いだろ
  カオリなら大丈夫
  この前の中に居るのか
  俺から聞いてやろうか?
  余計なお世話か!

カオリからメールが届いた。

  聞いてみる
  嫌いだったら、立ち直れないかも・・・

そいつの事がすごく好きで、自分が入る隙間なんか無かった事を実感させられた。
それから、カオリからのメールは途絶えてしまった。
『今頃、告白してるんだろうな・・・。』と思いつつ・・・。
でも、心の中で応援する自分が居た。『頑張れよ。』と。
何もする気が起こらなかったが、とりあえず、外に気晴らしに行くことにした。
外に出て、階段を降りている時、携帯が鳴った。
カオリからのメールだ。
多分、『告白成功の結果報告だろう』と思いつつも、開いてみた。
そこには、_の矢印だけが下に続いていた。
そして、一言だけ書いてあった。

 『好きだよ』って言ってくれた事無いけど、私の事好き?

思わず、携帯が手から滑り落ちた。
自分がカオリに伝えた思いは『じゃぁ付き合うか。』だ。
カオリに『好き』とは一言も言ってない。一番言って欲しい言葉のはずなのに。
すぐにメールを返信しないと。
いや、『直接、電話で伝えないと』と思い、滑り落ちた携帯を拾った。
だが、その時既に、神様は自分を見放していた。
携帯が落とした衝撃で何も表示していない。画面が真っ黒だった。
今の自分の目の前と一緒だ。
携帯の番号なんて暗記していない。すぐに連絡する手段はもう無かった。
カオリの気持ちを知りながらも、その思いに応えてやれない。
完全に終わったと悟った。
居住地域は大都会だ。少し歩けば、公衆電話だってある。
ユウスケに電話してカオリの番号を聞けば良かったのに・・・。
何も思いつかなかった。


部屋に戻り、空白の時間を過ごし、悲劇のヒロイン気取りの自分は、周りの物を全て投げつけた。
サプライズのプレゼントも、壊れた携帯も。
この瞬間、天使が一人暮らしの悲劇のヒロイン宅に舞い降りてきた。
ユウスケの着信と、携帯復活のタイミングが合い、聞きなれたサラウンドを奏で始めたのだ。
これは奇跡だろう。
ユウスケが連絡してこなかったら、一生、この携帯を手にする事はなかったかもしれない。
この携帯の蘇生に気づかないまま・・・。
自分にとっての、ユウスケは『恋のキューピット』だ。
しかし、この恋のキューピット様には悪いが、ユウスケと話している時間は無い。
カオリのメールから、数時間経過していた。
ユウスケの着信を切断し、カオリに電話した。
不在・・・。当たり前か。
メールもした。何時間待っても、カオリからの反応は無かった。
何度も電話をした。何度も。全て不在。
これで終わった。本当に・・・本当に・・・。


何もする気がしない。食事だって行こうとも思わない。夜になっても寝むれなかった。
他の事を考えようとしても、頭の中はカオリで埋め尽くされている。
立ち直れる確立は0%以下だ。


気付けば朝を迎えていた。
仮死状態のまま、朝食を買いに近くのコンビニに行った。
バイトの女の子に言われた。

 どうしたの・・・
 失恋でもした顔して・・・らしくないよ!

自動ドアの開くのと同時位のタイミングで、完璧なプロファイリングだった。
『慰めてくれる?』と、無理に笑って見せた。
サンドウィッチとコーヒーをレジに持って行き、初めて気が付いた。
財布を持って来なかった事を。
『悪い。ちょっと戻ってくる。財布忘れた。』と言ったが、そのまま袋に詰め始めた。
『良いよ。誕生日プレゼント。』と言って、手渡された。
『いつもの調子でやんなよ。駄目だったら、アタシが付き合ってあげる。』と。
慰めの言葉のプレゼント付きで。
ありがと。サンキュー。それしか言えなかった。


部屋に帰り携帯を見ても、誰からの着信も無かった。
着信が無い事は知っていた。肌身離さず持っていたのだから。
サンドウィッチを食べながら思った。
諦めない・・・。
コンビニの彼女のプレゼントが、心に響いていた。
また、カオリに電話してみた。が、やっぱり不在だ。
もう、街が目を覚ます時間。ショッピングにでも行こうと外に出た。


買う物なんて決まってない。ただ、歩いては眺めての繰り返しだ。
時間は、いつもより早く過ぎていく。
ハンバーガーを齧りながら外を眺めれば、カップルばっかり。
『一人で居るのは自分だけじゃないか・・・』って思えるほどに。
そんな気持ちの中で、携帯がついに反応した。
着信は・・・。ユウスケだ。
『ここはドラマチックに、カオリからの着信だろ!普通!』と思いつつ。
だが、昨日の回線切断の件で心が痛み、回線を接続した。
今のモチベーションを悟られないよう、無理に明るく話を切り出した。

  よぉ・・・
  昨日は悪かったな
  ボタン押し間違えた・・・ははっ

何も言わない。
相当怒っている感じだ。

  待っている気持ちはどう?
  意外と平気そうね

明らかにユウスケじゃない。カオリだ。
でも、携帯は左側にあるのに、声は右から聞こえてきた。
振り向くと、そこにはカオリが立っていた。
いきなりの光景に言葉が出ない。
『さぁ、お前の気持ちを伝えろよ。直接会って本人に。』と言い、携帯は切れた。


カオリは横に座ると、俺のポテトを食べた。

  勝手に食うなよ・・・

最初の会話がこれかよ。
もっと大事な事があるだろうと思いながら、冷静を装った。

  良いでしょ・・・悪い・・・
  お腹が空いたの

カオリの反応はこれだ。
何で、ここに居る事を知っているのか不思議だった。
『ねぇ、ちょっと見たい物があるんだけど、一緒に来てよ。』と、外に出て行った。

  全部捨てるのも?

そう思って、横のカップルに『これ食べる』と聞き、そのまま渡して自分も外に飛び出した。
どこに行くのか、どこに行きたいのかは全くわからないけど。


カオリは、服やアクセサリーや色んな店を転々として、見て歩き始めた。
店を見る度に『これどう。欲しいな。買おうかな?』の繰り返しだ。
『それ合わないな。そっちの方が似合うかな?』と、その度にファッションチェック係だ。
こんな時間を過ごしているうちに、いつの間にか、気持ちを伝える事を忘れ始めていた。
カオリは何のぎこちなさも無く、全く自然に接してくる。
自分も、自然に思った事をそのまま口にしていた。
そんな時、ショップの店員さんに二人が言われた言葉に、二人とも普通に反応していた。
『良いですね。彼が貴方のことを良く知っているから、本当に似合う商品が見つりそうね。』
カオリは笑ってる。
『でも、こいつは欲しい物が沢山有り過ぎて、決めるのは大変なんだよね。』と普通に応えた。
何の抵抗も無く。
『仕方が無いでしょ!欲しい物は欲しいんだから。』とカオリは反論してくる。何故か鼻声で。
店員さんは、『仲が良くて、羨ましですね。誕生日か何かですか?』と。
二人を、終始笑顔で見ていた。
そこで、カオリが言った。

  誕生日なんです
  多分・・・今日

この意味不明の発言に、店員さんは無反応だった。

  何個まで買ってくれるのかな?
  どうしてもって言うなら1個にするよ
  ここにある物の中から

終始、こいつは笑顔だ。
『じゃぁ、1個な』と言ったが、高価な品揃えだ。それなりの店だし仕方が無い。
それより、『多分、誕生日』発言に、疑問万歳だ。
そして、カオリは1つの商品を指差した。
自分は、店員さんに『じゃぁ、それ下さい』と伝えた。
でも、店員さんは『どれですか?』と、なかなか商品に辿り着かない。
カオリが指を差した商品の隣にあった品物を、目印にしようと目を向けた。
そこにあるペンダントには『I love you・・・』と書いてあった。
難しい英語表記で、なんて書いてあるかは全くわからなかった。
でも、伝えようと。

  だからその、I love you・・・えっと・・・

言葉が止まった。
途中は読めないが、最後だけは読めたから。
この時、商品を見ているカオリに対して伝えた。

  愛してるよ・・・カオリ

そこには、『I love you ・・・ kaori.』と書かれていた。
これは偶然。
いや。そんなペンダントが売ってるはずは無い。
何で・・・。言ってからそう思った。
店員さんが、『カオリちゃん。聞こえた。』と、カオリに話しかけた。
カオリは、『何が。聞こえなかったけど。』と、何事も無かったように応えた。鼻声で。
『何か言ったの?もう一回言って』と、自分に要求してきた。
いつものように、じっと目を見て。明らかに泣いていた。
だから、言った。

  欲しい物は1個だろ
  もうあげたろ・・・今

カオリは言った。

  貰ったよ・・・欲しいの1個

この瞬間、店員さんが、1つの商品を二人の前に差し出した。このペンダントを。

  これは、お店からの二人へのプレゼント
  大事にしてね
  今日は、二人の誕生日だね 

この時、カオリの不思議発言の意味を理解した。こういう事かと。
ぺンダントは受け取らなかった。
店員さんに『これ、お店に飾って。この日の記念に』と伝え、お店を後にした。
このサプライズには、不思議な事が多過ぎる。けど、あえて聞きもしなかった。
今のこの状況だけで、自分は何も要らなかったから。


この日から、カオリとの生活が始まった。
昨日の自分には、想像がつかないかった現実。
最初に、カオリには誕生日を聞いた。
出会いのスタートラインとして。
カオリは言った。

  誕生日は、勉強して覚えてよ

『聞かなきゃわからないだろ!』と思ったけど、その場は、それで終わった。
しばらくして、カオリがサプライズ店に行きたいと言い出したから、久しぶりに行ってみた。
そこには、約束どおりペンダントが飾られていた。
事細かなストーリーまで誇張されて記され、まるで恋愛ドラマの感動的なシーンのように。


ペタしてね


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~ 第1章 再会?(後編) ~


装飾されたペンダントの壁掛けの前には、若いカップルが群がっていた。
その下には、貯金箱のような可愛らしい箱が置かれていた。
『貴方にも、素敵な場面が訪れますように』と書かれて、恋愛祈願箱みたいだった。
店員さんが、カオリを見つけて近づいてきた。
その時、『カオリちゃん。久しぶり』と言ったその瞬間に、お店がざわめき出した。
『もしかして、ここに書いてあるカオリさんですか。』と女の子が訪ねてきた。
カオリは、自分に『そうだっけ?』とキラーパスをいきなり出した。
とっさに、『こんなロマンチストに見えるか。俺が・・・』と返してやった。
カオリは、『愛してるよ・・・カオリ・・・。』と微笑んだ。
この瞬間。
店の客からは完全に?マークは消え去り、まるでスーパースターの来日のような握手会が開催された。
何者扱いだよ。
店員さんに警告した。

  まったく
  こんな派手に飾らなくて見いいよ!

店員さんは、『よく見てよ。素敵じゃない。ねぇ良く見なさいよ。』と。
クオリティーの高さに大満足そうだった。
まぁ、確かに高級な店構えに完璧にマッチした仕上がりだ。
自分も他人なら、このストーリーに感動するに違いないと思えた。
今の自分は、『よくこの場で言えたものだ!』と恥ずかしくなった。
けど、他の彼氏達には、『彼女があれなら、言えちゃいますよね』と主演男優賞受賞だ。
そう、お店の彼氏集団が思うとおり、この社会現象の現実には、もう一つの要因があった。
カオリの『ルックス』
街で見かける美人な人とかという、そういうレベルでは無い。
あくまでルックスは。
好きだから・・・そう思うのかな。
性格は・・・。
可愛いような、同姓のような、何とも言葉に出来ない。
でも、一番性格が自分は好きだった。
そんなカオリが恋愛ストーリーのヒロインなんて設定だから、なおさら握手したくなる気持ちは理解できる。
自分だって握手するだろう。
そんな彼女の存在感を、初めて目の当たりにした。


握手会・撮影会と、盛大なイベントも終わりを告げた。
店内が静まり返った時、カオリにある質問を投げかけた。

  カオリ
  何で俺の事を好きになったんだ
  会ったのはあの日だけだろ

カオリは、自分が思いもしなかったこれまでの出来事を話始めた。

  会ったのは初めてじゃないよ
  いつもユウスケと同じようにそばに居て、いつも見ていた

全く気付きもしなかったこの存在。
驚きを隠せなかったが、思い当たる人物は1人だけ思い浮かんできた。
したのは些細な会話程度で、後は、ユウスケと他の奴と一緒に時間を過ごしていた。
この存在に気付かなかったなんて・・・一生の不覚だ。
この時気付いていれば、もっと違った人生になっていただろう。


カオリの言葉は続いた。

  だから良い所も変な所も全部を見ていたし、全てを知って好きになったの
  ある時、私にこう言ったんだよ
  『簡単に付き合おうかって言う奴らがこの中には沢山居るから、だまされるなよ。』
  『しっかり自分を見て、それでも好きになってくれた人を探せ。』って
  だから、こう言ったの
  『そんな人、隣に居ないかな』って
  その時に、言われた言葉を今でも覚えている
  それを信じてたんだ
  『好きになったら、好きだって伝えます』ってね

この話を聞いて、人物像は完璧に思い浮かんだ。
カオリが来る時は、ユウスケといつも行く同じ店で、店内はムードたっぷりの暗い演出だった。
それに酔っているから、なお更、良く見えなかった。
だから、カオリをしっかりと見たのはあのサプライズ会が初めてだ。
カオリは話を続けた。 

  ユウスケに言われたんだ
  『あいつの事好きになっただろ』って
  それで、ユウスケが何か企画を考えて、ロマンチックな感じにしようって言い出したの
  ユウスケは、『あいつが、私を好きになるのは間違い無い!』って、すごい自信でね
  でも、どのタイミングが良いのか悩んでて
  その時、『誕生日をお祝いしようか』って思いついたの
  私はちゃんと覚えていたよ。誕生日
  全然、イメージと違っちゃったけどね
  みんなには話してなかったから・・・・
  長い間、連絡を取らなかったのは、いつも会っているから、感激が薄まるとか言って
  本当は、いつものように一緒に馬鹿やりたそうだったけど・・・
  私だけ何も持って行かなかったのは、『私自身?』かなって・・・
  何か照れるね
  なのに『嫌だよ』って言ったのは、あの時は、何か嫌だったの。わかんないけど
  けど、すぐ電話したでしょ
  なのに・・・
  いつまで待っても連絡こなし、『やっぱり何とも思ってないのかな』って
  そう思ってる時に連絡が着たから、『ちょっとからかってやろう』って思ったの
  楽しかったね
  でも、思いを伝えた後に連絡が全く来なかったから・・・
  『駄目だ。やっぱり』って思って・・・
  ユウスケとやけ酒パーティーをしようって思って、遊びに行ったんだぁ
  その事を知ったら、ユウスケが怒ってすぐ電話したの
  最初は全然つながらなくて
  いきなりつながったと思ったら、そしたらすぐに切れて私の所に電話が来た
  その時、ユウスケが一言だけ
  『な。大丈夫だろ。何かあったんだろ。あいつに。』って
  それから、また、からかってやろうって思って
  けど・・・
  『何か可愛そうだから会いに行くか。感激するかもよ。』ってユウスケが言うから行ったの
  アパートに。もう居なかったけど
  相当、落ち込んでたみたいだね
  コンビニの店員さんが言ってたよ・・・『あんな姿見たの初めてだ』って
  それでユウスケが、『アイツが行きそうな所はここだろ』って
  そこに行ったら、ポテト食べながら居たの
  ビックリだよ
  どれだけ、ユウスケはこの人のことを観察しているんだろって
  本当にビックリ
  それで、ユウスケが電話したわけです
  そして、私は貴方の所へすぐに行ったの
  その時に『お店のペンダント見ろよ』って
  意味不明でしょ
  本当は、このお店に来ようなんて思っていなかったけど、電話が着たんだ
  『今日お店に来てね。多分、誕生日なんでしょ』って
  なんか、ユウスケが言っていたペンダントも気になったし
  お店に来て、すぐペンダントを探したの。そして見つけた
  読んで、泣き出しそうになっちゃった
  それより、本当に嬉しかったよ・・・あの言葉は・・・

カオリのその話を聞いて、着信履歴を見た。
日付は俺の誕生日。
時間は・・・あの会の最中だった。
あの馬鹿達と盛り上がっている場合じゃなかった。
どれだけ自分の事を思ってくれていたかに感激した。

 
店員さんに『今日はどれをオネダリするつもりなの。』って言われたが、その時は、何にもピンとこなかった。
カオリは『何個まで』といつもの調子で。
その時、カオリにピッタリのピアスを見つけた。
『これ似合うよ。絶対。これが良い。』と、自分は一目惚れだった。
カオリは、『じゃぁ、これにする』と、笑顔で言った。
商品を出しながら『カオリちゃん。今日はいい日になると良いね』と、店員さんが言った。
カオリも、『そうだね。あのペンダントみたいに?』って。
とりあえず支払いを済ませ、店を出ようとした。


『あのペンダントみたいに?』


『確かにあの日は、カオリにとって思い出深い日になったのかな』と思いながら、主演男優賞の受賞作品を帰り際にもう一度見た。
ペンダントには、英語で数字が書いてある。
はっと、時計のカレンダーを見た。
『今日はカオリの誕生日だ』と思っているその時。
『気付いたみたいね。そこにはこう刻まれているのよ。』と、店員さんが訳してくれた。
  
  私は、貴方を愛しています
  誕生日には、記念の場所で、貴方に愛を贈ります
  沢山ある中から、掛け替えの無い1つを僕から
  心に残る、一番の思い出をこの日に
  カオリさん
  いつまでも一緒に居て下さい

この小さなペンダントの中には、自分の気持ちがそのまま刻まれていた。
主人公でさえも知らなかった真実を知り、このお店に来るカップルは、このペンダントの内容を訳し、この時のストーリーを知り、二人の愛の深さに感動してくれていたのだろうか。
このペンダントの価値は、二人の関係と一緒で『永遠に尽きない』と思った。

  カオリちゃんに、何か忘れてない

その店員さんの言葉で、自分はカオリに・・・。

  そっか
  この日に、1つだけ愛を送るって書いてあったんだな
  カオリ・・・

そう言って、カオリにキスをした。

  沢山ある中から記念の場所で、貴方に愛を贈ります

その時、カオリの頬に涙が流れた。

  買ってもらったのに、2つになっちゃったよ・・・

だから言った。

  それはプレゼント
  愛じゃない
  だから俺は、カオリに愛は1つしか贈っていないよ

この言葉は、カオリより店員さんの心に響いたらしい。
『素敵~。羨ましい~。』と、大絶賛だ。
『いつまでも一緒に居ないと駄目よ。世のカップルの憧れなんだからね。』とも言った。
元々、世のカップルの憧れの存在を作り上げたのは・・・貴方だ。
そう思いながらも『勿論、いつまでも一緒に居るよ』と答えた。
『このペンダントは、この日だけの展示物にしてよ。世間的に影響が。』そう店員さんに伝えた。
しかし、店員さんの言葉に心は動かされた。

  それは無理ね
  その下の箱を覗いてご覧なさい
  このペンダントの二人のように恋愛をしてみたいっていう気持ちが詰められているのよ
  このペンダントは、『恋愛の神様的な存在』
  『この壁から外した瞬間から、世のカップルの願いが何処かに・・・』そう思わない?
  それに、その箱の中のお賽銭は、このペンダント制作料金とさせて頂いておりますので(笑)

確かに、今日の大イベントの感じからしても、もう二人の物だけじゃないような気がする。
カオリも。

  じゃぁ、別れられないね
  みんなへの恋の効力が無くなっちゃうから(笑)
  飾っておこ・・・良いよね

『わかった。』と返事をして店を出ようとした時。
この最高傑作の展示物の片隅に、何か書いてあるのが目に入った。


『y-sk』


誰が見てもわからないこの英語。
肝心なペンダントの内容を訳せなかった自分には、この難解な英語は読めた。

『y-sk = ユースケ』

この時、カオリが話してくれた、これまでのストーリーと『y-sk』の文字で、全ての謎が解けた。
ユウスケが何故、サプライズ会の前まで自分の前に姿を見せなかったのか。
ユウスケがカオリに告げた、『お店のペンダント見ろよ』
そして、ユウスケがカオリに言った、『何かの企画でドラマチックに・・・』
二人のこれまでの奇跡のような現実は、ユウスケの演出。
本当の、ユウスケの狙いは、最初からこれだった。
あのサプライズ誕生会は、カオリまで騙すための演出。
このアカデミー賞受賞作は、監督・脚本共にユウスケ。
ブロンズのトロフィーでも発注するかな。
心の中でそう思った。


店を出て、カオリに言われた。

  この日だけなの、さっき貰った愛は(笑)
  1年に1回だけなのかなぁ~

だから言ってやった。

  この日に1つだけの愛を贈るのは、記念の場所って書いてあるんだろ?
  場所が違う所であれば、いつでも贈りますけど・・・
  ご希望であれば・・・

カオリは、笑いながら言った。
  
  じゃぁ来年は・・・
  観客の居る前で愛を贈って頂けますか?

こんな、ラブコメディーのような会話を繰り返しながら歩いた。


勿論、カオリの誕生日を知ったのはつい数分前。
よくある、お決まりのレストランとか準備しているはずが無い。
カオリに、何か食べたいか聞いても『何でも良い』と言うだけだった。
ある事が頭をよぎり、『ちょっとトイレ行って来る』と言って、ある所に電話をした。

  カオリが何でも良いなら、いつもの場所行くか

そう言って、いつもの店に向かった。


店の中は、珍しくお客が居ない。いつもの店員とマスターだけ。
カオリが、『こんな時間だけど、お客居ないじゃん。大丈夫?この店』と心配そう。
マスターは、『今日だってそのうち賑やかになるさ!嫌と言うくらいな!』と微笑んでいるだけ。
とりあえず、座って注文した。
数分後、宅急便がこの店に届いた。
『カオリさんは、このお店にいらっしゃいますか?』と。
『えっ、はい私です』と答え、受け取りに向かった。

  ハッピー・バースディー
  カオリ

宅急便の配達員が言った。
こり過ぎの演出。
ここまでの演出は発注していない。
そう、ユウスケだ。
これを合図に、いつもの無数の友達が、店内に流れ込んで来た。
マスターが言う通り、嫌と言うくらい・・・。
これは、カオリへのサプライズ誕生会のお返し。
自分がユウスケに依頼した。
『あの時と同じように、友達を連れて来いよ』と。
あの時と同じように、カオリには無数のプレゼントが渡されている。
唯一、この場で何も無いのは自分だけ。
カオリは言った。『何か無いの』と自分に。
だから、目をじっと見て言った。『何も無いよ』と微笑んで。
まるで、あの時の二人の会話と一緒だ。
だが違う。
『私自身でどうでしょうか。カオリさん』と一言告げた。
この時、まわりの連中が一斉に静まり、二人をじっと見ていた。
もう二人の関係は、誰もが知っている。
カオリの反応を楽しみにして。
カオリは言った。
  
  貴方
  何か忘れていませんか
  大事な何かを・・・

やられた。
カオリのトラップ成功。
『貴方の事が好きです。』と、連中の前で告白した。
この瞬間、店内の静けさが嘘のように、一斉に騒がしくなった。

  聞こえませんでした
  もう一度お願いします
  二人は、いつからのご関係なんですか?
  彼女の、どこを好きになったのですか
  貴方は、彼女の事をどのくらい好きなんですか
  お酒の度数でお伝え下さい

まるで、恋愛発覚の記者会見だ。
カオリも、この記者会見に便乗して言った。

  聞こえませんでした
  言葉のニュアンスが違ったのでは?

自分は、カオリの目を見ながら、

  貴方の事を愛しています
  これからずっと一緒に居て下さい

カオリは、『はい。私で良ければ』と。


この言葉で、会場は完全にヒートアップしてしまった。

  さぁ、色男さん
  カオリさんを、どれだけ好きかお酒の度数で証明しましょうか!

目の前に、ショットグラスが並びだした。
テキーラのスタンバイ完了だ。
自分はこう告げた。

  みんなには悪いが、俺の気持ちは100%だ
  テキーラじゃ度数が足りない
  100%を持って来い!

この言葉を待ってましたかのように、メチルアルコールが準備された。
何であるんだよ・・・。
仕方が無い・・・。飲むか。
その時、ユウスケが言った。

  おい、カオリを未亡人にしたいのか
  お前の気持ちは十分伝わったよ

かっこ良くキメやがった。助演男優賞受賞だ。
そんなこんなで、カオリのサプライズ誕生会は自分の時以上に盛り上がった。
帰り際にユウスケに伝えた。

  今日はサンキュー
  お前は、世のカップルの最高の教祖だな

ユウスケは悟ったのだろう。

  最高の教祖になれるのは、最高の神様が居るからこそだろ

そう言って、ユウスケと俺は、いつものように拳をぶつけて別れた。


帰り道は、二人とも無言だった。
カオリは、手に沢山のプレゼントを抱えて、とても嬉しそうだった。
時間は0時間際で、カオリの誕生日も終わりを告げる時刻が迫っていた。
静かな夜道で、一言だけ伝えた。
まだ言った事の無い言葉。

  カオリ
  誕生日おめでとう・・・

カオリは呟いた。
 
 ありがと
 ねぇ、深夜ですけど配達お願いできますか?

その時、誕生日の最後を告げる時刻に、自分はカオリに愛を届けた。
この誕生日を、一番の記念にするサプライズ誕生会の締めくくりとして。
この時、月の明かりでカオリの耳にはピアスが輝いていた。
これからの、二人の未来のように・・・・。


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