小説「海と陸の彼方へ」

 

第十章ヘクターとルイスの対イギリス共同作戦

 

第13話岳明軒(ユエ・ミンシュエン)と交易の旅⑤

 

前書き

1936年、九江の静かな朝。岳明軒(ユエ・ミンシュエン)は、新たな旅立ちの準備をしていた。交易を通じて彼の運命が大きく変わろうとしていることを、まだ彼は知らない。そんな岳明軒の前に、エミリーから紹介された若い夫婦、アーサー・ウェルビーとメアリー・ウェルビーが現れる。彼らは冒険と未知の世界への憧れを胸に、岳明軒と共に歩みを進めることになる。この出会いが、彼らの運命をどのように繋げ、そして変えていくのか。1936年の中国、動乱の時代を生きる人々の物語が、ここに始まる。

 

本文

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登場人物「年齢は1936年1月1日時点」 

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主人公ルイス(19歳)、中国の運命を操る覇王。巴蜀・雲南・陜西・河南・湖北及び長江沿岸諸都市、上海、杭州を領土とし、反西欧、反日、反共を掲げ、中国民族自決のための戦いを始める。 

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側室 

ナディア・アミール・アル・サン(43歳)。アレッサンドロ・ディアンジェロ男0歳の生母。 

サリマ・ファイサル・アル・ハウ(26歳)。エミリア・ディアンジェロ女0歳の生母。 

王光美ワン・グアンメイ(15歳)。マルコ・ディアンジェロ男0歳の生母。 

側女、愛人は多数居る。いちいち書かない。 

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ヘクターの部下 

岳明軒ユエ・ミンシュエン(16歳)。彼は南宋の英雄・岳飛の血を引く末裔として、洪水のため両親を失いながらも、自身の運命を探求し続ける。棍棒の使い手。俊敏かつ頭脳明晰。文武両道の逞しき若者。 

岳蓮華ユエ・リエンファ(20歳)。岳明軒ユエ・ミンシュエンの姉。抜群の美貌を誇るが、実は中国漢方薬の大家。

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岳明軒ユエ・ミンシュエン(16歳)の側女そばめたち 

ドイツ商人の妻ヘルガ・バウアーマン39歳、オランダ商人の妻エリザベト・ヴァン・デル・メール26歳、中国商人の妻:李明珠リー・ミンジュ32歳。元ヘクターの側女であったが、自ら望んで若い岳明軒ユエ・ミンシュエン(16歳)の側女そばめとなった。 

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古武道:霧隠流むぎんりゅうの創始者 

趙雲龍チョウ・ウンリョン(65歳)。彼は長年にわたる修行と実戦の経験から、この独自の武術を生み出した。 

趙紫蘭チョウ・シラン(34歳)。雲龍の娘であり、彼女自身も古武道の技術に長けている。 

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エリザベス・ウィンザム(41歳)。イングランド人。銀行家の妻。社交界で名高い名士。優れた美的センスを持ち、古典音楽と美術をこよなく愛する。慈善活動にも熱心に取り組んでいる。岳明軒ユエ・ミンシュエンの愛人。 

司祭補:エミリー・ウェルビー(32歳)。イギリス国教会九江支部司教ジョン・ウェルビー(58歳)の妻。岳明軒ユエ・ミンシュエンの愛人。 

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 紅軍の長征  

中国地図 出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8

 

 

中国侵略 

東京書籍「世界史B」P329

 

 

辛亥革命以降 

東京書籍「世界史B」P332

 

 

国民党の北伐と共産党の長征 

東京書籍「世界史B」P364



山川出版社「市場の世界史」佐藤次高/岸本美緒著。P179

 

☆8月16日日曜日午後4時。イギリス国教会九江支部懺悔室 

岳明軒ユエ・ミンシュエンは懺悔室の隣の部屋で、誰かが失神し倒れたことを知り、大慌てでドアを蹴破った。失神し、机の上に突っ伏していたのは、司祭補のエミリー・ウェルビー(32歳)であった。 

 

実はエミリーは失神したふりをしてはいたが、仮病であった。岳明軒ユエ・ミンシュエンを攻略するための策略である。まさか聖職者自ら誘惑するわけにはいかないので、岳明軒ユエ・ミンシュエンに介抱してもらいながらチャンスを見つけて彼を我が物にしようと企んでいた。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエンは元より、彼女の気持ちに気づいておりお膳立てを作ったのである。岳明軒ユエ・ミンシュエンはゆうゆうと彼女を抱き上げ、車に乗せて自宅の寝室に彼女を連れ込んだ。 

 

☆午後6時。イングランドの銀行家チャールズ・ウィンザム(43歳)邸離れ 

岳明軒ユエ・ミンシュエンは司祭補:エミリー・ウェルビー(32歳)の密かな願望に応え、オーラルを十二分に行い彼女の欲望を完全に満たしたのである。詳しい内容を語るのは本意ではないので省略し、互いの望みを伝えあった。 

 

エミリー:岳明軒ユエ・ミンシュエンちゃん。こんな親しい仲になって言いにくいのだけど、私は貴方と再婚は出来ないわ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:それは何故ですか? 

 

エミリー:貴方の年齢よ。私は貴方の倍も年上だし、前の亭主と死別したからと言っても流石に再婚は認められないわ。同じくらいの年齢なら別だけど。それ以外のことなら何でも言うことを聞いてあげるわ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:分かりました。僕の希望は、貴女が僕と一緒に南充へ同行してくれることなのです。 

 

エミリー:南充と言うと、重慶から嘉陵江経由で行ける有名な石油の産地よね。川中油田だったわよね。あそこにはイギリス国教会の支部があるわ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:それなら異動届を出して許可をもらって下さいな。 

 

エミリーはロンドンへ長距離電話をして、南充支部に司祭補の空きがあるかどうか尋ねた。

 

「チャプレン(Chaplain)相当の職なら空きがある。ただし、そこはアヘン治療院である。中々来てくれる人は少ないのが実情だ。貴女が来てくれるならチャプレン(Chaplain)たちの長として、教区牧師として迎えよう」と言われた。 

 

エミリー:岳明軒ユエ・ミンシュエンちゃん。幸い、アヘン治療院の教区牧師として迎えられたわ。でも私はアヘン中毒に関しては何も知らないのよ。岳明軒ユエ・ミンシュエンちゃん。私を助けてね。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:僕もアヘンやモルヒネ、ヘロインなどの薬物には詳しくないので、姉に頼んでみましょう。姉は漢方薬の大家ですから、エミリー様のお役に立てると思います。ところで、僕と一緒に来てくださるのはエミリー様だけですか? 

 

エミリー:そうね。何名かあてはあるけれど、岳明軒ユエ・ミンシュエンちゃんはどういう人が良いの?

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:僕は交易商人ですから、交易の仕事を一緒に出来る人が良いですね。若い人でも良いですよ。僕も見習いのようなものですからね。 

 

エミリー:それならうってつけの人がいるわ。私の義理の息子24歳夫婦なの。交易の仕事を覚えたいと日頃から言っているわ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:ぜひ、その御夫婦を紹介して下さい。 

 

エミリーはもう一度電話して、義理の息子夫婦に詳しい経緯いきさつを話して此処へ呼んだ。 

 

義理の息子:アーサー・ウェルビー(24歳)とその妻:メアリー・ウェルビー(21歳)が現れた時には、趙紫蘭チョウ・シラン(34歳)と料理人及び侍女たちが作った「精力増強・滋養強壮料理」が用意され、彼らを喜ばせた。 

 

1936年、九江の岳明軒ユエ・ミンシュエンの邸宅では、特別な料理が用意されていた。料理人と侍女たちは、趙紫蘭チョウ・シランの指導のもと、「精力増強・滋養強壮料理」の最後の仕上げに励んでいる。彼女たちの手によって作られた料理は、黒鶏の薬膳スープ、牛肉とオイスターソースの炒め物、そして海鮮と豆腐の鍋であり、各々が体を温め、気力を高める効能を持つ。

 

 

趙紫蘭チョウ・シランは、これらの料理を前に、微笑みを浮かべながらその効能について説明していた。黒鶏の薬膳スープは、滋養強壮に役立つ高麗人参と枸杞の実を含み、体力回復に最適である。牛肉とオイスターソースの炒め物は、牛肉の鉄分、亜鉛、タンパク質が筋肉の生成を助け、体力を増強する。海鮮と豆腐の鍋には、心臓の健康に良いオメガ3脂肪酸が豊富な海鮮と、高タンパクで低カロリーな豆腐が使用されている。 

 

食堂のテーブルには、これらの料理が並べられ、岳明軒ユエ・ミンシュエンそして彼の三人の愛人「趙紫蘭チョウ・シラン、エリザベス・ウィンザム、エミリー・ウェルビー」とアーサー・ウェルビーとメアリー・ウェルビー夫婦が集まっていた。各人が自分の箸を取り、まずは黒鶏の薬膳スープから始めた。スープの芳醇な香りが部屋を満たし、一口飲むごとにその深い味わいが彼らの心と体を温めていく。 

 

次に牛肉とオイスターソースの炒め物が振る舞われた。牛肉の旨味とオイスターソースの濃厚な風味が見事に調和し、青梗菜のシャキシャキとした食感がアクセントになっている。海鮮と豆腐の鍋は、新鮮な海鮮の豊かな味わいと豆腐の優しい食感が楽しめる一品であり、春菊の緑が鮮やかな彩りを加えていた。 

 

食事の最中、趙紫蘭チョウ・シランはエミリー・ウェルビーに向かって微笑み、彼女のこれからの旅と新たな生活への祝福の言葉を述べた。エミリーは感謝の意を表し、岳明軒ユエ・ミンシュエンと共に新たな地での生活に希望を抱いていることを語った。アーサーとメアリー夫婦も、このような温かい歓迎と美味しい料理に心から感謝し、交易の仕事を学びながら新しい生活を始める決意を新たにした。 

 

この日、趙紫蘭チョウ・シランと料理人及び侍女たちが作った「精力増強・滋養強壮料理」は、彼らの心と体を潤し、新たな旅立ちへのエネルギーを与えてくれた。食事を終え、彼らはそれぞれの未来に思いを馳せながら、感謝の心を込めて食堂を後にした。 

 

エミリー・ウェルビーはそのまま教会へと帰って行き、彼女の義理の息子夫婦は離れに泊まっていくことになった。司祭補エミリーが、岳明軒ユエ・ミンシュエンの愛人になったということは誰にも知られていないし、また決して知られてはならないことである。 

 

アーサー・ウェルビーとメアリー・ウェルビー夫婦は、岳明軒ユエ・ミンシュエンに色々質問してくる。二人の間には生まれたばかりの女の子が一人いて大変可愛い子である。 

 

アーサー:宜昌 へは行かれますか?

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:いや。今のところ予定は無いのだが。 

 

メアリーが赤子に乳房を含ませながら、会話に参加した。赤ん坊も可愛いが、メアリーは若く溌剌としており、遠慮なしに岳明軒ユエ・ミンシュエンにも見せてくれた両乳首はピンク色に輝き、得も言われぬ美しいものだった。 

 

メアリー:宜昌は鉱産物が豊富に採れるのよ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:そうか。どういった物が採れるのか? 

 

メアリー:岳明軒ユエ・ミンシュエンちゃん。宜昌の鉱産物の話をしていい?あそこは、本当にすごい場所なんだ。実は、宜昌はリン鉱石がとっても豊富で、中国でもトップクラスなんだよ。リン鉱石って、肥料とか食品添加物、火薬とか、いろんなものを作るのに必要なんだ。年間で1300万トンも生産されているんだって。すごくない? 

 

メアリー:それから、黒鉛鉱についてもすごいんだ。宜昌の黒鉛はね、中南地区で唯一の片麻岩黒鉛の大鉱山なんだ。これがまた、品質が全国でトップクラスなの。黒鉛は、耐火材料や潤滑剤に使われるんだけど、これからの技術発展とともに、もっと需要が増えると思うんだ。 

 

メアリー:あとね、ガラス用砂岩鉱「石英砂」も注目だよ。これがあるから、高品質なガラスや光ファイバー、半導体なんかが作れるんだ。宜昌の石英砂は純度が高くて、とっても貴重なんだよ。 

 

メアリー:これらの鉱産物はね、宜昌市の経済にめちゃくちゃ貢献しているし、世界中で需要があるから、交易品として取り扱うのはとっても良いアイデアだと思うんだ。リン鉱石や黒鉛鉱、石英砂は、今後も価値がどんどん上がっていくと思うから、これらを扱うことで、きっと大きな利益が得られると思うよ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエンはメアリーの気さくな物言いを気に入り、何よりも彼女の溌剌とした明るさと説明力の高さを評価した。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエン:そうか。宜昌には寄る予定は無かったが、あなた達の説明を聞いて行きたくなったよ。あなた達に鉱産物の買い付けを任せよう。あなた達にはそれぞれ年俸50両と賞与を50両支払うことにする。頑張ってくれよ。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエンは彼ら夫婦に一人ずつ100両を支給した。 

 

アーサーもメアリーもこれには目を丸くして驚き、岳明軒ユエ・ミンシュエンの気前の良さに感激した。メアリーは赤ん坊の世話をアーサーに頼み、アーサーは離れに赤ん坊を連れて行きふたりで寝ることにしたようだ。 

 

メアリーも若く気前の良い岳明軒ユエ・ミンシュエンをすこぶる気に入ってしまった。メアリーは岳明軒ユエ・ミンシュエンともっと長く一緒に居たくなった。 

 

メアリー:岳明軒ユエ・ミンシュエンちゃん、宜昌の名産特産についても話していい?この辺の話もおもしろいんだよ。 

 

メアリー:まずは「涼蝦」から。これはね、大米やコーンを原料にした飲み物で、黒砂糖水を使ってるんだ。夏場に氷を入れて飲むと、もう最高に美味しいんだよ。宜昌の人たちはみんな大好きで、路上の露天商や家庭でよく作られているんだ。 

 

メアリー:次に「大根餃子」。これがまたユニークでさ、見た目は普通の餃子に似てるけど、中身は大豆や大根でできていて、油で揚げるんだよ。食べると、サクサクして香ばしくて、ほんとに美味しいの。 

 

メアリー:「魚腥草の冷菜」はどう?この草本植物、ちょっと独特の味があるけど、生姜やニンニク、ごま油と合わせると、シャキシャキして香り高い冷菜になるんだ。夏場にピッタリのさっぱりとした味わいで、健康にもいいんだって。 

 

メアリー:「香辣蝦」についても忘れちゃいけないね。これは、濃厚でピリ辛の味わいがクセになる料理で、魚介の好きな人にはたまらない一品だよ。 

 

メアリー:あと、「合渣」っていうのがあって、これは土家族の伝統的なスナックなんだ。大豆をベースにして、新鮮な大根の葉を加えて作るんだけど、これがまた独特の美味しさなんだ。 

 

メアリー:「遠安西河の魚」は、水が澄んでいる西河から来る魚で、味が濃厚で肉質が柔らかいんだ。高価だけど、その価値は十分すぎるほどあるよ。 メアリー:「百里洲の砂梨」や「柑橘」も宜昌の自慢なんだ。特に砂梨は、蜜のように甘くて脆いの。柑橘類に関しては、宜昌は2000年以上の栽培歴史があって、特に秭歸県のネーブルオレンジや蜜柑は有名だよ。 

 

メアリー:最後に「三峽の苕酥」や「土家の腊肉」も忘れちゃいけないね。苕酥はサツマイモを使った伝統食品で、土家族の腊肉は、香辛料を効かせた豚や羊の肉を熟成させるんだけど、これがまた絶品なんだ。 

 

メアリー:これらの名産特産は、宜昌の風土が生んだ宝物みたいなもの。交易品としても、お客さんに喜ばれること間違いなし!特に「涼蝦」や「大根餃子」は、ちょっと変わったお土産としてもいいかもね。どう思う? 

 

夢中になりながら一生懸命に話すメアリー。岳明軒ユエ・ミンシュエンはうん、うんと相槌を打ちながら、彼女の話を熱心に聞いている。ふたりの距離は物理的にも心理的にも縮まった。そうこうするうち、どちらから求めたのかは分からないが、互いに口づけを交わしながら、話を続けることになり、抱き合うまでにはさほどの時間は掛からなかった。 

 

流石にらちを開けてしまってからは、お互いに顔を見合わせ、「不味いことになったな。お互いに誰にも内緒にしよう」と言い合った。しかし、メアリーはそのまま岳明軒ユエ・ミンシュエンの寝室に泊まり、メアリーがベッドを出ていったのは深夜の3時を廻っていた。 

 

岳明軒ユエ・ミンシュエンたちの船出 

翌朝、「岳明軒ユエ・ミンシュエン姉弟、エリザベス・ウィンザム、エミリー・ウェルビー、アーサー・ウェルビーとメアリー・ウェルビー夫婦」総勢6名は九江の港を出発した。趙雲龍チョウ・ウンリョン親子は景徳鎮などからの荷物を商船4隻に積み込んでからあとを追うことになった。岳明軒ユエ・ミンシュエンたちはヘクターが与えてくれた特別製の巡洋艦1隻に乗っていく。 

 

この船は海賊船対策のために作られた船で、積載量よりも速力と武装に特化してある。

 

岳明軒ユエ・ミンシュエンたちが乗る特別な巡洋艦は、「龍騎兵」と名付けられた。この名前は、岳明軒の南宋の英雄・岳飛の血を引く末裔としての誇りと、中国古来の強力な守護神である龍の力を象徴している。 

 

「龍騎兵」は、長さ120メートル、幅15メートルで、最大速力は時速40ノットに達し、海上での迅速な移動が可能である。船体は特殊合金で強化されており、小型でも高い戦闘力を持っているため、敵にとっては非常に手ごわい存在である。武装には、主砲として50口径の連装砲2基、対空砲として高速機関砲4基、さらに最新式の魚雷発射管4基を備えている。 

 

デッキには小型の飛行機を搭載するスペースがあり、広範囲の偵察や救助任務にも対応可能。船内は快適性も重視されており、乗組員とゲスト用の宿泊施設には最高級のアメニティが備えられている。特にゲスト用のキャビンは、5つ星ホテル並みの豪華さで、長期間の航海でも疲れを感じさせない。 

 

「龍騎兵」は、海賊船対策のためだけでなく、長距離の商業航海や探検任務にも適しており、岳明軒たちの冒険に欠かせない存在となった。安全と快適さを兼ね備えたこの巡洋艦で、彼らは新たな地平へと向かう。 

 

☆海賊船の襲撃 

岳明軒ユエ・ミンシュエンが九江の港を出発し、沖へ出た瞬間、20隻の海賊船が何処からともなく現れ、「龍騎兵」に襲いかかってきた。高速40ノットを誇る「龍騎兵」は平均速度20ノットの敵艦を翻弄し、あっという間に敵の旗艦を発見した。 

 

敵艦もバリバリと砲弾を撃ってくるが、特殊合金で強化された船体はびくともしない。50口径の連装砲2基の攻撃で少しずつ、敵の旗艦の耐久力を削り、敵の旗艦はやがて沈没寸前となった。その他の海賊船は散り散りばらばらになり、逃げ去ってしまった。岳明軒ユエ・ミンシュエンはもう沈没させてしまおうと、魚雷発射命令を出そうと手を掲げたその時に、敵の旗艦から白旗が掲げられた。無条件降伏である。 

 

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

「岳明軒(ユエ・ミンシュエン)と交易の旅⑤」は、1936年の中国を舞台に、若き商人岳明軒と彼の仲間たちが未知への船出を果たす物語です。困難と危険が待ち受ける中、彼らは互いに支え合いながら、それぞれの夢と未来への希望を追い求めます。この物語が、読者の皆様にとって、勇気と冒険の大切さを再認識する機会となれば幸いです。次エピソードでは、岳明軒たちの船がどのような運命に遭遇するのか、ぜひご期待ください。